うちには、天使がいます。172.ゲムシタビン中止 | うちには、天使がいます。

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ピアノ弾き語り落ちこぼれシンガー・うたうやまねこと、そのパートナーゆかさん、そして寄り目のみけねこメイさんの、命の記録です。

 


・登場人物
<ゆかさん>
やまねこの奥さん。2020年9月、卵巣がんにより永眠。
2018年4月初めに腫瘍が見つかり、月末にはトルソー症候群による脳梗塞を発症。
手足や会話に障害が出ながら、摘出手術を経て、
2018年9月には全6回の抗がん剤治療も完遂。
諸事情により、ふだんは実家で母と暮らしながら、歩行のリハビリを中心に、
手足のしびれや難聴、高次脳機能障害など、脳梗塞の後遺症や抗がん剤の副作用と闘いつつ、
週末はやまねことうちで過ごす、という生活をしていましたが、
2019年11月12日、ついに新居でやまねことの生活がスタートしたのもつかの間、
12月11日にはがんの再発を宣告されてしまいます。
<やまねこ>
ゆかさんの夫。
落ち着きがなく要領が悪く、おまけにコミュ障。
いまいち頼りないだんなさまですが、
たまにライブハウスでピアノを弾いて歌をうたっていたりします。
<メイさん>
17年前にへその緒つきで捨てられていたところをやまねこと出会い、
それからずっといっしょに暮していた、寄り目のみけねこ。
2018年12月29日、突然猫てんかんの発作を起こし
翌2019年1月9日早朝、病との闘いの末、永眠。


(なお、病院関係者のかたがたほかの名前は、すべて仮名です)


2020年も5月に入り、
ゆかさんは2日の通院のあと、うちでゆっくり過ごしていました。
あいかわらず微熱は上がったり下がったりだったのですが、
6日の夜になって突然39℃の高熱を出してしまいました。
翌朝には下がっていたのですが、ゆかさんは病院に電話して相談。
現在は熱も下がったこと、食事はできていることを伝えると、
「もう少し様子をみましょう。また熱が上がったら連絡ください」と言われたとのことでした。

ところが翌日、ゆかさんは不安な面持ちで、
「どうしよう、尿の色がおかしいのよ」と言いました。
「どんな?」「うん、濃い茶色みたいなかんじ。それにわたし、黄疸も出てない?」
目をのぞきこんでみました。
「ほんとだ。なんとなく黄色くなってる気がする」
「やっぱり病院電話してみる」

ちょうど知っている看護師さんが電話に出てくれたようで、
「あした土曜日だけど葛西先生外来に来てるからって、予約入れてくれたよ」とのことです。
イレギュラーではありますが、やまねこも休みなのでいっしょに通院することにしました。

5月9日。病院で、まず血液検査と尿検査を受けました。
「尿、今日もまっ茶色で、提出したら係りの人が見てすぐ、『お大事に』て言われたよ」
ゆかさんはとても不安そうでした。それはそうでしょう。
ところが葛西先生は検査結果を見て、
「尿検査のほうはとくに異常ないんだよね」と言いました。
「潜血+3、蛋白+2で、潜血のほうは赤血球も問題ない範囲です」
「蛋白+2ですか?すごい泡立ってびっくりしたんですが」
先生は優しく諭すように「そんなになんでも心配しなくていいですよ」と言いました。

ゆかさんは「このあいだの通院のときなかなか微熱下がらないって言ったら
今村先生が解熱剤ロキソニンからナイキサンに変えてくれたんです。
説明書に『尿が赤くなったり、皮膚が黄色くなったらお知らせください』
て書いてあったんですけど、これのせいでしょうか」と説明書を見せました。
葛西先生は「そうかもしれません。念のためにまたロキソニンに戻しましょう」
と言ってくれました。

「血液検査のほうは、炎症の値が高いです。
あとLDHの値が異常にあがってしまっていますが、
(LDHとは肝機能の指標ですが、がんの進行で上昇することもあるらしいです)
採血のときの状況に左右されやすいので、13日に通院入っていますね?
そのとき再検査しましょう」
と、その場で検査の予約を入れてくれました。
「あとまたヘモグロビンが7以下に下がっちゃってますね」
「このあいだ輸血したばかりなのに?」ゆかさんはまた少しショックを受けたようでした。

その日の夜から黄疸は少しずつ回復し、尿の色もふつうに戻ってきたようでした。
「やっぱりナイキサンのせいだったのかな。
なんかネットで見てみたら血液さらさらの薬と相性悪いみたいだし。
先生たちも気づかなかったのかな」ゆかさんは言いました。



そして4日後、13日の再検査にもやまねこは付き添いました。
結果はLDHはあいかわらず高いものの、炎症の値は下がっていました。
ただ、貧血はさらにひどくなり、ヘモグロビンがもう少しで6を切るくらいまで下がってしまったようで、
先生は「外来では輸血できないから、
次の入院のとき数値が戻ってなかったらまた輸血かな」と言いました。

そしてこの日は本来GC療法のゲムシタビンの点滴の日だったのですが、中止になってしまいました。
「副作用が強く出ているようなのでこれまで2段階で量を減らしてきたんですが、
これ以上は減らせないんです」先生は言いました。
「GC療法も効いているのかいないのか微妙なところで、カンファレンスではほかの薬の案も出たんですが、
私としてはカルボプラチンだけを続けるのが良いと思います」
ゆかさんが「いつまでですか」とたずねると、先生はゆかさんの目をしっかり見て、
「効果がある限りです」と答えました。
「もっとも副作用のことも考えて、続けるのもやめるのもゆかさん次第です。
どうされますか?」
「ただでさえ高次脳(機能障害)で音楽わからなくなってるのに、
耳がこれ以上おかしくなるのは耐えられるかどうかわからないけど、
前回、聴覚過敏はかわらないけど聴力は回復したって言ってもらえて、
お薬も出してもらえてるので、可能性があるならカルボプラチン続けたいです」

次回の入院は予定通り、ということになりました。


その晩、ゆかさんは夜中に泣き声を立てていました。
翌朝「どうしたの?」と訊くと、
「肺化膿、コロナ疑い、肺梗塞?なのか発熱と胸痛、咳、痰は続いたままで、
心と脳が疲労していたのかも」とゆかさんは答えました。
不安定な状況が続きます。





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次回のLIVEは、来週土曜日、横浜白楽です。

2024.4.20(Sat.)at白楽Nap
「Believe」
OPEN16:10/START16:30/CHARGE:\1.600+1D
☆やまねこの出演は5組中3番め、17:40からの予定です。
 配信視聴はこちらから(無料)→
 https://m.youtube.com/user/nodutatane
 この日は白楽のお祭り「六角橋商店街ドッキリヤミ市場」の日に当たっているので、
 OPEN/STARTが早くなっています。お気をつけください。
 LIVE後にお祭りを楽しんでいただくこともできると思います。ぜひ!