真っ白な世界 | Apologies

Apologies

My apologies

このブログはフィクションであり、実在する事件、団体、人物との
いかなる類似も必然の一致です。








舞い散る雪

地熱にさらされ溶け

水へと還帰る

溜まりに倒れたゴミ箱

薄暗い空き地

錆びたトタン板

板で塞がれた窓

低いブロック塀

取り残された時間の流れ

記憶の奥底を濡らす

















彼はいつもライブが始まり一曲か二曲を歌ったあと、ツアーの名称と「〇〇から来ました〇〇〇〇〇です」と必ず名乗りをあげる。
わたしは彼の生まれ故郷でのツアーファイナルで、どのように名乗りをあげるのかに興味があった。
「帰ってきました」だろうか?

しかしそれはまったく予想を裏切るものだった。
ツアー名を言ったきり、そのままライブは進行していった。
らしいと言えば、らしいかもしれない。
そしてその理由らしきものは、MCの場で明かされた。

生まれ故郷が嫌いで、バンドをしたくて東京へ行ったが、そこで挫折を味わい東京も嫌いになって故郷へ戻ってきた。
不本意な帰郷だったが、やがて嫌いだった故郷で仲間にも恵まれ、それは東京での再活動へとつながっていった。
メジャーデビューした今、支えてくれる仲間も増え感謝していると。

「だから〇〇も東京も今は、そこそこ好きになりました」
その言葉が全て真意なのか、照れからくるものなのかは分からなかったが、いかにも彼らしいと感じた。
常に自己と向き合ってきたからこその言葉なのかもしれない。
僕にはすがるもの幾つあるだろう 空しくなるから考えるの止めた
こう歌っていた彼は、今も前へと進んでいた。