うちには、天使がいます。167.発熱続く | うちには、天使がいます。

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ピアノ弾き語り落ちこぼれシンガー・うたうやまねこと、そのパートナーゆかさん、そして寄り目のみけねこメイさんの、命の記録です。

 


・登場人物
<ゆかさん>
やまねこの奥さん。2020年9月、卵巣がんにより永眠。
2018年4月初めに腫瘍が見つかり、月末にはトルソー症候群による脳梗塞を発症。
手足や会話に障害が出ながら、摘出手術を経て、
2018年9月には全6回の抗がん剤治療も完遂。
諸事情により、ふだんは実家で母と暮らしながら、歩行のリハビリを中心に、
手足のしびれや難聴、高次脳機能障害など、脳梗塞の後遺症や抗がん剤の副作用と闘いつつ、
週末はやまねことうちで過ごす、という生活をしていましたが、
2019年11月12日、ついに新居でやまねことの生活がスタートしたのもつかの間、
12月11日にはがんの再発を宣告されてしまいます。
<やまねこ>
ゆかさんの夫。
落ち着きがなく要領が悪く、おまけにコミュ障。
いまいち頼りないだんなさまですが、
たまにライブハウスでピアノを弾いて歌をうたっていたりします。
<メイさん>
17年前にへその緒つきで捨てられていたところをやまねこと出会い、
それからずっといっしょに暮していた、寄り目のみけねこ。
2018年12月29日、突然猫てんかんの発作を起こし
翌2019年1月9日早朝、病との闘いの末、永眠。


(なお、病院関係者のかたがたほかの名前は、すべて仮名です)


2020年4月2日、木曜日。
ゆかさんは病院へ肺のCT撮影に行きました。
これはイレギュラーなもので、ゆかさんが胸の痛みとコロナの不安を訴えたところ、
主治医の葛西先生がお膳立てしてくれたものでした。

いつものように行きはやまねこが車で病院まで送っていき、そのまま出勤、
帰りは風が強かったようですが、ゆかさんはひとりでなんとか帰ってきました。
やまねこが帰るとゆかさんはやはり寝ていて、
「帰ってきたときは熱なかったんだけど、ロキソニン飲んだら逆に上がっちゃった。
今は38℃くらいあるよ」と言いました。
「CTの結果はあした電話くれる言ってた」

翌日、葛西先生からやまねこに電話が入りました。
「奥様に電話したのですがつながらなかったので、お電話させていただきました。
呼吸器内科の先生にもCT見てもらったのですが、コロナ肺炎とは見えかたが違うとのことで、
今のところコロナは心配しなくて大丈夫でしょう。
むしろ腫瘍そのものか血栓から来ている熱だと思われます」
少しほっとしました。そしてすぐになぜほっとする?と思いました。
ゆかさんはがんで、肺に血栓もあるというのに。

すぐにゆかさんにメールして、その通り伝えました。
「それから葛西先生、今日は6時くらいまでいるので、
心配なら電話くれても大丈夫とのことです。
ゆかさんも先生から直接聞いたほうが安心すると思うので、
よかったら電話してみてください」

そしてゆかさんは実際そうして、返信をくれました。
「正直原因はわからないそうです。
コロナはまだ未知のことが多すぎで100%とはいえないけれど、
とりあえず今は大丈夫と考えませんか?とのことでした。
血栓はむしろ少しよくなってるみたい
画像上の腫瘍はないけど、病気の勢いが強いのか、感染症なのかわからないそうです。
一応、来週火曜日に予定通り入院の準備をして受診していいよ。とのことです。
ロキソニンが効かない発熱があったらまた考えましょう、って」

やはりコロナではなかったようだけれど、
ゆかさんはもっとたいへんな病気と闘っているのです。
本人にもそちらに意識を向けてもらえたら、と少し思いました。

「一応、来週火曜日予定通り入院の準備して受診していいよ、とのことです」
と、メールは続いていました。


入院予定日、4月7日火曜日まで、
ゆかさんの発熱は続きました。
朝は下がっていても、夕方になると38℃を超えてしまうことが多かったのです。

そして7日の朝にはやまねこは車を用意し、
入院用の荷物を積んで、ゆかさんを病院まで送り届けました。

ゆかさんから昼過ぎに届いたメールは―
「検査の結果、入院できるくらいまで白血球とかは回復してるんだけど、
熱が下がらなかったり、咳がひどくなってたりということをお話したら、
感染症の先生に確認してくれて、今のところコロナとは違うと思うけれど、
味覚障害が出てきたり、どんどんひどくなるようだったら、
郵送でPCR検査を受けることもできるそうなので連絡してほしいと」

まだ、どこの病院でもPCR検査を受けられる時期ではなかったのです。

「葛西先生手術だったけど電話通じたそうで、
やはり熱があるのだったらもう一週間様子を見てみようとの判断になりました。ごめんね。
でも肺炎は肺炎らしく、胸水もたまってるみたいなので、
一応肺炎にも効きそうな抗生物質もらいました」

胸水…あまりいいことではないな、と思いました

「炎症の値は、見たこともないくらいの数値になってました。
肺炎、血栓、がん、色々あって原因は特定できないとのことで、頭おかしくなりそうだけど、
症状が収まることを信じて、とりあえず抗生物質もらって帰りますね」

けっきょく、また抗がん剤治療の入院は延期になってしまいました。
それでも腫瘍マーカーにはそれほど変化はなく、
がんが進行しているようには感じられないのが救いでした。

ゆかさんはなんとか自力でうちまで帰りましたが、
やまねこが帰るとベッドで横になってぐったりしていました。
「けっきょく熱38℃超えちゃって、胸の痛みもせきもひどくなっちゃった」
一日病院で動き回ったせいでしょうか。
それでもゆかさんは「今夜スーパームーンよ。きれいに見えた?」と訊きました。
「あ、意識してなかった。ちょっと見てくるね(と外で見てきて)きれいに見えてるよ」
と報告すると、ゆかさんはベッドからよっこいしょ、と立ち上がって、
やまねこといっしょに外に出ました。
「きれいね」
ふたりで月の写真を撮り、春の月夜は静かに過ぎていきました。





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とうとう残り一週間になりました。

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お会いできるの楽しみにしてますね。