弱虫でいいんだよ | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

スローライフを提唱し続けている辻信一さん。

明治学院大学教授で、文化人類学者、環境活動家。

「わくわくラジオ」の時代に、スローライフのススメという企画で

レギュラー出演していただいていた。

まさにスローライフを地でいく辻さんの語り口は、ゆったりおだやか。

尖った心が丸くなる。


その辻さんの最新刊『弱虫でいいんだよ』を読んだ。

まず、タイトルがいいなぁ。

弱くていい。強くなくていい。そのままでいい。

そう言われ、そう思ったら、どれだけの人が救われるだろうか・・・。

強くなくてはいけない。負けてはいけない。

そういう世の中で挫折感を味わっている人が救われる。


人間は、地球の中で君臨しているような気になっている。
人間は、生態系の頂点に立っているように錯覚している。

地球上の生物は、

「他の生物と少しずつ生活環境をずらしながら自分の居場所を作っている」。

強い物が弱い物を食べつくしては、強いものも生き残れない。

「程」を知って生きている。人間以外は・・・と辻さんは指摘する。


辻さんは、ずいぶん前から「ナマケモノ」になろうと言っている。

エクアドルで出会ったナマケモノは、

一日の大半を木の枝にぶら下がったまま過ごす。

動かないからエネルギーも消耗しない。

低たんぱくのものを食べるだけで済む。

外気温に合わせて、体温変化出来る。

排泄の時だけ、木から降りる。木の根元に糞をして循環を考えている。

早さや強さを競わず、非暴力で平和的で穏やかな生き方をしている。

ゆえにナマケモノになろうと。


強弱、勝敗、優劣、上下・・・そういう二元論を超えないと、

人間は、地球に住めなくなる。

人間は、未発達のまま生まれてくる。

だから母親や周囲の愛情がなくては育まれない。

愛なしには生きられないほど弱い存在なのだ。

だから強弱も勝敗も優劣も上下も関係ないのだ。


「絶対」などないと心に留めておく心の広さと、

間違いを正しいと思いこんでいるかもしれないと思い直す謙虚さがあれば、

弱虫でもいんだよ。




(ナマケモノを抱く辻信一さん)