◆ 本気で目指すのなら | ゲームデザインエクセレント

◆ 本気で目指すのなら

 ゲームデザイナーという仕事は、『ウィザードリィ』でいえばビショップのようなものかもしれません《*5》。新卒で最初から就くこともできますが、いったん別の職種で経験を積んでからジョブチェンジするという道もあります。
  私の場合は最初から企画屋でしたが、年代の近い同業者(多くが90年頃までに業界に入っています)の中でのジョブチェンジ組の比率は、決して小さくありません。10人集まれば、そのうちの5人は「元プログラマ」で、3人が「元グラフィッカー」といったところでした。残る2人に属する私自身にしても、創作者としての修行は主にマンガを通じて行ったといえますので、並べた場合は後者に近いということになると思います。
  しかし、「グラフィックスをバックボーンにしているゲームデザイナーがいる」という事実を、「ゲームプロジェクトでCGを担当する人がゲームデザイナーである」という妄言に結びつけるのは、やめて欲しいものです。
  そもそも、時代背景が違います。昔のグラフィッカーは、領域ならではの専門性は、さほど必要としませんでした。ファミコン/スーファミの表現力では、それを必要としなかったのです。デッサン力も、それほど高度なものは要求されず、反面ゲーム好きであることは事実上の必須条件となっていました。職種間の差異が少ないから、スムーズなジョブチェンジができたのです。今日のグラフィックス担当者は、何よりグラフィックスにおいて専門家であることが求められます。


 ゲームというのは、何かの代用品ではありません。一部、ゲームを「映画の一種」と捉える立場があり、それもファミコン/スーファミの頃はただの比喩だったのが、昨今では真顔でそう主張する人も見受けられるようになっています。しかし、勘違いも甚だしいと言わざるを得ません。ゲームはゲームであって、映画ではないのです。映画のための技法はあれこれ参考になりますが、主語と目的語を逆転させたのでは本末転倒です。
  とはいえ、ひとつ言えることがあります。登山道は、登り口は別々でも、頂上に近づくにつれ次第に同じ道に合流していくということです。
  また、今日「ソフトウェアのデザイン」が求められるのは、必ずしも工学的な領域ばかりではありません。インタラクティブなメディアとして多用されるのはウェブやFLASHコンテンツなどですが、これらは存在自体がグラフィックスとプログラムの両領域の重なりだと言えるでしょう。


 例え、僭称的なゲームデザインコースに入ってしまった場合でも、本章で指摘したあれこれを理解し、自覚を持ってさまざまな機会を捉えていけば、「ソフトウェアのデザイン」をするための能力も磨いていけることでしょう。このことは、特にゲームとは関係のないグラフィックス専攻課程にいる人にとっても同じです。
  そして、逆側にも真はあります。ちゃんとしたゲームデザインコースに属している人も、「ゲームデザインとグラフィックデザインは全く異なる」という事実を、自分が勉強・修行を怠けるための理由に使ってはいけないということです。それが有用な知識体系であることを理解し、自分自身で活用法を見つけ出すつもりで、能力獲得に向けて努力していくべきものなのです。