“大沢在昌” 『雨の狩人』
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
新宿のキャバクラで、不動産会社の社長が射殺された。
捜査に当たった
新宿署の刑事・佐江と警視庁捜査一課の谷神は、
その事件の裏に日本最大の暴力団である
高河連合の影があることを突き止める。
高河連合最高幹部の延井は、
全国の暴力団の存亡をも左右する一世一代の大勝負
「Kプロジェクト」を立ちあげ、完全無欠の殺し屋を使い、
邪魔者を排除しようとしていた。
佐江、谷神と高河連合が、互いの矜持と命をかけた
“戦争”を始めようとする中、
プラムと名乗る一人の少女が現れる。
進むことも退くこともできない暗闇の中にいた佐江は、
絶望をたたえたプラムの瞳に、一縷の光を見出すが…
“新宿鮫シリーズ” に代表されるハードボイルド作家です。
本作も “狩人シリーズ” として既に3冊刊行されています。
実は私、“新宿鮫シリーズ” も読んだことがなく、
本作の “狩人シリーズ” も初読みなんです。。。
しかし、シリーズ物以外は結構読んでいて、
かなり好きな作家のお一人です。。。
個人的には “冬芽の人” や “海と月の迷路” などが、
印象に残っています。。。
本作では新宿署のマル暴担当刑事で、
左江というなかなか主人公としては登場しないような
特異なキャラクターが異彩を放っています。。。
左江は、
警察社会での階級や出世に全く興味を持たず、
周りからの評価や見てくれなどは気にも留めず、
群れを嫌い他とは迎合しないアウトローデカで、
署内一の厄介者と嘲弄されています。。。
しかし、
マル暴担当一筋で誰よりも管内の裏社会に精通し、
また、
意外にも誰よりも悪や暴力を憎む信念の人です。。。
そして、その強い信念は、
ありがちな裏社会との取引や癒着といった
ダーティーな部分を決して受け容れることもなく、
結果として、悪に弱みを握られることもありません。。。
ですから、
マル暴一筋で長期に渡り同じ管内にいながらも、
裏社会との間で情報漏洩などの不祥事を起さず、
署内では厄介者と揶揄されながらも結果を残し、
上層部や組対課としては唯一無二の存在として、
手放すことのできないスペシャリスト的存在です。。。
話の方は暴力団が、
暴対法などによる封じ込め施策によって、
資金源としての表のシノギを失いつつある中、
人権を擁護される暴力団構成員でない悪のカタギを
隠れ蓑として利用しながら組織の存亡を図る話です。。。
そこに、
前述の左江と謎の警視庁捜査一課谷神が立ち向かい、
フィリピンで腕を磨いた日本人の殺し屋とその娘などが
入り乱れ…なかなか面白くて楽しめました。。。^^v
最後の方は、
警察 vs. 暴力団 の抗争で無茶苦茶な殺し合いになり、
左江を除くほとんどの人間が死んでしまいます。。。
真実は双方の上位団体の利害を守るために、
闇に葬られてしまいます…上は同じ穴の狢です。。。
本文にも度々出てきましたが、
規制を強化し表面的に暴力団による犯罪を減らしても、
見えない部分で狡猾に組織化された犯罪は増加し、
結局、何も変わらないという無力感を感じました。。。
最後まで生き残った、左江はどうなるんでしょうか^^?
結構、気に入ってしまいました^^!
是非、復活した続編を期待したいと思います。。。^^!
2年ほ新宿に隣接する渋谷区の隣駅に住んでいたので、
新宿界隈の描写は懐かしく思いました…
女占い師と雨が、なんとなく新宿らしくて象徴的でした。。。^^v