尚実の変態ホットライン -5ページ目

尚実の変態ホットライン

ゆりかごという名の孵化器のなか、リハビリ中。

わたしはいま首輪を預かっている。
ある女性から送られてきた首輪。
それはMasterがあの夜、
彼女の首に着けた首輪。

その首輪をMasterに届けるようにと
Masterに言われている。
わたしは、Masterに二度質問した。

お届けしたいので、お届け先のご指定をお願いします。

でもその答えは二度とも頂いていない。

Masterは何処にいらっしゃるんだろう。

わたしは考える。
何処へ行くと、Masterにお逢いできるのか。
何処へお手紙を書くと、届くのか。

わたしのリードは
あなたが握っているはずなのに
わたしはそのリードを辿っても辿っても
あなたへと辿り着けない。
そのリードを伝わせて言葉を送っても送っても
あるのは静寂のみ。


独り言を
わたしはずっと言っている。
戯れ言をわたしはずっとずっとしゃべっている。
意味のあることなのかそれすらも分からないけれど。
しゃべり続ける。

誰にも届かないところで。


独り言を言い続けると
心がだんだんと蝕まれてくるよと言ったら
それこそが愛だと
わたしに首輪を送って寄越した彼女は言った。
それがカルマってもんじゃないかと
彼女は言ったんだ。

わたしは、200篇の詩を書き上げた。
おめでとうと彼女は言ってくれた。

何がおめでたいのか
わたしは分からないけれど
涙が止まらなくなった。

それは、
まるで生まれてきたことに対する
労いのことばのように感じられのだ。



以前、Masterに拘束具を付けていただいているときに
ナオミの身体にうまく沿わず、
お手をわずらわせてしまいました。
そのとき、ふと呆れ顔でMasterはこうおっしゃいました。

「お前はなんでも規格外だな」

ナオミの身体は、世間一般の基準から外れています。
身体のサイズがすごく小さいのです。
自分で鏡を見るのも嫌なほど醜くて。
胸も小さい。
Masterが仰るにはオマンコはゆるゆるだし、
指を入れたら子宮の位置も歪んでいるのが分かると言われました。


頭の悪いナオミは「規格」を辞書で調べてみました。
【物事の基準となる社会一般の標準】、とあります。
ナオミはそこから外れているのです。

Masterの拘束具は、他の女性との共有であり、
ナオミ専用のものではありません。
ですから、当然の如く規格外のナオミの身体には合いません。
実生活でもよく直面する問題ですが、
既製服も下着もナオミの身体に合わないものが多いのです。
Masterの所有物の中でも規格から外れているナオミは
きっと他の方に比べてMasterの手を何倍もわずらわせているのだと想います。
Masterにそう仰って頂くまで
ナオミはその自覚すらありませんでした。

指摘して頂いたときは
Masterの手をわずらわせてしまうことが申し訳なかったのです。
そして、ナオミの身体はアンバランスで、
Masterのよき被写体になれないことが情けなかったのです。
せめてもの救いは、その道具がナオミ以外の方に使われるということでした。
(道具がムダにならないから)

Masterに「ナオミ」と再び呼んで頂けるようになってから

わたしは今までにないくらいにMasterとの関係を大切にして

それを真っ直ぐに見つめ続けている。

そうして訪れた「安息」。


でも、それはただの「安息」ではない。

それは

わたしの中に、Masterが存在しているゆえの安息ではなく、

わたしが、Masterの中に存在しているゆえの安息なのだ。

だから、Masterが もしも ふっと わたしを払い墜としたなら

わたしは真っ逆様に絶え間なく墜ちていき、最後には砕け散ってしまう、

大きくて揺るぎなくて強いがゆえに か弱い安息なのだ。

だからわたしは、揺るぎない安息の中にも

常に緊張感を持っている。



わたしは時々考える。

もしも、わたしが手を離してしまったら、

間違えなく、この関係は行き先を見失ってしまう。


わたしが手を離したなら、

それはつまり 終わり を意味するのだ。