うちには、天使がいます。169.GC療法5クールめ | うちには、天使がいます。

うちには、天使がいます。

ピアノ弾き語り落ちこぼれシンガー・うたうやまねこと、そのパートナーゆかさん、そして寄り目のみけねこメイさんの、命の記録です。

 


・登場人物
<ゆかさん>
やまねこの奥さん。2020年9月、卵巣がんにより永眠。
2018年4月初めに腫瘍が見つかり、月末にはトルソー症候群による脳梗塞を発症。
手足や会話に障害が出ながら、摘出手術を経て、
2018年9月には全6回の抗がん剤治療も完遂。
諸事情により、ふだんは実家で母と暮らしながら、歩行のリハビリを中心に、
手足のしびれや難聴、高次脳機能障害など、脳梗塞の後遺症や抗がん剤の副作用と闘いつつ、
週末はやまねことうちで過ごす、という生活をしていましたが、
2019年11月12日、ついに新居でやまねことの生活がスタートしたのもつかの間、
12月11日にはがんの再発を宣告されてしまいます。
<やまねこ>
ゆかさんの夫。
落ち着きがなく要領が悪く、おまけにコミュ障。11:33 2024/02/25
いまいち頼りないだんなさまですが、
たまにライブハウスでピアノを弾いて歌をうたっていたりします。
<メイさん>
17年前にへその緒つきで捨てられていたところをやまねこと出会い、
それからずっといっしょに暮していた、寄り目のみけねこ。
2018年12月29日、突然猫てんかんの発作を起こし
翌2019年1月9日早朝、病との闘いの末、永眠。


(なお、病院関係者のかたがたほかの名前は、すべて仮名です)



2020年4月15日。

ゆかさんの入院と入れ替わりにやまねこのテレワークが始まり、
いきなりうちでひとりきりで仕事、というのはどこか妙な気分でしたが、
とにかくゆかさんが抗がん剤治療を再開できたというのは、
とてもうれしいことでした。

入退院時を除いて面会が禁止になったのは、仕事に集中するためには良いのだろう、と、
割り切ることにしました。
ゆかさんからは、いったん15日に抗がん剤の点滴始まったよ、とメールが来ました。
抗がん剤のあとは水の点滴で抗がん剤を体の外に出していくのですが、
なかなか出ていかないと(つまり水分で体重が増えてしまうと)
こんどは利尿剤を点滴することになります。
ゆかさんは1日めから利尿剤の点滴になってしまったようでした。

血液検査の結果はまたヘモグロビンと血小板が下がっており、
「また輸血になりそうだけど、抗がん剤と同時にはできないから、
抗がん剤とお水と全部終わってからになりそうよ」
また輸血か…たいへんだ。

「それからね、あした八神さん通院の日て言ってたから、
ひょっとしたら会えるかも。
この時期だから会わないほうがいいのかもしれないけど」このメールには、
「せっかく会えそうなときは会っておいでよ。なかなか機会もないのだから」
と返事しておきました。

翌日、報告が来ました。
「八神さん、会えました。弟さんといっしょに車いすで来てました。
でもどんどん動けなくなっていて、褥瘡もひどい状態で、
おトイレもぎりぎりなんとかいけてるけど、寝返りもできなくて、
それでもひとりでがんばってるのすごいです。
でもそれでもうちにいたいという気持ちもわかるの。
また神経がつながる可能性はゼロではないみたいから、祈るしかできないけど、
またいっしょにファミレスでお食事できることを信じています。
私も治さなくちゃね」

八神さん、とうとう車いすになってしまったのか。
骨転移で、褥瘡もできて、痛くて痛くてたまらないのだろうけれど、
もちろんゆかさんも、もうひとりのともだちの槙野さんもつらいのだけれど、
いっしょけんめい励ましあっている。
じぶんはそこには入れないけれど、
できる限りのサポートをしていくのみです。

ゆかさんはなかなか体重が落ちず、利尿剤の点滴が続いたまま、
退院予定の18日、土曜日を迎えました。
「朝採血全然とれなくて、3回めのトライでようやくとれました。
これから、お水一本点滴して、採血の結果待って、
輸血が決まったとしてもそれから準備に時間かかるから、
今日は遅い退院になってしまいそう」

折しも、雨が降り出していました。
天気予報でも雷強風注意報が出ていて、激しい雨が窓を叩いています。
「でも3時以降なら雨が弱まってくるという予報もあるので、
遅いほうがピークは抜けられるかも。
看護師さんに午後遅めの退院にしてもらえるか訊いてみるね」

10時過ぎに、
「輸血決定です。
お水の点滴終わってからになるので、お昼ごはんも出るようにしてくれてるみたいで、
次の人も決まってないから遅めの退院でかまわないよと言ってくれました。
だから、3時くらいのお迎えで大丈夫と思います」

雨音を聴きながら、やまねこはゆっくり準備しました。
すると3時少し前に、奇跡のように雨が上がり、かすかに青空ものぞいてきたのです。
「ゆかさん、奇跡みたいだよ。
きっと神様も『退院して大丈夫!』って言ってるんだよ」

やまねこは車に乗り、ゆかさんを迎えに行きました。
そして「これからはずっと一緒だよ」と言いながら、
ふたりで家に帰り着きました。





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ワンマンLIVEも終わり、次のLIVEはもうさくらの季節です。

2024.4.09(Tue.)at 祖師ヶ谷大蔵エクレルシ
「桜色の木の下で」
OPEN18:30/START19:00/CHARGE\2,200+1D
☆やまねこの出演は3組中の最初で、19:00からの予定です。
 配信視聴はこちらから(無料・投げ銭制)→
 https://www.ecllive.com/live-schedule

このところ寒い日が続きましたが、春の日、お会いできますように。