わきまえに徹する | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

昨夜のトークライブ。万雷の拍手の嵐だった。

その拍手は、江戸家の伝統を継承に値する小猫さんの芸と、

それを優しく天上から見守る父の猫八さんへの賛辞だったと思う。

 

江戸家小猫さんの「芸」は、かなりの域に達していた。

祖父や父のテリトリーは、上野動物園だけだったが、

彼は、全国の動物園を駆け回り、研究研鑚に余念がない。

物真似のレパートリーは100に及ぶ。

誰も聞いたことのない鳴き声に果敢に挑む。

シロテナガザル、フクロテナガザルの鳴き比べなど、かなりマニアック。

雷鳥は、立山まで登り、「ご本人」から聴取し、鳴いたところ、

「ご本人」の声紋と、ほぼ一致した腕前だ。

 

父の猫八さんも、音楽家とコラボをしていた。

そのメンバーが、この夜駆けつけてくれた。

ピアノは、斎藤美香さん。ヴァイオリンは、吉田直矢さん。

父が亡くなってから、3人でコラボするのは、この夜が初めて。

「月の光」に秋の虫が鳴く。

「ペールギュントの朝」にのせて、羊が朝を告げる。

「ライオンは寝ている」は、サバンナで聞いているよう。

「故郷」は、日本の里山の生態系が耳から甦る。

アンコールの「子犬のワルツ」では、吉田さんと小猫さんが、鳴き声を競っていた。

 

この日、小猫さんの「わきまえ」を崩そうと思っていた。

39歳独身の彼の女性観について肉薄したが、牙城はびくともしなかった。

彼と2時間トークしながら思った。

彼の「わきまえ」も芸のうちなのだと。

きわめて誠実に人と向き合う。真摯に芸を磨く。

12年間病床で「自分」を見つめた経験が、彼の「わきまえ」を育てたのだろう。

63歳のボクにまったく備わっていない「わきまえ」を見習いながら、

江戸家小猫の応援団でいたいと思った。

 

(伝統芸のウグイスを披露する小猫さん)

(父と祖父に囲まれた8歳の小猫ちゃん)

(ヴァイオリンとピアノと動物のコラボ)