居眠り盤音にまつわること | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。


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「居眠り磐音 江戸双紙」シリーズ最新刊42巻をあっという間に読んだ。

春風のように穏やかで思いやりの深い青年武士、坂崎磐音(いわね)を主人公とする書き下ろし長編時代小説。居眠り猫が突然目覚めたかのごとく鮮やかに悪を斬り捨てる磐音の剣さばき、胸をしめつける男女の心の機微、剣あり、恋あり、涙ありの痛快な物語は、長編小説を読む喜びを満喫させてくれる。
多くの人の支持を得て、1500万部を超える平成の大ベストセラーだ。

この本を最初に紹介してもらったのは、児玉清さん。どの本も口角泡を飛ばしながら、「こんな面白い本はないよ」と薦める児玉さんだが、このシリーズの紹介の口調は、ひときわ熱を帯びていた。

一昨年正月(児玉さんが亡くなる年、最後の出演日)いきなり「盤音に子どもが生まれたよ!」と興奮気味に語り始めた。児玉さんは、戸籍上1月1日生まれ。

盤音の長男・空也も1月1日生まれ。それが嬉しかったようだ。

児玉さんが亡くなった時、喪失感にさいなまれつつも、なかなか泣く場が見つからず戸惑っていた。そんな時、佐伯泰英さんと電話で思い出を語り合ううちに、2人で号泣し、ようやく浄化出来た気がした。

読書家の亡父も、盤音が気に入っていた。親子で先を争うように読んでいた。

父は、第27巻「石榴の蠅」の途中まで読んだところで亡くなった。お棺には、その本を入れた。

新刊が出るたびに、児玉さんや父と一緒に読むような気持ちでいる。

「また、関前藩でひと騒動が起きたけど、無事治まりましたよ」

「だけど、霧子さんが瀕死の重傷を負い心配」と2人に語りかけている。

ぼくは、密かに、盤音を陰で支えてきた忍びの霧子のファンだ。

「佐伯さん!第43巻では、霧子を元気にしてくれますよね?」