ニセコエリア倶知安町の構造的問題とは | 田中よしひとのブログ

田中よしひとのブログ

外国資本主義となった倶知安町ニセコひらふエリアから反グローバリズムを叫ぶ50代。
株式会社 ニセコリゾートサービス 代表取締役
前・倶知安町議会議員(2011〜2023年まで3期)
参政党公認 北海道ブロック国政改革委員

今回は、前回のブログで触れた、ニセコエリアの「構造的問題」について書きたいと思います。

 

前提として説明の必要があるので確認しておきますが、私が住む倶知安町は「ニセコエリア」の宿泊キャパの約7割が集中する町です。

外資による開発を積極的に受け入れてきた倶知安町について書いていきますが、最近は倶知安町には開発できる土地が限られてきているため、条件の厳しいニセコ町へ開発の波が押し寄せているとう現状をご理解の上読んで頂ければと思います。

 

 

倶知安町にある「ニセコひらふエリア」ですが、ニセコスキーリゾートが始まったエリアです。

今年はリフト開業60周年という記念すべき年です。

当時は「ニセコ高原リフト」という名前でスタートしました。

「ニセコ」というのは町の名前ではなく、ニセコアンヌプリという山を中心にした「地域・エリア」の総称でしたが、旧狩太町がニセコ町へ改名したのが50年ほど前。そこから倶知安町ニセコ町の仲が悪くなったと聞いておりいます(笑)

 

このニセコひらふエリアに最初の外資による開発が始まったのが2004年頃でした。

私が2003年にニセコひらふに戻ってから、18年の月日が流れました。ここで何が起きてきたのかをつぶさに見てきました。

 

当時はオーストラリア資本で始まった小規模開発(古くなり、跡継ぎのいないペンションを買い取りリノベーション)から、今では香港やシンガポールといったアジアの華僑マネーにより開発されています。

 

さて、ここで構造的問題に触れていきたいと思いますが、外資による開発でコンドミニアムと呼ばれる分譲型の宿泊施設が開発され続けています。

開発をするのは、もちろん外資なのですが、ただお金を持ってきても簡単に開発など出来るわけがありません。

 

以下には、一般的なザックリとした開発スキームを書きます。

 

1 開発する土地を購入 ・・・ 地元の不動産事業者が仲介(ほぼ外国人が経営している事業者)。

 

2 特定目的会社を設立 ・・・ 不動産開発のみを目的とした短命の法人を設立します。東京や札幌では、こうした法人設立などを特にサポ

ートする会計事務所などが存在しています。虎ノ門のあるビルには異常な数の法人が登記されています。

 

3 プロジェクトマネージャーを専任 ・・・ 建物のデザインや設計、申請関係から販売まで担当する地元不動産開発事業者と契約して進めます。(ここが一番働かなくてはなりません!)

 

4 建てられるコンドミニアムはほぼ全ての部屋が分譲目的 ・・・建物が竣工するときには、部屋は完売しているのが理想であり、既に各部屋にオーナーが存在し、ほぼ外国人オーナーとなります。ホテルタイプのものだと、どのホテルオペレーターを連れてくるのかも重要になってきております。

 

5 結果として・・・ 建物が竣工した時点で、利益確定。特定目的会社は解散し、その後の管理はニセコエリアの不動産管理会社に任されます。もちろん、そこも外国人事業者。ニセコひらふエリアの不動産の85%以上は外国人の所有となっている。

 

以上がザックリとした構図です。

 

同じ開発といっても、ホテルタイプの中・大型規模のものから、山林を宅地造成して戸建てタイプのコンドミニアムを開発するタイプまで様々ですし、最近は完売するスピードも遅くなっているようです。

 

構造的問題

構造的問題とは、ほぼ全ての工程を外国人のみで進められるため、地域経済にプラスになりにくいという事です。

もっと言えば、法律で規制されていない事は許可しなければならないという前提になるため、積極的規制をしなければ開発は止まりません。

ニセコの開発スキームは、すでに北米では破綻した方法(イントラウエスト)であり、決して持続可能なやり方ではありません。

しかし、スキー場運営よりも容易に利益を出せるのが不動産開発となるため、外資系のリゾート運営会社はこれに躊躇しません。

倶知安町のニセコひらふエリア、ハナゾノリゾートでは今後5年でおよそ2万ベッドが増える予定で、(既に開発許可は下りています)ベッドの総数は35000以上になる予定です。

人口15000人の町に、冬の3か月間は5万人の人が住むという事になり、交通渋滞や域内交通の不足、駐車場なども大きな課題です。

 

不動産開発に関わる殆どの会社が外国人による経営。買う顧客も外国人。こういう構図が出来上がっている業界。

創る会社、管理運営する会社、工事施工する会社、などと役割が分かれている。

誰が首長になってもすぐには解決できない問題であるが故、構造的問題でもあります。

その事を住民の皆さんに理解してもらう事から始め、持続可能なリゾートエリアを抱える自治体をどうやってかじ取りしていくのか。

どう解決していくのかを真剣に取り組まなければ、トラブルシューティングだけで疲れ果てるでしょう。

 

また、財政上の問題も地元にとって深刻です。

下記のグラフは倶知安町の令和2年度当初予算の説明資料です。

この資料から読み取れるように、固定資産税などの町税が増えても、地方国税が減額されるため、増えた分すべてが歳入に反映されません。図を見ると、まるでワニの口です。

 

基準財政需要額の不足分を交付するというルールの中では、人口の3倍分もの分譲型別荘を基にした宿泊施設を要する特殊環境の地域を運営することは大変厳しく、観光公害を訴える地元住民が増えているが事実です。

 

*出展 倶知安町予算説明書 アクティブ倶知安より

*この資料は当初予算であり、実際の歳入はコロナの影響により3億円近く落ち込んでいます

 

広がり続ける開発行為のために行政が負担しなければならない莫大なインフラコストがかかります。

その代表例がリゾートエリアに対する上水道配水管、井戸、配水池の更新です。

その費用は総額70億円以上かかり、水道使用料の値上げは必至です。

 

対応策はないのか

地方自治体でも出来ることは幾つかあります。

一つは開発規制。

広がり続ける問題の基を絞らなければ、「トラブルシューティング」に明け暮れるだけ。

関わる人たちが燃え尽きてしまいます。

倶知安町では現在、景観法を根拠法に「景観行政団体」を目指し、町全体に規制をかける作業を進めています。

もちろん、利害関係者からの反対や要望が出てくることは想定内ですが中々厳しい調整が求められています。

 

二つ目が新たな財源の創出。

宿泊税のように、課税客体(税金を払う人)を定め、払う事にしっかりとした根拠と税の使い道を示し、メリットを与える「法定外目的税」を制定する事です。巨額な水道の整備費用などはこれで賄うべきでしょう。

加熱し続ける不動産開発への冷や水効果も期待できます。

 

続く