『阿修羅のごとく』観劇 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

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向田邦子さんの『阿修羅のごとく』を観てきた。


これまでも、テレビドラマ、映画、舞台で、何回か取り上げられてきたが、今回、久しぶりの舞台化だ。


定年後を静かに過ごす父と、家庭的な母。4姉妹。


平穏な家庭の中に渦巻く猜疑心を繊細に描く名作だ。

長女の綱子は、夫に先立たれ生け花の師匠として生計を立てている。


次女の巻子は、中学生の一男一女をもつ平凡なサラリーマン家庭の主婦。


三女の滝子は図書館の司書勤めで男っ気がまったくなし。


四女の咲子は親兄弟にも内緒で無名のボクサーと同棲している。


そんなある日、父親に愛人がいて、子どもまでいることがわかる。


4姉妹は、母親を気遣いながら対処について話し合う。


しかし、自分たちも「秘め事」や「隠し事」を持っていて、


周囲のさまざまな人を巻き込みながら疑心暗鬼が頭をもたげる。


家族でちゃぶ台を囲みながら、庭先で白菜を漬けながら、


日常のひとコマの中に、内なる阿修羅が顔を出す。





今回は、父親役は、林隆三さん、母親役は、加賀まりこさん。


長女・浅野温子さん、二女・荻野目慶子さん、三女・高岡早紀さん、


四女・奥菜恵さんという配役。


今回の舞台は、林隆三さんからご案内いただいたのだが、さすがの存在感。


大きな声を張り上げなくても、声が届く。


誇張した演技をしなくても心情は伝わる。


加賀さんも、台詞を言わないしぐさだけの演技が光る。


奥菜さんも、自然体の演技で、目を引いた。


舞台も部屋が4つあって、展開に合わせて、照明の切り替えでテンポよく


使われる場所が動いていく。同時進行も出来るよう設えてあって、面白かった。

ル・テアトル銀座で29日まで。その後、大阪・名古屋でも。