とても温かでとてもせつないきみの絵本 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。




『とても温かでとてもせつないきみの絵本』(千倉書房)は、
カンガルーの夫婦の物語。

長く信じあい、愛しあってきたふたり。
子どもたちも立派に育ち独立していった。
そんな ある日、妻に異変が起こる。
スープの味が、いつもと違った。
しだいに大切なことも思い出せなくなってしまう。
夫は、全力でふたりの暮らしを守ろうとする。
しかし、幸せだった日々の記憶さえ、妻はいつか失っていく。

カンガルーの夫は言う。
「よし きみが忘れたことのすべてを 僕が覚えていよう!」


ベルギーの絵本作家の作品を、

さだまさしさんが翻訳したというか、さださん風にアレンジした。

さださんに文章を依頼したのは、千倉書房の取締役・千倉真理さん。

千倉さんは、

学生時代、川島なおみさんたちと文化放送でDJをしていた経験がある。

人気を博した女子大生DJの一人だった。

その後、結婚し、夫の勤務に従って長らく海外生活も経験したこともあるが、

父の経営していた出版社で編集に携わるようになった。

学術書・専門書中心の出版社で、絵本を手掛けるようになり、

「直感」で選んだ原作を「直感」でさださんに白羽の矢をたて、

「体当たり」で依頼した。

さださん自身、

認知症をテーマにした『サクラサク』という映画も小説の手掛けている。

さださんなら、原作を超える文章を書いてくれると、

趣旨や想いを書き連ねた手紙を送ったが、多くの説明はいらなかった。

さださんも「直感」で引き受けてくれた。

余談だが、眼鏡をかけたカンガルーの夫の顔は、さださんに似ている。


さださんの歌に『霧~ミスト~』という作品がある。

「もしあなたが わたしのこと忘れても

 決してわたしは 見失わない」という歌詞がある。

今回の絵本のメッセージに繋がる。

さださん自身も、原作を読んだとき、同じテーマだと感じたらしい。


認知症だけでなく、悲嘆して絶望状態にいるときにも

寄り添ってくれるような絵本だ。



        (千倉真理さん)