招かれて、八代目中村芝翫襲名披露興行に行ってきた。
新装なった歌舞伎座に赴くのは初めてのことである。
しかも、襲名披露というおめでたいこと。
これは和服で行かずばなるまいと思ったものの、
あいにく持ち合わせがない。さりとて誂えるゆとりもない。
ふと、男の着物、大島普及に熱心に取り組む
銀座の呉服商、泉二弘明(もとじひろあき)さんの顔が思い浮かんだ。
ダメ元でお願いしたら快諾。
ボクと同じ背格好のスタッフの和服を特別に貸してくださることになった。
しかも、着付けまでしてくださるという。
何から何まで「おもてなしの心」の泉二さん。
こうなったら、お礼は、清水の舞台から飛び降りて誂えるしかないだろう・・・。
橋之助さんが好きだった。
毛利元就も、「御宿」の東吾もはまり役だった。
面長で柔和な笑顔、取りつく島がいっぱいありそう。
見せ場の「口上」でも、多くの歌舞伎役者たちが、口々に面倒見の良さを褒めていた。
公私ともに、先輩後輩ともに、身を惜しまず「助け船」を出しているのがよくわかる。
そして、3人の子にも、「助け船」を惜しまず、精進させてきた。
その結果が、歌舞伎界始まって以来の、親子4人同時襲名披露となった。
周囲の総意があってこその実現だから、いかに橋之助さんが見込まれているかがわかる。
それにしても、「襲名」とは、一大事だ。
先代たちの「名跡」と比較される。自分自身の「前名時代」」の芝居と比較される。
まさに精進の日々。芸道を磨き続けねばならない。
伝統を守り受け継ぐために、さらに高みを目指すために「襲名」という関門があるのだろう。
それにしても、客席に和服姿が少なかったなぁ・・・。
(もとじ社長、泉二弘明さんと)