“佐々涼子” 『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
「8号(出版用紙を製造する巨大マシン)が止まるときは、
この国の出版が倒れる時です」
2011年3月11日、
宮城県石巻市の日本製紙石巻工場は津波に呑みこまれ、
完全に機能停止した。
製紙工場には「何があっても絶対に紙を供給し続ける」
という出版社との約束がある。
しかし状況は、従業員の誰もが「工場は死んだ」
と口にするほど絶望的だった。
にもかかわらず、工場長は半年での復興を宣言。
その日から、従業員たちの闘いが始まった。
食料を入手するのも容易ではなく、
電気もガスも水道も復旧していない状態での作業は、
困難を極めた。
東京の本社営業部と石巻工場の間の意見の対立さえ
生まれた。
だが、従業員はみな、工場のため、石巻のため、
そして、出版社と本を待つ読者のために力を尽くした。
震災の絶望から、
工場の復興までを徹底取材した傑作ノンフィクション。
この作者は、
ノンフィクションライターというのか?
ドキュメンタリー作家というのか分かりませんが、
前作、
“佐々涼子” 『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』
http://ameblo.jp/no-15-ku/entry-11605755792.html
を読んでとても感銘を受けました…えぇ話と仕事です。。。^^
こちらもお勧めですが…本作は更にお勧めです。。。
震災当時、私は東京に住まい、
日々日常の不自由さや原発の恐怖を感じながらも、
切羽詰ったほどの危機感はなく、
現地のあまりに凄惨な現実をよく知りませんでした。。。
こんな私のように、
東北大震災を身近な出来事ではなかった多くの方々に、
読んで頂きたいと思いました。。。
本書は、
製紙工場の震災からの復興を追い掛けたドキュメントです。
本好きで、
毎日ページを捲りながらも “紙” についてこの本を読むまで、
あまり意識したり、別段興味はありませんでした。。。
ただなんとなく、
単行本・文庫本・辞書・コミックなどで、
夫々に紙質や手触りが違うなぁ~という程度でした。。。
その紙に、
出版社や編集者による色合いなどの強い拘りがあることと、
その拘りは特定の製紙工場でしか、
実現できないことなどを初めて知りました。。。**!
コミック雑誌の紙などは、嵩高くなりながらも軽量で、
指を傷つけることのない柔らかさを追求した結果だそうです。。。
それにしても、
ノンフィクションであるが故の普通の人が語る壮絶な経験は、
大変重くて言葉を失います。。。
決して美談やきれい事だけでは生き残れなかったという
あまり語られなかった痛ましい現実や、
あまりに多くの身近な人々が亡くなったり行方不明の中、
自分自身の精神の崩壊を防ぐために、
自己防衛本能として全ての感情を失くしてしまった人たち。。。
体を動かし続けなければ気持ちが落ち込んで行ってしまうと、
一心不乱に復興を目指して働くその工場の構内で、
次々と見つかるご遺体…
長期に渡り40数体ものご遺体が回収されたそうです。。。
こんなに悲惨な非日常は、
体験した者でないと真の理解や共感は難しいと思いますが、
人として、日本に住む者として、いつかの教訓として、
そして、
本大好き人間は知っておくべきことだと思いました。。。
それにしても復興のリーダーとして、
軸をぶらすことなく責任の全てを被ると腹を括った工場長に、
マネジメントの本質を見た気がしました。。。^^v