高市早苗総理への公開状

高市早苗総理大臣閣下

 

“台湾有事”に関し集団的自衛権行使の「存立危機事態」になり得るとした貴殿の国会発言が、日中関係に深刻な影響を及ぼしています。中国政府は「核心利益の核心」である台湾問題への内政干渉であり「一つの中国」原則に反するとして発言の撤回を要求していますが、日本政府は従来の見解に変わりはないとして、両国の主張は平行線のままです。

その結果、日中関係は国交正常化前に逆戻りしつつあり、いつ武力衝突が起きてもおかしくない状況にあり、誠に憂慮に耐えません。閣下の発言によって引き起こされた危機的状態を克服するために、発言を撤回又は善処され、中国側の了解を得て、一日も早く日中友好四文書の原則に回帰させるよう切に願う次第です。

 

ここで以下六つの点を指摘し、閣下の政策決定の参考に資したいと思います。

1、 米中の力関係の変化への新たな認識の必要性

戦後初期、米ソ対立が激化する中、日本は日米安保条約を締結しました。中ソ分裂、中国の挫折など西側に有利な国際情勢の下、日本はその利益を享受し、世界第二の経済大国となりました。しかし、今や中国が台頭し、米国と肩を並べるようになり、日米安保条約による対中抑止力強化は無意味となりつつあります。とりわけ、9月3日に示された中国軍事パレードでの新装備は、世界の軍事専門家の驚異の的となりました。ここ数カ月、米国の対中姿勢には変化が見られ、米中衝突を避ける論調が強まっています。米国の対中緩和姿勢や論調に歯止めをかけるような日本の働きかけは徒労であり止めるべきです。

 

2、 台湾平和統一の実践への理解

台湾統一は全中国人民の念願であり、「偉大な中華民族の復興」の象徴的事業です。そしてこれを成し遂げて始めて人類運命共同体の実現に邁進することができるようになります。今まで「韬光养晦」の段階でありましたが、今や行動で平和統一を促進する段階に入っています。一般人の命に関わる陸上においては慎重を期していますが、台湾周辺の海や空では、台湾側が一方的に定めた境界線は無視され、大陸の台湾省への統治力が強化されつつあります。大陸・台湾両方の知恵によって、平和統一は着実に進められようとしています。それに対し、日本は干渉したり、邪魔をしたりすべきではありません。

 

3、 「一つの中国」への明確な態度表明

カイロ宣言、ボツダム宣言、降伏文書、国連2758号決議などによって、一つの中国原則は国際法で決められています。米日で台湾地位未定論が出ていますが、それは全く邪論に過ぎません。また、日本は国交正常化共同声明で台湾は中国の領土であることを「理解し、尊重する」と言っているだけであって、認めているわけではないとの言説も詭弁です。1998年の共同声明では、台湾問題について「改めて中国は一つであるとの認識を表明する」と書いてあります。台湾を巡る中国の対日不信感を拭うためには、より明確な表現で「一つの中国」を認めるべきです。またアジアと世界の平和のために、むしろ台湾の平和統一を促す政策をとることが賢明な策です。

 

4、 忘れてはならない「敵国条項」の存在

1950年代初めに、全面講和か単独講和かの論争が日本国内で展開されました。中国の存在が無視され、単独講和が結ばれたため、敵国条項が清算されにくくなりました。日中国交正常化が実現し、敵国条項削除の機運が高まり、1995年の総会において削除作業開始の決議はなされました、がそのままになっています。日本の総理大臣や閣僚が戦犯を祀っている靖国神社に参拝するなど歴史認識が問題視され、今に至っても解決される見込みが立っていません。そのため、もし日本の自衛隊が台湾問題に介入するようなことがあれば、中国は国連の決議を経ることなく、枢軸国日本の全土に武力行使を行うことができるのです。また、日本の台湾地位未定論に対して、中国は沖縄(琉球)地位未定論を打ち出そうとしています。日本は実に厄介な一連の問題に直面することになります。

 

5、 認識すべきは「四文書回帰が唯一の道」

1972年の国交正常化・日中共同声明をはじめとする日中友好四文書によって、日中間に存在する複雑な問題、例えば台湾問題、賠償問題、旧敵国条項、沖縄地位未定論、歴史認識問題など全てが封印され、日中友好関係が大いに進み、両国の平和と発展を見ることができました。ところが四文書を顧みず、中国の台湾統一を妨げようとして自衛隊を出動させるようなことになれば、全てが引っくり返り、日本は完全に孤立した状態に陥ることになりかねません。ドイツとイタリアはファシズムと決別し国際社会の仲間入りを果たしましたが、日本は軍国主義と決別できず、重要な隣国中国の理解を得ることができないでいるからです。

 

6、 「日中平和友好条約第二条」で世界平和を主導

日本が台湾問題で正しい立場をとり、歴史認識問題にけじめをつければ、日中平和友好条約第二条の反覇権条項に基づいて、中国と共に世界平和を主導することができます。中国の軍事力予算は現在米国の約三分の一ですが、米国を上回る必要はないと言われています。覇権を求めないからです。アメリカは覇権主義を維持できなくなっており、中国と共に覇権なき世界秩序の構築に取り組まざるを得なくなるでしょう。世界に輝く平和憲法の下で、日本は中国と共に世界の軍縮を進めることができ、世界中に展開している米軍基地は国連の管理下に置かれるようになるでしょう。これは米国にとっても大きな利益となるからです。

 

最後に、以上六つの提案は、必ず日中両国の有識者及び一般の人々から支持を得られると確信しています。閣下から何らかのメッセージが得られれば幸いに存じます。

                   

福井県立大学名誉教授         

全日本華僑華人中国平和統一促進会名誉顧問   凌星光

 

2025年11月29日

 

 

 

高市早苗首相的公开信

 

高市早苗内阁总理大臣阁下:

 

关于“台湾有事”可能构成行使集体自卫权之「存立危机事态」的阁下国会发言,已对中日关系造成了严重影响。中国政府认为这是对其“核心利益中的核心”——台湾问题的内政干涉,违反“一中原则”,并要求撤回相关发言。然而,日本政府坚持认为自身立场并无变化,双方主张依旧平行不下。

其结果是,中日关系正倒退至邦交正常化之前的状态,随时都有可能爆发武力冲突,令人深感忧虑。为了克服因阁下发言而引发的危机局势,恳请阁下撤回或妥善处理此番言论,取得中方谅解,使两国尽早回归中日友好四文件的原则。

以下谨提出六点意见,供阁下决策时参考。

一、美中力量化需有新的认识

战后初期,在美苏对立加剧的背景下,日本缔结了日美安保条约。在中苏分裂、中国遭遇挫折等有利于西方的国际形势下,日本得以享受利益,成为世界第二大经济体。然而如今中国崛起,与美国比肩,日美安保所构筑的对华遏制力正逐渐失去意义。尤其是9月3日中国阅兵中展示的新式装备令全球军事专家震惊。近数月来,美国对华姿态出现变化,避免中美冲突的论调不断增强。日本试图阻止美国对华缓和的努力不过是徒劳,应当停止。

 

二、理解推台湾和平一的

台湾统一是全体中国人民的夙愿,是“中华民族伟大复兴”的象征性事业。只有在完成统一之后,才能更好地迈向“人类命运共同体”的实现。过去处于“韬光养晦”阶段,如今已进入以实际行动推动和平统一的阶段。在涉及民众生命安全的陆上问题上保持谨慎,但在台湾周边的海空领域,对台湾方面单方面划定的界线不予承认,并不断强化大陆对台湾省的治理力。在大陆与台湾双方智慧推动下,和平统一正在稳步前进。对此,日本不应干涉,更不应阻挠。

 

三、明确表明一中原

开罗宣言、波茨坦宣言、投降文书以及联合国2758号决议等均确立了一个中国原则。日美方面提出“台湾地位未定论”,纯属谬论。日本国内亦有人声称,邦交正常化联合声明中所谓“理解并尊重”台湾属于中国的表述并非“承认”,此乃诡辩。1998年联合声明中明确写道:就台湾问题“再次表明一个中国的认识。”要消除中国在台湾问题上的对日不信任,日本应以更明确的用语承认“一个中国”。而且,为了亚洲及世界和平,日本反而应采取促成台湾和平统一的政策。

 

四、不可忘国条款的存在

20世纪50年代初,日本国内曾就“全面讲和”与“单独讲和”展开激烈争论。由于无视中国而选择了“单独讲和”,使得敌国条款难以清算。中日邦交正常化后,曾出现推动删除敌国条款的势头,在1995年联大亦通过开始删除程序的决议,但至今仍未完成。加之日本首相和阁僚参拜供奉战犯的靖国神社等历史认知问题备受批评,至今无解决迹象。因此,一旦日本自卫队介入台湾问题,中国便可不经联合国决议,在前轴心国日本全境行使武力。此外,针对日本主张的“台湾地位未定论”,中国亦可能提出“冲绳(琉球)地位未定论”。日本将面临一系列极为棘手的问题。

 

五、应认识到四文件是唯一的出路

1972年邦交正常化的中日联合声明等四份中日友好文件,将双方间的复杂问题,如台湾、赔偿、旧敌国条款、冲绳地位未定论、历史认识等全部予以封印,使得中日友好大步前进,两国和平与发展得以实现。然而若无视四文件,甚至试图以自卫队阻挠中国的统一进程,一切将被彻底推翻,日本恐将陷入完全孤立的境地。德国与意大利已与法西斯主义决裂,重新加入国际社会;但日本仍无法与军国主义彻底切割,因而无法获得重要邻国中国的谅解。

 

六、以《中日和平友好条》第二条共同引世界和平

若日本在台湾问题上采取正确立场,并在历史认知方面做出清晰了断,便可依据《中日和平友好条约》第二条的反霸权条款,与中国共同引领世界和平。中国目前的国防预算约为美国的三分之一,但中国并无超过美国的必要,因为其不寻求霸权。美国已难以维持霸权主义,不得不与中国一道致力于构建非霸权的世界秩序。在闪耀世界的日本和平宪法下,日本将能与中国共同推进世界裁军,遍布全球的美军基地也将逐渐转入联合国管理之下。这对美国来说亦是重大利益。

 

最后,本人相信以上六项建议将获得两国有识之士与普通民众的支持。若能收到阁下的任何回应,不胜欣慰。

日本福井县立大学名誉教授
全日本华侨华人中国和平统一促进会名誉顾问    凌星光

 

2025年11月29日