渋谷オーチャードホールで熊川哲也K-Balletの「ラ・バヤデール」を観た。

 

実のところ、つい1ヶ月ほど前に新国立劇場バレエの同作品を観たばかりで、西洋の王子様とお姫様とは一味違ったそのオリエンタルな世界にすっかり魅了されたばかり。

 

 

******* 演劇サイト より ******

禁忌の恋、裏切り、嫉妬、陰謀……
愛憎渦巻くスペクタクル超大作、8年ぶりに!
熊川哲也が名実共に世界のスターダムへと駆け上がった、いわば出発点を標す作品、それが『ラ・バヤデール』。本作を自身のプロダクションとして手掛けたのは2014年、Kバレエ設立15周年のことだった。古代インドへとタイムスリップさせる荘厳な舞台美術、緻密に編まれた愛憎劇の説得力、壮観な群舞の美、そして唯一無二のラストシーンがもたらす感動――。壮大にしてドラマティックな古典の傑作、6月開幕!

**************

 

両方ともマリウス・プティパの振り付けをベースにしているとは言え、新国立劇場版は牧阿佐美による改訂、K-Ballet版は熊川哲也の改訂が施されているため、特に後半のストーリー展開、そして仏陀の化身であるブロンズ・アイドル(金の仏像が人間の眼前に抜け出て来て踊るシーン)の扱い方にもはっきりとした違いがあり、同作品とは言え、それぞれにまた違った作品感を有している。

 

今回の熊川版ではブロンズ・アイドル(吉田周平)は王国が崩壊した後に登場し、崩れ去ったこの世を浄化するため舞うという設定になっていて(通常は第三幕の冒頭、または牧版のように第二幕のガムザッティとソロルの婚約披露の場で登場する)、かなり大詰めのラストに近いシーンでの登場となっている。

また、二人の女性の間で揺れ動く青年戦士ソロル(堀内將平)の扱いにも特徴があり、通常は神の怒りにより崩れた寺院の中、最後のシーンで息絶えるソロルだが、熊川版では寺院が崩れる前に幽霊となっているニキヤ(岩井優花)に導かれソロルは死んでしまう。さらにはそこに駆けつけたガムザッティ(成田紗弥)も自分がニキヤを死に追いやったのと同じように蛇に噛まれ死ぬのだ。その後に神の怒りで寺院が崩壊し—この崩壊のシーンの美術が見事!—その大惨事の中、黄泉の国へニキヤとソロルが手と手をとりあって昇華していくというラストとなっている。

 

。。。とこのように、解釈自体が異なっている他にも、全体的な印象も、バレエの醍醐味であるセットや衣装から違った趣となっている。

正直、衣装に関しては新国立劇場版(アリステア・リヴィングストン)の方が好みかも。

今回の子供っぽい感じのブルーやピンク、赤い衣装がせっかくのオリエンタリズムの美を削いでしまっていたように思った。(ディック・バード)

 

ダンサーに関しては両カンパニーとも流石!!の一言。

アクロバティックで見せ場(見え方)を意識したK-Ballet、質実剛健とも言える安定感とそこに宿る美を意識した新国立バレエ、、どちらもそれぞれに良かった。

 

最後に、余談となるが、、

熊川哲也の名前を英国中(それは世界中に匹敵する)に知らしめたのが、ブロンズ・アイドルの超アクロバティックな踊り。—彼は空中でそこに浮いていたからね〜。

当時、ロンドンに住んでいた私の耳にも、もちろんその評判は入ってきて、すぐにロイヤル・オペラハウスのチケット売り場へ走った。そこのベテランと思しき係のおじさん曰く「まあ、それはそれは凄すぎて、彼(熊川)がブロンズ・アイドルを踊る日の切符は即完売だよ!」と言っていた。

ラッキーにも桟敷席のチケットを入手でき、遠目からそのお姿を拝見したのはうん10年前か。