衝動に駆られた人 | モモロの核心に近いところ

モモロの核心に近いところ

思い思い、浮かんだことをつづっていくところ。矛盾だって御愛嬌。

私は必死だった。
必死に雪道を走っていた。
白い息を吐きながら、
この街から遠い、暖かい街に行きたかった。

駅員に
「今すぐ乗れて遠い、暖かい街に行ける切符をください」
と言った。
あまりの必死さに駅員は明らかにドン引きしていた。
「はぁ…わかりました…。」
そう言ってカタカタとキーボードを打ち、発券してくれた。
「2番線に来る特急に乗って、11番目の駅で降りてください。」
無表情の駅員さんはそう言って切符を差し出してきた。降りる駅の名前は見たことがないし読めなかった。

車内で買ったシャケおにぎりを暖かいほうじ茶で流し込みながらぼんやりと車窓を眺めていた。まぁ、車窓と言ってもほとんどトンネルの中なのだが…。
窓に反転して映る自分はとても疲れた顔をしている。
どうしたというのだ私。あの街を捨てて、新しい自分を手に入れるためにせっかく決断して飛び出してきたのに。もっとワクワクしていてもいいじゃないか。

11番目の街はどんなところなのだろう。
あの無表情の駅員を信じて飛び乗ったが、
そこに私が期待するものはあるのだろうか。
もっと下調べをして、ちゃんと目的地を決めて出てくればよかったか…。

しかし、私は決めたのだ。
壁に咲いた嘘みたいな花が朽ち果てて
床に転がっているのを見て泣いた昨日の夜、
もう自分に嘘はつかないと決めたのだ。
時には賭けてみたっていいのではないだろうか。
このトンネルを抜けて、長い道のりを進んだ先に
待っている街で、たとえ自分が求めている物がなかったとしても、乗り越えられる力はあるし、ツテはまた探せばいい。

失ったものはたくさんある。
きっとこれからも失う。
でも私は新しく作るし、手に入れる。

ここから長い旅路になるだろう。
いつの間にか窓の外は畑が広がっている。
田植えの時期だろうか。

穏やかな日差しを受けながら、
私は目的地まで眠ることにした。