晩酌難民 | 永劫回帰

永劫回帰

価値なき存在







夜になるとだんたん降り方が激しくなってきた。
積もってるなあ。
ホテル周辺を店を捜して雪の上をサクサクと歩く。
サク、サク、サク、サク、サク、サクー、『先生』『おうッ、そば屋か』←わかる人は昭和www
だが、わたしは忠臣蔵が大嫌いだ。
赤穂浪士などというものは、ただの夜盗の類いだと思っている。
当時でも現代でも他人の家へ真夜中、集団で押し入れば盗賊である。
それも頭のイカれた主君が斬りかかって、負傷させた被害者と無関係な人たちを殺戮するなんて家臣もアタオカ。
幕府も盗賊として打首獄門にすればよかったのだ。
テロリストを義士などと持ち上げていることが不快である。
主君に切腹させたのは幕府であるのだから、復讐するならば幕府と戦えばよかったのだ。
何より討ち入り後に全員が切腹しないのも武士としての潔さに欠ける。
自分たちは助かるとでも思っていたのか?
十二月と雪で、こんなことを考える人間も相当アタオカであるがwww

雪の中、こんな下らないことを考えて歩いて店をのぞくも、どこも予約でいっぱい、もしくは満席、・・・。
考えれば忘年会シーズン、昨年の自粛からの今年である。
そりゃいつまたアレが来るかと思えば十二月の週末は、誰にとっても惜しいものだろう。
数店まわって惨敗、敗走に次ぐ敗走、インパール作戦かよwww
よし、転進するべし。
ここはと目を付けたが返り討ちの店を出ると同じような親子が。
今日はどこもダメみたいですね、と言うとコンビニかなぁと立ち去っていった。
それはちょっと余りにも自分が憐れ過ぎて、もう少し捜すぞと己を鼓舞して歩き出す。
普段より慎重に歩くと筋肉を使うせいか、まあそれなりに暖かい。
今回の服装は正解だったようだ。




メイドイン京都のfreerageの化繊セーターと東欧のミリタリージャケットが、いい仕事をしてくれました。
何とか店をとはいうものの、ここまで来て焼肉はないし、焼き鳥もないよなあ。
と顔を上げると「鬼平」の提灯が。
蕎麦屋 鬼平、こ、これは!と期待に胸を膨らませて、長谷川平蔵よろしく「ゆるせ」と扉を開ける。

いらっしゃいませと明るい声で出迎えてくれた店員さんは、阿佐ヶ谷姉妹みたい。
マスク越しなのでパッと見の印象だけれども、とにかく明るいのはわかる。
席に着いてメニューを手繰る。
おおっ、サッポロラガー赤星がある‼️これだけで正解の気分だ。
肴の吟味にステージが移る。
蕎麦屋だから生物は置いていないが、予約すれば出すことも可能らしい。
いろいろある中から何を選ぶか?この時間も楽しみのひとつだ。
腹に入る量は決まっている、焦らず慎重にしかしダラダラとすることなく選びたい。

自家製さつま揚げ、この自家製と銘打ったところに自信を感じる。
もう一品、関西ではめっきり見なくなったシシャモを注文。
出だしはこれでいいだろう。
カウンターが七、八席、座敷もあるが客はわたし一人だ。
赤星とつき出しのナスの煮物を頂く。
美味い、これは正解を選んだ、とこの時確信する。
店の味はつき出しで決まる、これはわたしの持論であり、単なる思い込みでもある。

料理はカウンターにいるママがすべてを取り仕切っている。
なんとなく店員と姉妹?と思ったが、そこはわからない。
ただスムーズな動きから長年つちかわれた関係だと思った。
自家製さつま揚げとシシャモが提供された。
慌てるな、ここでいやしん坊は口を火傷して台無しにしてしまうのだ。
幼児のようにふーふーしながら、さつま揚げを一口。
もぐもぐ・・・美味い、これは美味い。
なにがどうというような語彙は持ち合わせていないが、美味いと人に奨めることのできる味だ。
続いてシシャモも頭からガブリといく。
子持ちシシャモ、長らく食べていなかった味、そして太くてみっちりと旨みが詰まった味。

いい夜が始まった。


次回「夜は美しい」乞うご期待