ロンドンパラリンピックに出場する伊藤智也さんの壮行会に三重県桑名市まで行ってきた。
伊藤さんは、35歳で発症した多発性硬化症という難病と向き合っている。
中枢神経が正常に働かなくなり、運動機能がしだいに衰えていく。手足のまひ、視力障害など様々な障害がおこる。発作が起きたり治まったりしながら、進行していく。入退院の回数は数知れない。いまも、鳩尾(みぞおち)あたりまでマヒが進んでいる。左目は視力を失っている。
しかし、はつらつとした笑顔、日焼けしたがっしりした腕っぷしを見ていると、難病を抱えていることを忘れてしまう。
パラリンピックの車いすレースにアテネ、北京と2回出場。
北京大会では400メートル、800メートルで金メダルを獲得。
彼は別れ際にいつも『明日という奇跡を信じて』と言いながら固い握手をする。病気が寝ている間に進行する特徴があるから、朝起きて呼吸をしているかどうか不安があるのだ。
そんな身体を押して、彼は不屈の闘志で三度目の大舞台に立つ。
もちろん目標は金メダル。だが、それは自分だけのために取るのではない。「障害者」という狭い枠に閉じ込めて物を考えてしまう社会を変えるためだ。バリアを無くすために戦う。
彼の決意を聞きながら、ただただすごいと思い、言葉が出なかった。