「内臓逆位が見られることのある遺伝子群の異常で、結果的に内臓逆位が見られなかった場合」と、「もともと内臓逆位は見られないタイプの遺伝子群の異常によって線毛機能不全症候群が発病した場合」です。後者の代表となるものが、日本(と韓国)では、DRC1遺伝子の欠失異常であることが、この10年間の日本の研究によりわかってきました。
DRC1は規則的な繊毛運動の調節に大切な遺伝子の一つと報告されています。しかし、このDRC1の異常では内臓逆位が見られず、電子顕微鏡検査や高速ビデオ顕微鏡検査などの古典的な検査法ではそれほど目立った所見が認められないため、遺伝学的検査法が使われるようになるまでは、ほとんどの場合、確定診断をすることができませんでした。2024年に至るまで線毛機能不全症候群が指定難病に認可されるために必要な「客観的診断基準の確立」という条件を満たせなかったのは、このためだったと言っても良いように思います。
この特徴的なDRC1の欠失異常は、欧米人には全くみられないため、これまでほとんど情報がありませんでしたが、日本人の間では、このDRC1の欠失異常がこの病気の最も多い原因であることが、専門家の間ではよく知られるようになり、論文報告も増えてきました(primary ciliary dyskinesia とDRC1で検索をかけると見つかります)。しかし、まだこの遺伝子による線毛機能不全症候群が、他の古典的なカルタゲナー症候群を含む線毛機能不全症候群に比べて、何か大きなちがいがあるのかどうかは、多くの方々の協力を得ながら、研究の途上です。
