◆ 開発庶務としての企画屋 | ゲームデザインエクセレント

◆ 開発庶務としての企画屋

 一方、これとは角度の違った捉え方があります。それは、消去法で考えるというもの。つまり「他の職種がしない仕事=企画職の仕事」とするものです。
 開発チームは専門家集団です。それぞれ必要とされる技術をもつ専門家を集めて構成します。ところがプロジェクトは総合的なものなので、誰の守備範囲とも言い切れない仕事=「隙間」が、必ず生じます。例えばRPG。草原・山地・街・洞窟入り口などの地形があり、それに応じたイベント処理があります。また、モンスターとのエンカウントがあって、戦闘となれば武器防具やアイテムなどを使うことになります。これらは誰が作るのでしょうか。マップシステムや戦闘システムはプログラマの仕事です。地形やモンスターなどのグラフィックスはグラフィック・デザイナーが作るでしょうし、名称や画面に表示されるメッセージはシナリオライターの仕事でしょう。それぞれの局面で流れるBGMや効果音はサウンドクリエイターが作ります。では、マップのレイアウトは誰が? モンスターや武器防具のパラメータは? 楽曲のコンセプトは? こうした部分はどれも「誰の専門とも言い切れない」ものです。でも、誰かがやらないことには、ゲームはできません。


   「誰の専門とも言い切れないが、誰かがやらなければならない仕事がある。
    担当はだれだ? 決まってる、俺だ!」


 これは、創作の仕事だけではありません。誰もが他人に押しつけたくなるような仕事というのも、ここに入ってきてしまいます。実はスケジュール管理や文書作成、さらには経営陣や他部署との折衝なんていうのは、そういう押しつけたくなる嫌な仕事でもあるのです。他、いわゆる雑用の類も当然に紛れ込みます。お茶くみや夜食の買い出しなんていうのはあまり聞きませんが、社内決済用の書類を書いたり、連絡会議に出席したり、内線電話をとったりなど、あれこれとやらなければなりません。
 本節タイトルの"開発庶務"というのは、会社にいた頃に考えた「ゲームデザイナー」という職種名の別表現です。本気ではなくて、半ば自虐モードでのギャグとして唱えたものですが、その後同業者に披露するたびに大受けでした。


 さて、この考えに立った場合、ゲームデザイナーには、能力面で何が望まれるということになるのでしょうか。
 結局は、開発チームで発生する可能性のあるあらゆる事柄への対処能力となります。
 創作的な能力は、おそらく必要です。ただ、それは多分にボトムアップ的なものです。例えば、「物語を組み立てる」というような大きな視点に立った技術は別にいりませんが、設定書やシナリオに空いた穴をちょこちょこっと埋める技能は役に立つかもしれません。「プログラムを書く」ができないにしても、開発ツールを使った作業やスクリプティングなどはできた方がいいのです。
 これらは、あらかじめ学校で学ぶという訳にはいかず、仕事の現場で覚えていくしかないでしょう。
 また、先ほど挙げた"好ましいとされる適性"は、このような側面を重視した場合にも生きてくることになります。「コミュニケーション能力」にしても「柔軟な発想力」にしても、現場仕事を器用にこなしていく上では、大事なのです。そして、「好奇心」といったものは、憶えていく適性を裏付けるものとしてチェックされるのだと言えます。