私の世界から色が消えたあの日、

長男がお空にいってしまったあの日。

長男は意識がないまま、

救急車で病院に運ばれました。


私はそのとき、パニックになっており、

変わり果てた長男の姿を前に、

ただただ長男の名前を叫び続ける以外、

何もできませんでした。


そんな状況もあり、

救急車には夫が付き添い、

病院まで行ってくれました。

そして、その運ばれた病院で

長男は最期を告げられたのです。

その瞬間に立ち会ったのは、

家族では夫ただ一人でした。


あとで夫から聞いたことですが、

「本当に気が狂いそうになっていた。

 病院の目の前の道路に、

 このまま飛び込もうかと思った。」

と、当時を振り返って言っていました。





当時の私の状況がどうであれ、

こんなにも残酷で辛いその場所に、

夫だけを立ち会わせて、

すべてを夫に任せてしまったこと。

そして、

長男の最期を自分の目で

見届けてあげられず、

そばにいてやれなかったこと。

今でも、本当に本当に後悔しています。


長男の最期に立ち会い、見届けた夫。

その場に一緒に立ち会ってくださった

ある看護師さんがいました。

夫は現実を飲み込めずに、

たった一人で大粒の涙を流しながら、

立っているのがやっとの状態でした。

そんなとき、その看護師さんが

「助けたかったです。悔しいです。」

と言って一緒に

泣いてくれたんだそうです。


ただただ、夫の溢れて湧き出る

様々な想いに心を寄せ、

一緒にその場に「いて」くれたのです。


私は新人看護師の頃、

患者さんやご家族の前で泣かないように、

感情的にならないようにと

教えられました。

時と場合によるとは思います。


でも、

今回の夫とその看護師さんのように

医療者の涙や家族以外の誰かの存在が、

患者さんやご家族を救う

たったひとつの手だてになることも

あるのです。

優しさ、温かさ、

そして寄り添いの心に

あの日、夫は救われました。




そのことがあったので、

夫は少し落ち着くことができたと

言っていました。


ずっとお礼を言いたいと思っていますが、

いまだに長男が運ばれた

その病院に行くことができません。

この場を借りて。

あの日、夫を救っていただいて、

ありがとうございました。