真代さんが恵比寿に飛んできた | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

庄野真代さんが、恵比寿に飛んできてくれた。

昨夜の余韻が、まだ残っている。

年を重ねるっていいなと思わせるライブだった。


デビュー40年の節目を迎えた庄野さん。

オープニングはデビュー曲「ジョーの肖像」を、

ピアノ弾き語りで聞かせてくれた。

40年来のファンも初めて聞いたという弾き語り。大サービスだ。

「春の日だまりの中にいる年老いたピアニストが、戦争で死んだ仲間に

 呼びにくるのは春が終わるまで待ってほしい」

21歳の庄野さんが、こういう詩を書く感性は、どうして培われたのだろう。

その後の「国境なき」活動を予見するようだ。

前半は、この1曲だけで、あとはトーク。

中でも1999年の頬骨骨折事件は、圧巻。

術後、顔に金具が入り、まるで串刺しのような状態だったと語ると、

会場から驚きのどよめき。

同じ年、子宮筋腫の手術も受け、長期間、病院のベットにいた。

その時、やりたくてやれなかったことをリストにした。

ノート5ページ分に及んだ。

その時、書いた夢を、次々実現してきた。

ターニングポイントだらけの人生だが、

常にひるまず、たゆまず生きてきた。

会場にいた11歳の少年に「生きる核はなんですか」という鋭い質問に

「歌です」と即答した。

すべての経験は、歌詞に、歌い方に、歌う姿勢に現れている。


後半は、ギタリストの田中章さんが加わった。

白髪のロンゲに黒の帽子がよく似合う。

いい年の重ね方をしていることが、たたずまいから滲み出ている。

病気をしてから、庄野さんとコンビを組むのは5年ぶりとか。

だが、音楽を聞いていて、必然の組み合わせに思えた。

バラード風にアレンジされた「飛んでイスタンブール」も素適だった。

新曲「平和のうた」は、庄野さんのピアノとのデュオ。

歌詞がストンと心に入る。

「ひとりの声は小さいけれど、聴こえているよ 愛と平和のうた」

小さな声は、聴く人が耳をそばだてるから、伝わりやすい。

一人の大声より、一万人のウィスパーの方が迫力がある。

人が人を呼び、何人が何百人、何千人、何万人となり、

1年が2年になり3年になり、何十年、何百年と続けていけばいい。

二宮尊徳の「積小為大」の精神だ。

微力は無力ではない。

庄野さんの国境のない歌声には、ものすごい力が秘められている。








(レアもの ピアノ弾き語り)







(写真左が田中章さん)