第5話は「労働者の辞める権利」について。
人気のスイーツの生みの親であるパティシエ・唐沢が西東京労働基準監督署に相談にやってきた。
お菓子を量産するためにレシピを改悪するよう強制されることに耐え切れず退職願を提出したのだが、社長が退職を認めてくれないのだという。
凛は労働者の“辞める自由”を守るために適切な指導をするが、今度は社長の川合が唐沢を損害賠償で訴えると言い始めた。どうやら胡桃沢が川合に助言したらしい。
民事裁判になってしまえば労基署は手出しができないのだが、諦めきれない凛は南三条と一緒に胡桃沢の事務所に乗り込んだ。
胡桃沢と激しい口論を展開した凛は、その足で川合のもとへ。
長年タッグを組んで仕事をしてきて、川合のお陰で“一流パティシエ”として認められるようになったはずの唐沢が、勝手なことを言うのがどうしても許せないという川合。
悔しさを隠そうともしない川合を前に唸ることしかできない凛だったが、南三条から唐沢の作るお菓子の味が落ちているという事実を知らされ、もう一度唐沢に会いに行くことに。
唐沢は「損害賠償請求なんてされても払えないし、自分はこのまま不本意なお菓子を作り続けるしかないのだ」と半ば自嘲気味に言います。
結局、最後は賀来千賀子扮する社会保険労務士が間に入り、「唐沢は商品のレシピを他の職人に教える(誰もが同じ味のものを作れるようにする)、川合は損害賠償請求を取り下げる」ということで話は落ち着きます。
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一見、双方にとって「良い結果」が出たように思えます。
けれど、私には、長期的に見たときにそれが唐沢にとって「いいこと」だとは思えなかったのです。 なぜか。
その店のケーキ職人がすべて同じレベルの商品を作れるようになったら、唐沢の価値は下がります。現時点では彼には「新しい商品を作り出して、それを下の者に教える」という付加価値はありますが、それが果たしていつまでつづくかわかりません。金の亡者のようになった川合は「同じレベルの商品を作ることが出来る職人」が複数できたら、店舗を増やすことを考えるでしょう。
そのときに、また唐沢とぶつかるだろうと思いました。
そして、そのときには必ず雇用主である川合に有利にことが運ぶであろうと思いました。
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私は自分が派遣で仕事をしていたときのことを思い出しました。
自分の資料を割りと気前よく後輩に貸していたので、よく同僚から「そんな勿体無いこと、よくできるわ」と言われたものです。
幸い、私の在職中にその仕事で私を超える人はでてきませんでした。
自分が試行錯誤して、いろんな人に教えてもらいながら作った資料だったので、「退職するときは全部シュレッダーにかけてやる!」と思っていましたが、荷物を整理する時間がなくて「これ、いる人?」と声をかけたら、欲しいといってくれた人がいたので、その人にあげてしまいました。その資料は私がその職場で働いていた6年間の結晶でした。
ある意味では、その資料を持っていたからこそ、高年齢にも拘らず契約更新と昇給を得ることができたのだと思います。
お客様相手の仕事は「サービス内容の均等化」が求められます。
誰がしても同じ内容のサービスを提供できることが理想です。
ただ、それは口で言うほど易しいことではありません。
「均等化するためのマニュアルを作る」ことほど、難しく、しんどく、時間がかかるのに、報われることの少ない、あほらしい仕事はないのですよね。へっ(失礼)
なので、その意味でも一見「双方譲り合って」に見える結末でしたが、「違うやろ?それ、なんか違うやろ?」と思いながら見ていました。
多分あの状況では一番妥当な解決方法だったのだろうとは思いましたが、なんとなくスッキリしない終わり方でした。
(クーちゃん)