岩瀬昇のエネルギーブログ：＃932　北朝鮮はロシアから、弾薬代金を石油で受け取っている？

（カバー写真は、文中引用している「FT」記事のものです）

　フィナンシャル・タイムズ（FT）が東京時間2024年3月26日13時ごろ、『国連による制裁体制がほぼ崩壊している中、ロシアは北朝鮮に石油を供給している』と題する記事を掲載した（*1）。

　今月に入って少なくとも5隻の船がロシアのVostochny港から石油を積んで北朝鮮に向け出港しており、2隻は間違いなく北朝鮮で荷下ろししている、とのことだ。船は北朝鮮フラッグだが、ロシア石油企業が運航していると。

　北朝鮮は昨年8月、ロシアに対し弾薬の供給を開始しており、明らかに弾薬と石油のバーター取引だ、としている。

　ちなみに、核実験とミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮に対して2017年、ロシアも賛成して課している石油関連の国連制裁とは、事前に制裁委員会へ報告する前提で原油が年間最大400万バレル（約11,000BD、約64万kl）、石油製品が年間最大50万バレル（約1,400BD、約8万kl）まで、となっている（外務省「安保理決議に基づく北朝鮮制裁」令和6年3月21日、*2）。

　「FT」記事では、原油も石油製品も、年間最大50万バレルずつ、となっているが、これはおそらく誤りだろう。

　今回の動きは、国連常任理事国のロシアが、自らも賛成して決議し課している制裁を無効にするものである。

　ではこの石油供給で北朝鮮は、どの程度「助かる」のだろうか。

　古い記憶をたどって昔の「エネブロ」をチェックしてみた。すると2017年に5本の投稿をしていた。

　一番最初が2017年4月25日に書いた『＃339 中国が北朝鮮向け石油供給を止めたら？』と題したものだ（*3）。

　本稿には北朝鮮のエネルギー事情を把握しようと調べた結果が記載されている。

　少々古いがIEAのデータで、2014年の一次エネルギー消費量は石油換算1,045万トンで、4億488万トンの日本の約40分の１だ、となっている。内訳は石油が7割でほぼ国産（輸出もしている）、石油は5％程度の57.4万トンで全量中国からの輸入だと。

　おそらく基本構造はさほど変わっていないだろう。

　9月には立て続けに4本、投稿している。

　9月7日『＃365 北朝鮮の追加制裁　米国草案を読みたい』（*4）、9月12日『＃368 北朝鮮は何か月戦えるか？』（*5）、9月14日『＃369 平壌にガソリンスタンドはないのだろうか』（*6）、そして9月23日『＃373 日経：中国、石油の輸出制限開始　北朝鮮への圧力強化』（*7）である。

　北朝鮮への国連制裁のニュースが多かったためだろう。

　あれから6年半が経過しているが、北朝鮮の核武装、ミサイル攻撃能力強化等の動きはまったく静まっていない。国連の経済制裁はほとんど無力なのだ。