試合前の儀式 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。



再びリオオリンピックから。

バドミントン女子シングルスで、奥原希望選手が、銅メダルを獲得した。

シングルスでは、男女通じて、日本人初の快挙。


この奥原選手には、試合前に必ず行う儀式がある。

コートに入ると、髪を後ろにまとめる。

ヘアをまとめるゴムやピンも、特定のものにこだわる。

そして、コートサイドに立ち、目を閉じ、こうつぶやく。

「いま、ここでバドミントンが出来る幸せを感じよう」


2013年、高校3年の時、左膝を痛め、復帰まで8ケ月かかった。

2014年、今度は右膝を負傷し、手術とリハビリ。

戦線離脱の間に、後輩が頭角を現し、オリンピック出場も諦めかけた。

だが、多くの人の後押しで、復帰出来、日本代表にも選ばれた。

「この舞台に立てたことが奇跡」だと思うから、

コートに入る前に、感謝を口にし、幸せを噛み締める。


形から入って心に至るという。

ことばは口にすることで、身体に沁み渡る。

喉元過ぎれば熱さを忘れるのが人間だ。

折りにふれて、自分の心と身体に言い聞かさないと、

感謝の気持ちを忘れてしまう。

彼女の儀式が、成長著しい後輩を破り、銅メダルに結びついたのだろう。