【がんちゅうのくぎ】
邪魔者、いやなやつ、憎らしい人、障害物。

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一方の手でもう一方のコブシを握りこみ、関節をポキポキ鳴らしながら相手を威嚇する行為が絶えて久しい。

『北斗の拳』や『ドラゴンボール』などのアニメや、ちょっとしたバイオレンス込みのドラマを最後に、少なくとも私は20年以上見ておらず、もはやその存在すら忘れていた。

ところがつい先日、その存在を思い出させてくれる人物に出会った。

とある電車の少し混雑した車内にて、大股を開いて長いすに座るやや大柄で薄毛の男がいた。目の前で繰り広げられるその勝手気侭な振る舞いに、モラルというものを持ち合わせていないのかな、などと思い、同時に私はそれを口に出してしまったらしい。男が突然ボソボソと何かを唱えながら、例の指ポキポキを始めたのである。

当然、初めはその意味不明な行為を理解できるわけもなく、単に薄気味悪いオッサンやなあ……などと思っていたのだが、よくよく聞いてみると、その呪文は「うるさいアホ!ボケ!△※○◆×!」といった、こちらに向けた罵詈雑言だったのである。

なるほど。その指ポキポキでこちらを威嚇していたのか……。

その後、電車を降りるまでの私は、必死に笑いをこらえていた。それは言うまでもないことか。
【ろぎょがいし】
書き誤りやすい文字のこと。

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アボド。

今やどこのスーパーにも置かれ、多くの飲食店でも扱われ、また、様々なジャンルのレシピ本にも掲載されている。ひょっとするとこの名を目にしない日は無いかもしれないぐらい、広く一般的な食材である。

しかしながら悲しくも、正確な名前が浸透していない。

誰かとの会話の中で、「アボドって醤油とわさびで食べるとおいしいよね。」
スーパーのポップに、「森のバター『アボド』1個99円!!」
レストランのメニューに、「アボドと小エビのサラダ」等など、数えあげればキリが無い。

あるレストランは、自ら「avocado」とアルファベットで表記しているにも関わらず、その横に「アボド」と書いていた。オーダーの際に、「アボドと小エビのサラダください。」と親切にも教えてあげたが、「はい、アボドと小エビのサラダですね。」と復唱されてしまった。もはや救いようが無い。

なぜ、このような事態に陥ってしまったのだろうか。

「アボド」と聞き、(無理矢理)思いつくのは「アメディオ・アボガドロ」。有名な「アボガドロの法則」を発見したイタリアの科学者である。

アボガドロの法則については、おそらく中学生か高校生の頃に学んだはずである。そこで多くの人の言語野に「アボ○ド」とくれば「」と、インプットされ、いつまで経っても「アボド」の名が浸透しないのかもしれない。

しかし、“有名な”とは書いたが、私はアボガドロの法則について何も覚えていない。もちろん、アメディオ・アボガドロなる人物など知るワケも無い。こうなると根拠としてはいささか頼りなく、声を大にしてこの説を唱えるのは無理がある。

「アボド」だと信じて疑っていない人々を、生い立ちから詳しく分析する必要があるのかもしれない。
【おめいへんじょう】
新たな成果を挙げて、悪い評判をしりぞけること。

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三菱東京UFJ銀行のカードローン「バンクイック」のCMが腑に落ちない。

これは、阿部寛と戸田恵梨香が出演している連続ドラマ仕立てのもので、阿部のグループと戸田のグループが合コンしますねん。というストーリーを軸に展開している。

第3話ではついに全員が集合し乾杯をするのだが、そこで戸田はこともあろうに赤ワインを頼んでしまう。赤ワインである。合コンでうら若き乙女が赤ワインである。

合コンというものは、初対面の男女が、将来のくんずほぐれつを夢見て参加するご挨拶の場である。僅かな時間の中で、いかに自分を美しく、かしこく、かぐわしく見せられるかを勝負する場でもある。

そんな時に、そんな瞬間に、赤ワインを飲むなんて……。

赤ワインを飲めば、唇や歯が黒ずんでしまう。そんなオモシロ顔の人間など、たとえどれだけの美人であっても誰も直視はできないはずだ。また、そんな場でそんなことも考えずにオーダーしてしまう軽率な人間など、今後のくんずほぐれつには不適格だと判断されるだろう。

この最悪の第一印象をどう挽回するのか、今後の戸田の振る舞いに注目したい。