2021年5月に障害者差別解消法が改正されたことにより、合理的配慮の義務化が今年4月から施行されています。国や自治体だけでなく、民間企業や飲食店、自治会や市民活動の場などでも障がいのある方への合理的配慮の提供が義務づけられました。
府中市においての取組を進めていくために質問をしました。
府中市内の状況はどうか。今後の進め方や、課題などがあるか。
本年4月から改正障害者差別解消法が施行され、事業者による合理的配慮の提供が義務化となり、障害のある当事者から、社会的なバリアを取り除くために何らかの対応が求められた場合には、事業者の負担が重過ぎない範囲で対応することとなった。
府中市では、周知に当たり、障害特性や、個々の場面や状況に応じた事業者による合理的配慮の提供について、具体的な事例を示すなど、関係機関と連携し、その働きかけに努めているところである。
しかし、市内の状況としては、市民や事業者における合理的配慮への認知度が低く、まずは障害に対する正しい知識を得てもらうことが何よりも重要となるので、本年度は、障害者差別解消支援地域連絡会議において、障害者に対する差別解消に向けた啓発動画の作成を検討している。
多くの事業所においては、法的義務が課せられたものの、合理的配慮への理解・周知が十分に浸透していないことが、合理的配慮の義務化を進める上での課題である。
なぜ、市民や事業者にとって合理的配慮への認知度が低いと認識しているのか。 啓発動画はどういったものか、期待する効果は?
合理的配慮への認知度については、府中駅周辺の各再開発事業等をはじめ、建物の更新に伴いバリアフリー化が着実に推進されるなど、その理解促進が図られている一方で、昨年度の市政世論調査からは、「不当な差別的取扱いの禁止」及び「合理的配慮の提供」の項目において、「知らない」と回答した方が73.7%となっており、市民・事業者における認知度は不足していると捉えている。
動画の作成については、のような対応が差別に当たるか、どうすれば合理的配慮の提供が浸透するか等を具体的に30秒ほどの動画にまとめ、あらゆる配信機能を活用し、若い方や、これまで関心がなかった方など、より多くの方へ、その理解が促進されていくことを期待している。
他の自治体で独自に合理的配慮の提供に係る費用の一部を補助するような制度をつくって活用しているが、府中市として、そのような補助金制度の創設についての考えはあるか。
他市の事例として、飲食、物販、医療などの業種において、不特定多数の方が利用するスペースを持つ事業者等に対し、障害のある方へ合理的配慮を提供するための「コミュニケーションツールの作成」や「物品の購入」「工事の施工」など、その費用を助成しているケースなどを確認している。
補助制度の実施については、事業所等のハード面において環境整備が進むものと期待するが、より一層の推進を図るためには、この補助に合わせ、合理的配慮を提供する事業者の認定制度を創設するなど、合理的配慮に対し、積極的に取り組む事業者を、官民連携でPRしていくことも重要なものと捉えている。
今後、他市の先行事例等を研究していく。
法改正では、市民団体や自治会など非営利団体にも合理的配慮の義務を課している。非営利の市民団体等に対して、合理的配慮の提供としての支援をする取組は行っているか。
市民団体による合理的配慮の取組については、各団体の中核とされる市民活動支援センタープラッツを利用する活動団体が講演会等を開催する際、手話通訳者の配置や自動文字起こしアプリの活用のほか、磁気ループや車椅子の貸出しなどについて対応しているケースがある。
プラッツ主催の講演会等においても、同様な配慮のほかに、聴覚障害者の方に向け、受付カウンターに筆談用ボードを設置するほか、手話ができる職員による窓口対応はもとより、視覚障害の方には、施設を利用される際に目的の場所まで御案内するなど、その対応に努めている。市としても、合理的配慮に対する理解や浸透については行政だけではなく、あらゆる関係団体との取組を通して一層深まるものと捉えているので、必要な支援に努めていく。
質疑から
昨年度の市政世論調査では、「合理的配慮の提供」について「知らない」と答えている方が7割を超えているということで、残念です。
府中市障害者差別解消支援地域連絡会議においては、市内の様々な業種の方や障害当事者、その家族等で構成し、障害を理由とする「差別に係る課題及び情報の共有」「差別の解消に向けた普及啓発の連携の強化」「差別の解消の推進」について協議をしているとのことで、差別解消に向けた普及啓発動画の制作をしていることがわかりました。
啓発も大切ですが、一歩進んで、具体的にどういったところで合理的配慮が進んでいないのかという具体例を取りまとめ、事業者などへ市から声を上げていくような活動をしてはいかがでしょうか。
例えば、JR東日本は3年前、みどりの窓口を7割削減すると発表しました。その後、多くの利用者からの反対を受けて計画を凍結しましたが、府中市内では、府中本町にあったみどりの窓口は閉鎖され、困っているという障がいを持つ方の声が届いています。合理的配慮に逆行しています。インターネットを利用して障害者割引などのチケットを購入することはできるとは言いますが、高齢者や障がいのある方にとってはとても使いにくいものです。
そういった場合に、個人ではなかなか声が上げられないと思いますので、連絡会議といった場などで、実際に差別に遭って困っているという声を集約して、事業者に伝えるといったようなことができれば、具体的に問題解決につなげられる可能性も出てくるのではないでしょうか。
昨年8月に、府中市市民提案型協働事業として、合理的配慮の法的義務化について考えるシンポジウムが行われ、合理的配慮の義務化によって障がいを持つ方の社会参加も広がり、ビジネス的な視点でも必要となり、企業にとっての強みとなるとの話も伺いました。
そういったことから民間での広がりを期待するところですが、営利を目的としない市民団体にとっては、合理的配慮を行うための費用を捻出するのが厳しいという声もあります。講演会を開催する際などに文字翻訳や手話通訳などの対応をしたくても、財源がなく、難しいという事情もあります。
昨年の第4回定例会では、非営利団体が実施する合理的配慮の提供に関し、実施費用の助成制度の創設を求める陳情が採択されていることもありますし、市民団体等への助成制度については早急に検討をしてほしいです。
今年4月に義務化の法律が施行されるに当たって、助成制度も創設し、もっと理解が進んでいればよかったのですが、府中市では、まだまだ道半ばであるなと感じました。事業者や市民団体なども含めて引き続きの啓発活動、そして具体的な施策の実現を求めました。