ゆっくりの隙間 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。



村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき


               (撮影・鶴崎燃さん)




戦場カメラマン、渡部陽一さんと私は、明治学院大学の同窓生。それにしても渡部さんが生まれた年に、私は大学1年生。2人が並んだ写真を見て、しばし感慨にひたった。


「先輩に・・・お声をかけていただき・・・光栄・・・です。戦場・・・カメラマンの・・・渡部・・・陽一・・・です」すべての話に・・・のような間合いがある。


聞きしに勝るスローな語り口だった。だが、独特の間合いが心地いいのだ。入り込む隙間がいっぱいあるから、安心出来るのだ。この間に、いろんな想像を巡らせることが出来る。言葉の余韻を噛み締めることが出来る。何度も「光栄です」という言葉が出た。相手への慮り、礼儀正しさには、頭が下がる。  



渡部さんはこの4月からラジオ番組のパーソナリティ(ニッポン放送『勇気のラジオ』)を務めている。タイトル通り、自然と勇気がわいてくるような番組だ。ゆっくりとした、噛んで含める口調はラジオに合っている。ラジオは傍らにいて黙ってうなずくような、やさしく寄り添う存在だと思うが、渡部さんの独特の間合いは、まさにそれだ。


「僕は昔からラジオ大好き人間で、戦場にも持っていきます。戦場では誰もが、ラジオで避難情報を聴いてライフラインにしているんです。放送する立場になると難しいけど、ゆっくり考えながらやります」。いつか、ラジオで、共演してみたい。





この対談は、雑誌『清流』8月号に掲載中。