高知までの往復に、一気に読み終えた本がある。
鹿児島県立図書館長の原口泉さんが著した『会津 名君の系譜』。
原口さんには、今年、鹿児島で講演したとき、お目にかかったことがある。
ムラカミは、大河ドラマを見ていて、すっかり会津びいきになった。
会津藩の藩祖・保科正之から受け継がれた、
優れた精神性、誇り高き心、無私の魂・・・今こそ見直すべき生き方といえる。
いや、日本人に、もともと備わっている美徳なのだから、思い出すべきといったほうがいいかもしれない。
初代藩主・保科正之は、三代将軍・家光の異母弟だが、それを誇ることもなく、
徳川家の礎を築いた。正之が遺した「会津家訓十五カ条」の最初に、徳川家への忠義が明記されている。このことが、幕末の会津藩の運命と関わる。
藩祖以来の忠義を貫き火中の栗を拾ったのが、幕末の最後の藩主・松平容保であった。
この本は、この2人の藩主のほかに、
会津魂を受け継いだ4人について述べている。
義和団事件の収束に尽力し、世界から尊敬された柴五郎大将、
俘虜に対して公平な態度を取った
徳島県鳴門の俘虜収容所長の松江豊寿(とよひさ)、
ライ病患者に献身的な看護をした井深八重、
先祖が白虎隊にいたソニー創始者の井深大、
共通項は、正義と無私だ。
この本の登場人物たちには、
矜持、尊厳、廉直という、いまの日本人が忘れかけた心がある。
こういう日本人がいたこと、
その血が、いまの我々にも流れていることを
ゆめゆめ忘れてはなるまい。