法律婚とは法律に定められた手続にのっとることで、法的に婚姻を認めさせることを言います。
婚姻届に夫婦になろうとする者のどちらかの姓を結婚後名乗ることになる(戸籍法74条1号)のかなど記載して役所に提出します。
夫婦になろうとする者のどちらか、もしくは両方に婚姻障害(民法731条~737条)などがない限り、受理されます(民法740条)。
事実婚とは法律婚ではない婚姻形態をさします。
同棲しているだけでは、事実婚とはいえず、お互い結婚したいんだけど、それを許さない事情(例えば既にどちらかもしくは両方が結婚している)があるから、法律婚を選択しないカップルになって初めて事実婚といえるでしょう。
これ以外にも違いはいくつかあります。
なんといっても、事実婚は法律婚に比べて保護の対象が狭いということでしょうね。
最大の違いは、事実婚の場合、パートナーが死んでも法定相続人にはなりません。
遺言もなくポックリ死んでしまったときには相続権がそのままでは発生せず、他に法定相続人がいないときに、初めて、特別縁故者(民法985条の3)として相続人となる可能性があります。
そうすると、愛人でパパの経済力に頼っていた場合なんか悲惨ですよ。
なので、愛人はパパが元気な頃にうまいように遺言を書いてもらい、遺贈してもらえるようにしておくことが肝要です。
遺贈の場合、法定相続人に対してではなくても、贈与税ではなく相続税の対象になるので、これは大きいです。
遺贈は法定相続人を作り出すのです。
ただし、他の法定相続人の遺留分(民法1028条、900条)を侵害した場合は、遺留分減殺請求(民法1031条)を受ける可能性もあるので、ほどほどに。
最近は多種多様の生き方があり、必ずしも法律婚によらないでもいいのではないのかと考える気風が出てきています。
事実婚でも、法律婚と同じように保護しようとする取り組みもいくつかあったりします。
借地借家法36条1項は以下のように規定されています、「
居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同
様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後一月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。 」。
「事実上夫婦」つまり事実婚状態であれば、賃借人が死亡してもその賃借人としての地位を承継して出て行かなくて良いことになります。
他にも、国民年金法5条8号には「この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。」と、事実婚状態にあったものを保護する仕組みをおいています。
これらは法律が事実婚状態にあるカップルを保護しようとする取り組みの一つと言えましょう。
次回は「キャバクラ嬢は労働者か」の予定です。