前回に続いて英国の歯科スタッフ事情について、日本の場合との比較をしながらみてみよう。


今日は、歯科従事者(歯科保健職:Dental Care Professionals(DCPs) )の中でも、”歯科衛生士”に焦点をあててみる。

英国の歯科衛生士は、歯学科が併設された専門学校において24〜27 か月の間、基礎医学、歯科における専門的な知識、衛生士業務に関連する技術を履修後(日本の履修期間は3年以上(平成22年4月より))、Diploma(学位)を取得する。



我が国の歯科衛生士は、
歯科疾患の予防及び口腔衛生の向上を図ることを目的として(歯科衛生士法第1条)、歯科予防処置、歯科診療補助、歯科保健指導を3本の柱とする職務を遂行するものとされる。
要国家資格。

英国の歯科衛生士の職務範囲は、日本のそれとほぼ同様であるが、細部において若干の差異がみられる。

先の記事でも触れたが、歯科医師の監督下に局所麻酔ができたり、X線写真撮影が可能であったりと一歩踏み込んだ医療行為、換言すればより責任の重さが増した処置が可能になっている点が大きく異なる。

もう一点は日常診療業務においてである。
日本の一般的な歯科診療所の場合、
歯科衛生士が歯科医師の補助をする場面は少なくない。

歯科医師が治療を進める傍ら、口の中の吸引補助やかぶせ等を装着する際のセメント連和等の行為である。


しかしながら、英国ではこのような補助的業務はデンタルナースと呼ばれるれるスタッフが受け持ち、歯科衛生士はもっぱら歯科予防処置と歯科保健指導に専念する。

 

下記の表は、英国における歯科衛生士とデンタルナースの歯科診療業務の相違点を示している。




このように、
歯科診療の分業体制、権限委譲がかなり行われている英国であるが、
歯科衛生士はどのくらいの人がいるのだろうか?


国際歯科衛生士連盟( International Federation of Dental Hygienists;IFDH)の資料を参考に見てみる。




*上記はIFDH HPより

http://www.ifdh.org/wk_abroad/uk.html


2015年の統計データで、英国(NHS制度下の地域:イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)においては、男女あわせた歯科衛生士数は7,133名(女性6,890名、男性243名)になっている。


これが地域医療を考える上で充足した人数になっているのか否かは、対国民人口でみてみるのが手っ取り早い。

上記、地域人口数を衛生士数で除した値は、8669人(一人あたり歯科衛生士)。
つまり一人の歯科衛生士で8639名ほどの国民を受け持つことになる。

後述するが、これはかなり少ない(不足している)といえる。

 

では我が国ではどうか?

 

 

同じIFDHに掲載されている資料(平成11年)によれば、日本の歯科衛生士数は228147人(女性228,137人、男性10人)で、歯科衛生士一人当たりが受け持つ国民数は560人になっている。

 

この値、

英国の場合とを比較すれば、充足したものにみえるものの、実際の臨床では歯科衛生士の数は不足している。

 

このあたりは次回にでも触れたい。

 

■参考文献
鷹股 哲也:英国における歯学教育.、松本歯学(29)、217-227、2003.

 

 

 


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