うちには、天使がいます。170.ひとつ屋根の下 | うちには、天使がいます。

うちには、天使がいます。

ピアノ弾き語り落ちこぼれシンガー・うたうやまねこと、そのパートナーゆかさん、そして寄り目のみけねこメイさんの、命の記録です。

 


・登場人物
<ゆかさん>
やまねこの奥さん。2020年9月、卵巣がんにより永眠。
2018年4月初めに腫瘍が見つかり、月末にはトルソー症候群による脳梗塞を発症。
手足や会話に障害が出ながら、摘出手術を経て、
2018年9月には全6回の抗がん剤治療も完遂。
諸事情により、ふだんは実家で母と暮らしながら、歩行のリハビリを中心に、
手足のしびれや難聴、高次脳機能障害など、脳梗塞の後遺症や抗がん剤の副作用と闘いつつ、
週末はやまねことうちで過ごす、という生活をしていましたが、
2019年11月12日、ついに新居でやまねことの生活がスタートしたのもつかの間、
12月11日にはがんの再発を宣告されてしまいます。
<やまねこ>
ゆかさんの夫。
落ち着きがなく要領が悪く、おまけにコミュ障。
いまいち頼りないだんなさまですが、
たまにライブハウスでピアノを弾いて歌をうたっていたりします。
<メイさん>
17年前にへその緒つきで捨てられていたところをやまねこと出会い、
それからずっといっしょに暮していた、寄り目のみけねこ。
2018年12月29日、突然猫てんかんの発作を起こし
翌2019年1月9日早朝、病との闘いの末、永眠。


(なお、病院関係者のかたがたほかの名前は、すべて仮名です)


2020年4月18日と曜日、ゆかさんは4回めのGC療法から退院し、
その間にテレワークを初めていたやまねことひとつ屋根の下で生活することになりました。
もちろん今までだって同居はしていたわけですが、
毎日いっしょにいる、というのはまた少し違います。
それでも比較的静かに共同生活はスタートしました。

基本的には朝ごはんのあとやまねこは自分の部屋にこもってPCで仕事して、
お昼をいっしょに食べてそのあと夕方までまた仕事、
その合間にちょくちょくゆかさんの様子を見に出てきてはファイトケミカルスープを仕込んだり、
という生活でした。
ゆかさんのほうはというと、ほとんどベッドから動かず、
スマホでメールを打ったり通販や調べもの(コロナについて?)をしたり、
あとはゲームをしていることが多いようでした。
それが後ろめたいのか、やまねこがリビングに入っていくと、必死で画面を隠そうとするのです。
もっともやまねことしてはゲームであっても、
脳の活性化につながるならそれでいいと思っていました。

テレワークにはテレワークなりのルールがありましたが、
申請すれば休み時間を好きな時間にとれる(もちろん時給からは引かれますが)
というのは、ゆかさんは病院に送迎したりするのには好都合でした。

さっそく22日の水曜日、ゲムシタビンの点滴の日、
仕事を始める前にゆかさんを病院に送っていき、
13:30過ぎに「終わったよ」と連絡をもらってから迎えにいきました。
すべてスムーズに進み、共同生活は順調に始まったように見えました。
ただ、ゆかさんはいつものように翌日から発熱してしまい、
一日食欲もなくぐったりしていました。

そして27日の月曜日は、GC療法の再評価のための検査の日。
なんとかゆかさんも動けるようになりました。
やはり同じように送迎し、ゆかさんは血液を採り、CTを撮影しました。

29日に結果が出ます。
ちょうど祝日にあたっているので、やまねこもいっしょに聞きにいくことができました。
主治医の葛西先生は、血液検査のデータとCTの写真を見せてくれて、言いました。
「腹水は減っています。明らかに悪くなっている感じもないので、
たぶん治療の効果はでているのだろう思われます。
抗がん剤は続けたほうがいいと思います。
しかし2段階ゲムシタビンを減らしても血小板が26まで下がってしまっていて、
通常なら中止するところなのですが、
手足の痺れや聴覚過敏もひどくなっているので次の選択肢が難しく、
今後会議して決めることになるかもしれません。
ただ、肺に炎症の像が映っていて、コロナではないけれど肺化膿症の可能性があるから、
できれば今日このまま入院して、血小板と一緒に経過をみさせてほしいです。
検査して、場合によっては長期入院になるかもしれなません。
もしくは明日入院の準備をしてきて、
早い時間に呼吸器内科でいろいろ検査をしていただきたいのですが」

ゆかさんは明らかにショックを受けたようでした。
「…わかりました。あしたまた来るでもいいですか?」とがんばって声をしぼりだしましたが、
泣きだしてしまったのがわかりました。
葛西先生もゆかさんの様子をくみ取ったのか「少し外に出て待っていてください」と言いました。

待合室で、ゆかさんは「ごめんねねこさん、せっかくのゴールデンウィーク、おうちでゆっくりできれば、
コロナ感染のリスクも減るし、いっしょに休みをゆっくりすごせると思っていたから、
情けないけど涙出てきちゃったの」
葛西先生はその間に、呼吸器内科をはじめいろいろなところに電話で相談してくれたようでした。

再び呼ばれて診察室に入ると、葛西先生は、
「肺の炎症ですが、肺梗塞が原因なら三日間ほど解熱剤を飲んでみて、
そうしたら熱が下がるかもしれないですから、土曜日もういちど診るか、
もしくは七日間抗生物質を飲んでみて一週間後入院の準備をしてまた来るか、
どちらにしますか?」と訊いてくれました。

「とりあえず、三日間解熱剤のほうから試させてもらうのでいいですか?」
「わかりました。土曜日わたしは不在ですが、
当直の今村先生に診てもらえるように話しておきます」
ゆかさんの気持ちはしっかり伝わったのです。





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次回のLIVEまで、一週間と少し。

2024.4.09(Tue.)at 祖師ヶ谷大蔵エクレルシ
「桜色の木の下で」
OPEN18:30/START19:00/CHARGE\2,200+1D
☆やまねこの出演は3組中の最初で、19:00からの予定です。
 配信視聴はこちらから(無料・投げ銭制)→
 https://www.ecllive.com/live-schedule

今日は暑いくらいでしたが、さくらの花もいっきに開くでしょうか。
満開の花とともにお会いできるといいですね。