◎ コット、はじまりの夏 | を観た。~3行映画評~

を観た。~3行映画評~

日本映画を中心に。たまに見る劇場新作も。タイトル前の◎はオススメ○は見て損ナシ△は気をつけて⭐️はその年のベスト



コット、はじまりの夏を観た。こんな静かな作品とは思わなかった。泣かすところは1箇所だけだが、いちばんの見せ場はそこではなく、その後のワンアイデアだ。平凡な監督ならウエットにしようと思う箇所は、ふんだんにあるが、慎重に、丁寧に、そうしないドキュメンタリー畑出身の監督の演出見事。アスペクト比がスタンダードで、もしやフィルム作品かと思ったが、エンドクレジットにカラーリストとはっきりある。まるで『ハマスホイの絵』の様に静かで変化しない室内の構図面白い。国の特徴なのか、貧相で画面に色味がない。アイルランドは英語でないと今さら痛感する。自由主義国とは思えない閉ざされた日々の描写に、観客は息を詰めて3人の生活を見つめる。酪農家なのに環境音でさえ最低限だ。トラウマを持つ心優しいおばさんとの交流かと思わせて、実は誠実な叔父との物語だった。"郵便受けに走る"というだけのシーンにケレン味を出す手腕。我が国でもその気になれば出来るはずの設定だが、絶対に敵わないだろうなぁと思わせた秀作

第72回ベルリン国際映画祭 国際ジェネレーション部門 グランプリ受賞/第95回アカデミー賞の国際長編映画賞ノミネート