池袋東京芸術劇場シアターイーストでモダンスイマーズの2年半ぶりの新作「雨とベンツと国道と私」を観た。

 

その前回の舞台「だからビリーは東京で」のレビューがこちら↓

 

 

前回の「だからビリーは東京で」はコロナ禍での弱小劇団に起きたあれやこれやを扱っていた。そして今回は今の演劇界で大きな問題となっているパワハラ、セクハラ問題を映画界で起きたこととして描いている。

 

内部告発によりSNSでパワハラが発覚し(本人にはその自覚はまったく無し)業界から干された映画監督坂根(小椋毅)が名前を変えて個人的な依頼のドキュメンタリー映画を撮ることになった。それぞれがそれぞれの個人的な事情により納得できていない何かを確かめるため、その撮影現場に集まってくる。

ものがたりの語り手である助手の五味栞(山中志歩)は自身が以前坂根の現場に関わっていたことがあり、監督の言葉に傷つき映画界を去ったという経験があった。偽名を使っていたことで目の前にいるのが坂根であることに気づかなかった栞だが、昔の傷ついた自分、そして彼女の憧れ、生きる中での光であった女優宮本圭(生超千晴)がパワハラの末に傷付けられた以前の事件を思い出し、ついに彼女の怒りの堰がきれる。

一方、坂根もこれまで自分の全てを注いできた映画創作という場所を失い、自分自身を無くしかけていた。

パワハラ事例を題材に「罪と赦し」をテーマに蓬莱竜太が劇団員とともに演劇を観にきている目の前の観客に向けて問いかける。

 

今、現実世界で同じように告発を受け、演劇創作ができない状況となっている演劇人たち。もちろん彼・彼女らが罪と向き合いやったことに真摯な対応をするということが大前提にあるが、その後受け入れる側は赦す用意は出来ているのだろうか。

そんなこれからのことも考えさせられる。

 

やはりモダンスイマーズ劇団員の役割をわきまえた阿吽の呼吸の演技が良い。

今作ではパワハラ監督の当時とその後を演じ分けた小椋毅が秀逸。

 

蓬莱の淀みなく、それでいてキャッチーなセリフが効いていたことは言うまでもない。

 

終演後に観客のカップルが「このタイトルが最後にすっかり腑に落ちた。うまいな〜このタイトル」と感心していた。確かにジャケ買いならぬタイトル買いというのもあるからね〜。