ゲゲゲのゲーテ | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。



正月三が日は、読書三昧。

日頃、ゆっくり活字を追う時間が取れないので、至福のひとときだ。

その中から一冊ご紹介。

先日、亡くなった漫画家の水木しげるさんが、こよなく愛したのがゲーテ。

人生を幸せに生き抜く智慧の詰まった珠玉の言葉の数々。

文豪ゲーテは、82年の生涯を常に自分らしく生きた。

ゲーテは、前向きで健康的。

偉ぶらず、自分のことは自分でやり、世の中を偏狭でがなく幅広く見ていた。

豊富な知識に基づき、詩や戯曲、小説を書き続け、言葉の宝庫を残しいる。


73歳で18歳の女性に求婚する情熱家でもあった。

「水木サンの人生は80%がゲーテです」と自ら語るように、

10代で出会い、死線を彷徨った戦場にも密かに携え、

暗唱できるほど繰り返し読んだ『ゲーテとの対話』(岩波文庫・上中下三巻)。
その中から、

ゲーテが人生について語った、名言、格言、箴言の中から、

水木サン自身が選んだ言葉93篇が収録されている。


『精神の意志の力で成功しないような場合には、

 好機の到来を待つほかない』

どれだけ描いても売れなかった不遇の貧乏暮らしの中で、

この言葉は、どれだけ水木サンの支えになったことだろう。


『自分自身を知るのは、楽しんでいるときか悩んでいるときだけだ』

水木サンは、人はそれほど幸せでもないけど、

それほど不幸でもないと言っていた。


『目的を尋ねる質問、つまり、なぜという質問はまったく学問的でない。

だが、どのようにしてという質問ならば、一歩先に進めることが出来る』


『そもそも人は、いつも驚嘆するものだけを読むべきだ』

水木サンは、人の三倍は驚くそうだ。素直に驚くことが出来るのも才能。


『私が進めたいのは、決して無理をしないことだ』

愉快に怠けるのが得意だった水木サンも、大いにうなづいたことだろう。


水木サンもゲーテも、死後も魂は継続すると考えていた。

そして、妖怪研究の末、水木サンは、

人間は死んだあと、カタチがなくなるのでなく、カタチが変化すると考えていた。

人間の目には見えないカタチに変化する。

それは、ふわっふわっとしたものだと想像していた。

ゲーテも水木サンも、いま、ふわっふわっとしたものとして、

ボクたちの身近にいてくれるような気がする。