うちには、天使がいます。173.皇帝の霊薬 | うちには、天使がいます。

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ピアノ弾き語り落ちこぼれシンガー・うたうやまねこと、そのパートナーゆかさん、そして寄り目のみけねこメイさんの、命の記録です。



・登場人物
<ゆかさん>
やまねこの奥さん。2020年9月、卵巣がんにより永眠。
2018年4月初めに腫瘍が見つかり、月末にはトルソー症候群による脳梗塞を発症。
手足や会話に障害が出ながら、摘出手術を経て、
2018年9月には全6回の抗がん剤治療も完遂。
諸事情により、ふだんは実家で母と暮らしながら、歩行のリハビリを中心に、
手足のしびれや難聴、高次脳機能障害など、脳梗塞の後遺症や抗がん剤の副作用と闘いつつ、
週末はやまねことうちで過ごす、という生活をしていましたが、
2019年11月12日、ついに新居でやまねことの生活がスタートしたのもつかの間、
12月11日にはがんの再発を宣告されてしまいます。
<やまねこ>
ゆかさんの夫。
落ち着きがなく要領が悪く、おまけにコミュ障。
いまいち頼りないだんなさまですが、
たまにライブハウスでピアノを弾いて歌をうたっていたりします。
<メイさん>
17年前にへその緒つきで捨てられていたところをやまねこと出会い、
それからずっといっしょに暮していた、寄り目のみけねこ。
2018年12月29日、突然猫てんかんの発作を起こし
翌2019年1月9日早朝、病との闘いの末、永眠。


(なお、病院関係者のかたがたほかの名前は、すべて仮名です)


※最初にお断りしておきますが、この文章はがんその他のあらゆる疾病に対する民間療法、
または健康法としての天然成分の摂取を推奨するものではありません。
そこをご承知の上、お読み進めください。

2020年5月13日、水曜日。
ゆかさんは通院・検査の結果、副作用のためゲムシタビン点滴は中止になり、
今後の治療方針として、カルボプラチンのみを続けることになりました。
次回の入院はまた1週間後、19日からです。

やまねこはふと思いついたことがありました。
「ゆかさん、やまねこ去年霊芝取ってきて乾燥してあるんだけど、
よかったら煎じて飲んでみる?」

霊芝とは、通販などでも売っていますが、マンネンタケというきのこです。
去年の夏、たまたま通勤途中の公園に生えているのを見つけて、
ついつい採集してしまい、乾燥して保存してあったのです。
「薬用きのこ」であるということは知っていて、
抗腫瘍作用も認められるという記述は見ていましたが、ついつい今まで放置していたのです。

曰く、マンネンタケとは、
(きのこ図鑑などでは「薬用とされる」くらいしか記述のないものが多いので、
以降はWikipediaからの引用となります)
「後漢時代(25-220)にまとめられた『神農本草経』に命を養う延命の霊薬として記載されて以来、
中国ではさまざまな目的で薬用に用いられてきた。(中略)
子実体はさまざまな多糖類(β-グルカンなど)やテルペノイドを含む。
抗腫瘍作用の報告は多い。
ほとんどは試験管や動物実験で、ヒトでの臨床報告は限られている。
古代中国では霊芝の効能が特に誇大に信じられ、
発見者はこれを採取して皇帝に献上することが義務付けられていた」
これを読む限り薬用として約2000年の歴史があり、
時代が時代であれば中国皇帝に献上しなければならないくらいの霊薬という、
そんな大層なものだった、ということです。
でも実際には試験管内ではがん細胞に対して効果がありますが、
臨床的に実証されているわけではない、ということです。
臨床的に効果が証明されているなら、がんの標準治療として使われているはずです。

要するに、効果があるかどうかはわからない、ということです。
それでもゆかさんに飲んでもらおうか、と思ったのは、
ただ保存しておいてもしかたないということと、
とりたてて副作用もなさそうだ、と思ったからです。

もちろん、天然成分だから安心、などということはなく、
ましてや相手はきのこです。
やまねこは民間の「きのこ検定」で1級を持っていますが、
だから間違いをしない、ということではありません。
同定には慎重に慎重を期すことが必要です。
それに無毒なきのこであっても腐敗していれば中毒しますし、
マンネンタケのような硬質なきのこは生きているか死んでいるかわかりづらく、
死後も姿を保っていることが多いですが、その場合化学成分は流れ出てしまうため、
効果がなくなってしまいます。

いろいろ文献を調べると、煎じ方のレシピもさまざまでしたが、
乾燥重量10gに対して水1Lで約30分、半量になるまで煮詰める、というのが簡単そうなので、
これでいってみよう、と思いました。

ゆかさんは、
「うん、ねこさんが作ってくれるなら飲んでみるよ」と言ってくれました。
さっそく実行に移します。

ホーロー鍋に水と霊芝を入れて弱火にかけ、
仕事をするかたわら何度か様子を見にきます。
30分でたしかに約半量になりました。
コップ一杯ということですが、まずは試しに小さなグラスに半分―
「ゆかさん、どう?」
「うん、苦いよ」
やまねこも少しなめてみましたが、たしかに苦いです。
「良薬は、っていうから、少しでも効いてくれるといいね。
毎日少しずつ飲んでみよう」

残りはさまして冷蔵庫にしまい、
毎日1回、少しずつ飲んでもらうことにしました。
何度も煎じるうち、かなり苦くなることもあり、おだやかな味になることもある、
ということもわかってきました。部分によって味が変わるようでした。

このようにして、ファイトケミカルスープとともに、
ゆかさんの日常にささやかな習慣が加わりました。

繰り返しになりますが、この文章は民間療法や自然療法を推奨するものではありません。
「せっかく採ってきたので、一種の健康茶として飲んでみた」
程度にとどめておいてくださると幸いです。





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次回のLIVEは少し先、連休最終日です。

2024.5.06(Mpn.祝)at 祖師ヶ谷大蔵エクレルシ
「五月に薫る風」
OPEN18:30/START19:00/CHARGE\2,200+1D
☆やまねこの出演は4組中4組め、21:00からの予定です。
 配信視聴はこちらから(無料・投げ銭制)→
 https://www.ecllive.com/live-schedule

桜の花も次々と散り、
つつじや花みずきが初夏をかんじさせてくれてますね。
お休みのかたも、お仕事のかたも、
おだやかな5月を迎えられますように。