(1)キャバクラ嬢は個人事業主のことが多い
キャバクラ嬢とお店が雇用契約を結ぶと、お店にとって雇用保険などの観点で不利益が生じるため、お店と業務提携している個人事業主扱いにしていることが多いはずです。
所得税法上も、ホステスらは個人事業主と規定されています。
所得税法204条: 居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
同法6号
キャバレー、ナイトクラブ、バーその他これらに類する施設でフロアにおいて客にダンスをさせ又は客に接待をして遊興若しくは飲食をさせるものにおいて客に
侍してその接待をすることを業務とするホステスその他の者(以下この条において「ホステス等」という。)のその業務に関する報酬又は料金
(2)労働者かどうか
キャバクラ嬢は税法上は個人事業主という扱いをうけることがわかりました。
では、労働者といるのでしょうか。
民法では、労務提供型の契約を3つ用意しています。すなわち、雇用(民法623条)、請負(民法632条)、委任(民法643条)です。
このうち、請負は仕事の完成を目標とするものですから、大工さんに家の建築を依頼することが代表例でしょう。ですので、キャバクラ嬢とお店との契約には馴染みません。
両者の契約が雇用にあたれば、労働者ですし、委任になれば労働者とはなりません。
その判断基準はどこにあるかというと、被用者が使用者の指揮監督に服するのかそれとも被用者の自由裁量が大きいのかで決まります。
契約書上で委任契約となっていても、実質的に雇用契約とみなされれば被用者は労働者ということになるので、ここも注意が必要です。
キャバクラ嬢の場合、①自由出勤か②掛売りが認められているか③認められているとしてその回収方法と時期の裁量があるか④どの客を接客するのか⑤服装⑥髪型⑦ETCに裁量があるかでお店と雇用関係にあるのか、委任関係にあるのかが決められるでしょう。
④~⑥は売上上位であればあるほどキャバクラ嬢の裁量の余地は多くなるでしょうね。
もっとも、例えば、同じ時間に3人指名客がかぶった場合、A、B、Cの客のうち、Aには多い時間、Bはそれより短く、Cは嫌いだからほとんど付きたくないとリストマンに希望を出すことができたとしても、リストマンはその通りにつけてくれるかわかりませんし、忘れるか店の状況か許さなければそうした希望も通らない可能性もあります。
さらに、通常キャバクラ嬢は①~③について裁量の余地はないでしょうから、お店とは委任関係ではなく、雇用関係にあるといえそうです。
ですので、キャバクラ嬢は労働者ということになります(逆に、①~⑥に裁量が多いクラブホステスさんは労働者じゃないと言えます)。
(3)労働者だとすると
労働者だとするとキャバクラ嬢は労働法規に守られることになります。
そうすると、まず問題なってくるのが労働基準法91条の存在です。
労働基準法91条は以下のように規定されています。
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
通常のキャバクラでは、無断欠勤や当日になっての欠勤や遅刻などについて罰則を設定しています。
それを就業規則で定めるまではいいとしても、その範囲が1日の給料の半額を超えたり、一度に支払われる賃金の支払額の10分の1を超えてはいけないのです。
でも、グレーゾーンのお店って結構多そうですね。
参考:国税庁の「ホステス等に支払う報酬・料金等
」
次回は、「契約期間中に家賃交渉ってできるの?」の予定です。