撮影:横田敦史

 

下北沢駅前劇場で流山児祥率いる45歳以上の中高年による演劇集団シアターRAKU(楽塾)の創立26周年公演、先月の台湾・新営での海外公演を終えての凱旋公演となった「テラヤマ音楽劇★くるみ割り人形」を観た。

 

いつもは自前のSpace早稲田や下北沢でもスズナリでの上演が多いのだが、実のところ流山児事務所の出発点となったのが1984年暮れに下北沢駅前劇場で上演した北村想作「悪魔のいるクリスマス」で久しぶりにこの劇場に戻ってきた!のだそうだ。

 

先日、パルコ劇場で太宰治著の「新ハムレット」— 太宰は作品について「ハムレットの新解釈の書ではない」とわざわざはしがきでことわっていて、確かにハムレットの登場人物たちを借りているものの内容は太宰のオリジナルの裕福な家に生まれた若者のモラトリアム期の苦悩を描いている — を観たばかり。

 

 

 

同様に今作も寺山修司の「(新)くるみ割り人形」であって世界的に知られているチャイコフスキーのバレエとは異なっている。そのバレエの原作であるホフマンの童話の方にはバレエには無く寺山版に残されているエピソードが見られるとは言え、そこには寺山修司なりの人間観察、社会に対するアイロニー、子供へ向けたメッセージが盛り込まれている。(当初はサンリオ制作の映画のシナリオとして書かれたのだが、実際には使用されず、寺山が書いた歌詞のみが採用されたということだ。)

 

 

そのシナリオを舞台で蘇らせたのが流山児の「テラヤマ音楽劇★くるみ割り人形」(初演2015年)、子供向け映画のシナリオということで、ストーリーはドストレートなメッセージがかえって新鮮に響く。

 

撮影:横田敦史
 
音楽劇ということで高橋牧の挿入歌が入るのだが、耳障りの良いメロディーが良い。そして初演、海外公演を含め何度も歌っているのだろう、斉唱の歌のパートになると、女優たちにがぜんパワーが漲る。
 

撮影:横田敦史

 

シアターRAKUも26周年ということで、メンバーも時々で入れ替わっているようだが、今回の舞台を観て思ったことはそれぞれが「世界で一つだけの花」を自負しているということ。

見事に個性の方向性がバラバラ(良い意味で)、メイクやダンスもそれぞれの味を出していて舞台のそこここに視線が飛ぶ。

 

華がある上に全てに安定感抜群のドロッセルマイヤー役の桐原三枝、ヒロインを可憐に演じたクララ役の原きよ、RAKUではお決まりのチョビ髭おじさん姿が嬉しい皇帝役の二階堂まり、宝塚バリの存在感のマウゼリンクス夫人役の村田泉、、そしてRAKUと言えばこの人、登場すると妙に安心してしまうシュヌルヌル役の杉山智子、、他まだまだ推しになる逸材が。

 

平均年齢69歳の女優たちのガールズパワーに圧倒された夜だった。

 

*ネズミ駆除のために街のあちこちに置かれる大きなお目目のお人形が可愛いので要チェック