名取事務所の「淵に沈む」を下北沢小劇場B1で観劇。

「光射ス森」が第65回岸田國士戯曲賞（2020年）の最終候補作品となった演劇集団円所属の内藤裕子さんの書き下ろし新作。

今回は長年統合失調症である息子を退院させたいと願い母親が担当医に了承を得て退院手続きを進めていたところ、病院に留めさせておきたい他の家族（兄弟）と病院側（主に医院長の独断）の不当な処遇により、本人、そして母親が望んでいたにも関わらず阻まれてしまう、といったストーリーになっている。

劇団HP（下記参照）の情報によると実際の病院のケース（入所者への暴力）をもとに書かれたもののようだ。

このところ、統合失調症についてのドキュメンタリー映画↓や、演劇作品↓↓を観る機会が続いているのだが、一昔前には世間一般的にあまり知られていない病気で、それゆえに誤解されたり、今回の舞台のように家族から存在しないものとして隠されたりしたことが実は誤りであって治療法も進化していて治る病気であることがわかってきたことで、作家や製作者にはそれを知らしめたいという思いがあるのだろう。

『どうすればよかったか？（映画）』青山界隈で演劇を鑑賞していた日に、もう一つ予定をぶっ込んでドキュメンタリー映画「どうすればよかったか？」を観た。映画『どうすればよかったか？』公式サイ…

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『ドードーが落下する（1/17）』神奈川芸術劇場（KAAT）で加藤拓也の岸田賞受賞作品「ドードーが落下する」を観た。＊＊＊＊　演劇サイト　より　＊＊＊＊＊＊ 2022年初演、第67回岸田國…

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＊＊＊＊＊＊　劇団HPより　＊＊＊＊＊＊＊＊＊

内藤裕子演出の新作書下ろし作品。
2023年6月八王子の精神病院「滝山病院事件」閉ざされた病院で一体何が起きていたのか？その事件の原因と検証が今作品のテーマです。
2021年内藤裕子作・演出「灯に佇む」は家族を通しての丸山ワクチンと医療問題を取り扱い、高い評価を得ました。
それに続く医療シーリズ第2作目と言ってもよく、医療格差にも迫ります。いま既に富裕層と貧困層との間には緊張があります。
経済格差が医療格差を生み命の格差まで及ぼす。最新の技術革新によって生命の格差はより大きくなっていけば、おそらく将来革命が起こるでしょう。
2025年には3人に1人が65歳以上になる日本、差し迫った喫緊の問題です。諸事情で自分の家族を世話することが出来なくなり、様々な窓口に相談するが、受け入れる場所がなく途方に暮れる。そんな中、紹介されたのは高度医療を受けられる精神病院。
この事件を基にし、内藤裕子が得手とする家族を通して、患者と、医療従事者、家族たちの行き場のない苦しみを描く。

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劇場構造（ステージからはけることの出来るドアが２箇所ある）を上手く使って、シーン転換、医者の診察室と患者がいる部屋、コーヒーを淹れるのが趣味である患者がコーヒーをふるまっている場所、などを瞬時に切り替えてみせている。

演劇集団円の女優、80歳を超えた岡本瑞恵さんが母親役をリアルに演じている。統合失調症の息子を演じている名取事務所の西山聖了も良い。

家族、老い、精神の病、ビジネス化している病院の実態、隠蔽された精神病院の実情、、、、と今の世の中を生きている観客たちがどこかにひっかかる、興味深い舞台だった。