上の画像は
お歯黒染めを行う女性を描いた歌川国貞の浮世絵(『見立十二乃気候九月』)である。
これから数回に分け、お歯黒に用いられた染料、黒く染まるカラクリ等について記していくことにする。
お歯黒のために用いられた染料、そのレシピは、使う家や地域等により異なっていたらしい。
”秘伝”の粉や作り方などもあったようだが、大略、お歯黒用の粉と液を用いたことは一致している。
下図は、
国貞の絵の中に描かれている”お歯黒道具”をアップにしたものである。
江戸時代に使われたお歯黒用道具の数々が描かれているが、
まずは黒い化粧箱と金色の杯に注目である。
各容器には、歯が黒く染まるための液と粉が入れられている。
金杯の中の液は、鉄漿(かね)あるいは鉄漿水(かねみず)と呼ばれる溶液で、主として酢酸に鉄を溶かしたものである。
この液の主成分は酢酸第一鉄である。
黒い箱の粉は、五倍子(ごばいし)あるいは附子(ふし)と呼ばれ、ウルシ科植物ヌルデの葉にできた虫こぶを乾燥させたもの。
タンニン成分が豊富で、上述の鉄漿水、さらに空気中の酸素と化学反応を起こし歯を黒染させる(後述)。
五倍子は現在もある分野で利用されている。
写真はその現物。
この辺りは、また次回にする。