●概要

◆各界の偉人と言われる人々が、愛読書としてあげている本、論語と算盤。近代日本資本主義の父渋沢栄一が書いた本であり、論語に出てくることを学者のものとせず、実社会で活用することなどを自身の経験も交えながら説いた本。

◆後世、日本資本主義の父、実業界の父と呼ばれてノーベル平和賞候補になるだけではなかった。かれはいまから百年以上前に、資本主義や実業が内包している問題点を見抜き、中和剤をシステムの中におりこもうとしていた。もともと資本主義とか実業は自分が金持ちになりたいとか、利益を増やしたいという欲望をエンジンとして前に進んでいく面がある。其の手段が論語である。どのように振る舞うのが人としてかっこ良いのかの指針として、論語を活用しようとしていた。

◆孔子は論語の中で、清貧を説いているわけではなく、富と排反しないと考えるべき。論語と算盤は一致するものと考える。

◆明治末期に書かれた本で考察されたことが、そのまま現代に当てはまることが多い。大きな流れの中で、偉人と呼ばれる人が意識した、意識しないといけないと危機感を感じる事柄は、共通項があるのだと思った。

◆単なる成功者としての側面だけで渋沢栄一という人間を語るのは、あまりにも範囲が狭く、成功や失敗の前に、自立して志と正しい行為の道筋を立て、行動し続けたということに価値を持つべきだとある。それが価値ある生涯を送ることにもつながる。成功というのは目に見える結果であるが、その行動の残り滓にすぎず、目指すべきではなくついてくる結果にすぎないと考えるべきであると

 

 

●印象的な部分

◆富を基準として考えれば、孔子は落第生にすぎない。しかし果たして、孔子は自分のことを落第生と感じただろうか。もし自分の身の丈に満足して一生を終えたとするなら富を基準として人の進化を図ることはふさわしい評価と言えるだろうか。このような点から人を評価する難しさを感じるべきである。その人が何を実践しているのかを見、其の動機を観察して、其の結果が社会や人々の心にどのような影響を与えるか考えないと、人の評価などできないと思う。成功か失敗かという結果を二の次にし、よくその人が社会ために尽くそうとした精神と効果によって行われるべきだ。(p.128)

◆もし社会で身を立てようとして志すなら、どんな職業においても、身分など気にせずに、最後まで自力を貫いて、人としての道から少しも背かないように気持ちを集中させることだ。そのうえで、自分が豊かになって力を蓄えるための知恵を駆使していくのが、本当の人間の意義ある生活、価値ある生活と言える(p.169)

◆朱子学が治められる側にいた農業工業商業に従事する人たちを、道徳教育とは無関係にさせた。儒者は聖人の学問を解く立場、一般の人々はそれを実践する立場と区別してしまった。この結果として、一般民衆は上からの命令を素直に聞いて、村や町から課せられた仕事や行事をサボらなければそれでいいという、いじけた根性論になじんでしまった。国家を愛するとか、道徳を重視するとか言った考え方はどこかに言ってしまった。そんななかで欧米から利益追求の科学が入ってきて、悪い部分が助長された。(p.177)

◆昔の学問(江戸時代の武士が受けてきた学問)と、今の学問(明治以降の学問)を比べてみると、昔は心の学問ばかりだった。一方今は、知識をみにつけることばかりに力を注いでいる。また、昔は読む書籍がどれも自分の心を磨くことを説いていた。だから、自然とこれを実践するようになった。さらに自分を磨いたら、家族をまとめ、国をまとめ、天下を安定させる役割を担うという、人の踏むべき道の意味を教えていた。同情する心や恥の気持ちを人に抱かせ、礼儀やけじめ、勤勉で質素な生活を尊重するように教えたのだ。カザあり怪我なく真面目では地を知り、信用や正義を重んじるという気風が盛んだった。今の教育は精神を磨くことをなおざりにして、心の学問に力を尽くさないから品性の面で青年たちに問題が出るようになってしまった。底の浅い虚栄心のために、学問を納める方法を間違ってしまうと、其の青年自身の身の振り方が誤ってしまうだけでなく、国家の活力衰退を招く元になってしまう(p.192)

◆結果として知識ばかりに傾いていって、上に立つ人間、下の人間がともに自分の利益ばかり追うようになってしまっては、国は危うくなる。そうならないよう身近な実務教育においても、知育と徳育を一緒に行っていきたい。(p.200)

◆自業自得の人を、自業自得だと言って同情を持って接しないというのはとても良くないことだ。人が常に抱くべき”人道”とは、なにより良心と思いやりの気持ちを基盤にしている。死語のには誠実かつ一生懸命取り組まなければならない。そして同時に、そこには深い愛情がなければならない。哀れみの情を忘れてはならない。現場で実践していってほしい(p.207)

◆溌剌としたチャレンジ精神を養い、それを発揮するためには、ほんとうの意味での自立人とならなくてはならない。人に頼ってばかりだと、自分の実力を著しく錆びつかせ、最も大切な”自身”が育たなくなってしまう。この結果、ためらったりウジウジしがちになってしまわないように、自分に厳しく鞭打って、弱気になるのを防がなければならない。細心さと大胆さの両面を兼ね備える必要もある。自立して何者にも頼らすやっていきたいのなら、政府万能の状態で、民間の事業が政府の保護に恋々とする風潮を一掃しなければならない。政府の助けを借りず成長していく覚悟が必要なのだ。また、細かいことにこだわり、一部分のことだけに没頭してしまうと、法律や規則の類ばかり増やすようになる。其の毛化、作ったっ決まりに触れないかとビクビクしたり、あるいは其の決まりの則っていればよいと満足するようになる。こんなことであくせくしていては、とてもアタrし鋳物を生み出す事業を経営して、溌剌とした意欲を沸き立たせ、世界の大勢に乗っていくことなどできない(p.216)

◆人は、人としてなすべきことを基準として、自分の人生の道筋を決めていかなければならない。だから、成功としか失敗とかと言うのは問題外なのである。かりに悪運に助けられて成功した人概要が、善人なのに運悪く失敗した人がいようが、それを見て失望したり悲観したりしなくて良い。成功や失敗は結局のところ、心を込めて努力した人の体に残るカスのようなものだ。人は、人としてなすべきことの達成を心がけ自分の責任を果たして、それに満足していかなければならない。また、知恵あるものは自分の運命をつくる。誠実に努力していき、自分の運命を切り開いていくのがいい。もしそれで失敗したら、自分の智力が及ばなかったためと諦めることだ。逆に成功したら、知恵がうまくいかせたと思えば良い。どちらにせよ、お天道様からくだされた運命に任せていればいいのだ。成功や失敗といった価値観から抜け出して、超然と自立し、正しい行為の道筋にそって行動し続けるなら、成功や失敗などとはレベルの違う、価値ある生涯を送ることができる。(p.218)

◆人生の道筋はさまざまで、ときには善人が悪人に負けてしまったようにも見えることがある。しかし長い目で見れば、善悪の差ははっきりとした結果になって現れてくるものだ。だから、成功や失敗の良し悪しを議論するよりも、まず誠実に努力することだ。そうすれば公平無私なお天道様には、必ずその人に幸福を授け、運命を開いていくよう仕向けてくれる。

 

●タイトル

現代語訳 論語と算盤

 

●著者

渋沢栄一

守屋淳訳

 

●評価

★★★★☆

 

●出版日

2010/2/10

 *原文初版 1916/9/13

 

●読書日

2023/4/26

●概要

◆児童文学の金字塔であるミヒャエル・エンデ作 「モモ」。時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子の不思議な物語。20世紀の最も注目すべき小説ともいわれているとのこと。

◆小学5,6年生向けの児童小説であるが、大人が読んでもワクワクする冒険活劇というだけではなく、時間泥棒というテーマにも考えさせられる。ぜひとも子供が手に取れるように家においておきたい作品である。

◆現代は”タイパ”という言葉が巷で流行っているが、まさに時間泥棒に時間を盗まれているように思えてならない。時間を節約して、ショート動画がストリーミングで再生される時代、映画のまとめ動画が流れる時代、短いものを大量の情報を処理することに囚われていしまっているのが現代だと思う。身の回りの感動、自然の美しさ、語り合うことの楽しさ、そんなものをないがしろにしてしまって、行き着く先は何になるのか。10年後、20年後何が残るのかということを考えさせられる。インターネットというものが登場してから、想像できないほどの情報が溢れ、情報に溺れてしまっているのだと思う。3ヶ月ぐらい外界からの情報を絶っても、たぶん残るものは一握りしかないけれど、毎日がいろいろな情報に踊らされていると思うと、なんだか虚しいな、と思ってしまう。

◆某youtuberの解説を聞いていると、”時間”という概念は、”貨幣”という概念の暗喩でもあるというように言っていた。なるほど、たしかに未来のためにお金を節約して忙しく暮らしていることは、特に現代日本的でもあるように思う。未来への投資ではなく貯蓄・内部保留によって流動性を失い、お金を持つこと・ためること自体に宗教的観念を持ってしまった日本人にとって、非常に考えさせられる。エンデがモモを出版したときには、資本主義・商業主義の行く末を案じてということだったが、グローバル化、ボーダーレス化での競争が激化する中で、傾向はますます強まっていると思う。

◆50年以上の時代の風雪に耐えた作品だけあり、名著と呼ぶにふさわしいものであった。子供の時に、母からあらすじを口頭で聞いたことがあって面白い話だなと思っていたが、今、読むことでワクワクドキドキだけでない感情が湧く。忙しくて身動きが取れなくなっている大人や友達の姿を見て、隙間や遊びのない人生の意味を考えさせられる。意味なんて、自分で見つけるものだが、成功することが唯一の価値観ではなく、1要素であるべき。きれいなものを見てきれいと思ったり、思いやりを感じたり、行動に愛情を込めたり、意味付けできることはたくさんある。昨日実際に、雨の日に雨に濡れた花を見て、きれいだと感じたり、区民センターに飾ってある絵の力強さに心動かされたり、誰から褒められなくても評価されなくても、自分が意味付けをできることに価値があるということを強く感じた。

◆”灰色の男たち”の毒に侵されているのは、インターネットという電波でカバーされ、どこでもスマホで繋がれてしまう現代社会の暗喩なのだと思ってしまう。スキマ時間にスマホで時間を奪われ、常に忙しそうにしている。

 

●印象に残った場面

◆時間を測るのにはカレンダーや時計がありますが、測ってみたところであまり意味はありません。というのは、誰でも知っている通り、その時間にはどんな事があったかによって、わずか一時間でも永遠の長さに感じれることもあれば、ほんの一瞬と思えることもあるからです。なぜなら時間とは、生きるということ、そのものだからです。そして人のいのちは心をすみかとしているからです。(p.83)

◆ここでは何もかも正確に計算され、計画されていて、1センチのムダも、1秒のムダもなからです。時間をケチケチすることで、ほんとうは全然別の何かをケチケチしているということには、だれひとり気がついていないようでした。じぶんたちの生活が日毎に貧しくなり、ひごとに画一的になり、日ごとに冷たくなっていることを、だれひとりみとめようとはしていませんでした。(略)人間が時間を節約すれば節約するほど、生活はやせほそっていくのです。(p.106)

◆せわしなく動き回るおもちゃの虜になって、それでいて本当は退屈していて、眺めてばかりいます。けれど頭の方は空っぽで、ちっとも働いていないのです。ですからけっきょく子どもたちは、むかしながらの遊びにまた舞い戻ることになります。これなら、1つか3つの木箱とか、破れたテーブル掛けとか、モグラが盛り上げた土の山とか、ひとすくいの小石のとかがあれば十分で、後はなんなりと空想の力で補うことができるのです。(p.111)

◆この訪問者の話すことを聞いれば聞いているほど、さっきの人形と遊んだときのような”たいくつ”になってくるからです。つまり、話す声は聞こえるし、言葉は聞こえるのですが、話す人の心は聞こえてこないのです。(p.139)

◆「いいかね、モモー よく聞くんたよ!」男はようやく口を切りました。よく聞くことなら、モモはさっきからずっと、一生懸命にやってきました。ところがこの男の話を聞くことは、これまであいてにしただれよりもずっと難しいのです。他の人の場合は、モモはいわばあいての中にすっかり入り込んで、その人の考えや、その人の本当の心を理解することができました。けれどこの訪問者があいてでは、それがまるでできません。いくらつとめていても、空っぽのやみのなかに落ち込んで行くような感じで、相手がいないも同然です。こんなことはモモには初めてでした。「人生で大事なことは一つしかない。」男は続けました。「それは、なにかに成功すること、ひとかどのものいなること、たくさんのものを手に入れることだ。ほかのひとより成功し、偉くなり、金持ちになった人間には、そのほかのものー友情だの名誉だの、そんなものは何もかも、ひとりでに集まってくるものだ。」(p.141)

◆遊びを決めるのは監督の大人で、しかもその遊びときたら、なにか役に立つことを覚えさせるためのものばかりです。こうして子どもたちには、他のあることを忘れていきました。ほかのあること、つまりそれは、楽しいと思うこと、夢中になること、夢見ることです。(p.277)

◆でもジジはジジじゃなくなっちゃったんだ。モモ、一つだけ君に言っておくけれどね、人生で一番危険なことは、かなえられるはずのない夢が、かなえられてしまうことなんだよ。ぼくにはもう夢が残っていない。君たちみんなのところに帰っても、夢は取り返せないだろうよ。(略)だが、夢もなしに貧乏でいるーー いやだ、モモ、それじゃ地獄だよ。だからぼくは、今のままいるほうがまだましなんだ。これだって地獄には違いないけれど、でもすくなくともいごごちはいい。(p.308)

◆モモは逃げる気がなくなりました。今まで逃げ回ったのは、じぶんの身の安全をは勝手のことです。ずっと自分のことばかりを考え、じぶんのよるべないさびしさや、じぶんの不安のことだけで頭を一杯にしてきたのです!ところが本当に危険にさらされているのは、友達の方ではありませんか。あの人達を助けることができる人間はいるとすれば、それはモモをおいて他にいないのです、友達を自由の身にしてくれるよう、灰色の男たちを説き伏せられる見込みがほんの少しでもあるなら、少なくともやってみるだけはやらなければなりません。そこまで考えてきたとき、モモは、急に自分のなかに不思議が変化が起こったのを感じました。不安と心細さが激しくなっていって、その極にたっした時、その感情は突然に正反対のものに変わってしまったのです。不安は消えました。勇気と自信がみなぎり、この世のどんなおぞましいものが相手でも負けるものか、という気持ちになっていきました。(p.329)

◆大都会では、長いこと見られなかっか光景が繰り広げられていました。子どもたちは道路の真ん中で遊び、車で行く人は車を止めて、それをニコニコと眺め、ときには車を降りていて一緒に遊びました。人々は足を止めて楽しげに言葉をかわし、互いの暮らしを詳しく訪ね合いました。仕事に出かける人もいままでは窓辺の美しい花に目を留めたり、小鳥にパンくずを投げてやったりするゆとりがあります。労働者もゆったりと愛情を込めて働きます。(p.394)

 

 

●タイトル

モモ

 

●著者

ミヒャエル・エンデ作

大島かおり訳

 

●出版年

1973年 初版

2005年/6/16 翻訳改訂版

 

●読書日

2023/4/26

 

●評価

★★★★☆

 

 

 

 

●概要・感想

◆以前栗山英樹氏の本を読んだときに、この作品について言及があり、組織マネジメントを考えるうえで、過去の偉人達が愛読していたという本ということで手にとってみた。

◆宮大工の鵤工舎を作った、小川三夫氏の考え方が述べられた後に、20人あまりの弟子たちのインタビュー録となっている。口語体であるので読みやすい。

◆読み終えて、弟子たちがどのような気持ちで取り組んでいたのかと、小川氏がどのような狙いでそのようにしていたのかを読むことで、1回読んだだけではわからない部分が少しわかるような気がした。

◆単に技術を学ぶのではなく、それを使って堂や党を立てる、それは揺るぎないものとなって根を張るというように、学んだことを生かして成果にして、それで次の事に移っていくなかで育っていく、それは時間がかかることでも仕方ないことなのだとあった。

 

●印象的なところ

◆新しく入った子に飯を炊かせると言うのは、どちらもかなり意識していることで、狙いとしては段取りがよく分かるようになるからとしている。掃除をさせれば、パッとやるひと、きっちりすみずみまでやる人、仕事につながる性格がわかるというように、身の回りのことが仕事にも現れることを示している。(p.27他)

◆学校ではないのに、勘違いする。教えてもらえると思っているんだ。大工の仕事なんて教えられるもんじゃない。自分で習得するしかないんだ。「こうすればいい」なんて誰も言わないよ。言ったってその人の身にはつかない。言ってわかることじゃないからな。

手で覚えなければいけな。それがわかるまでに時間がかかる。学校ならそう言って教えてくれやろ。だけどそれじゃだめだ。自分から気が付かなくちゃいかん。これから長いことを仕事をしていかなくちゃならないのだから、体で覚えるしかない。(p.20)

◆読み終えたあとに気づいたのだが、本書は3部に分かれており本書 ”人” は3つ目の視点としてである。今後、その前にある 天、地 を読んで補完していきたい。

◆職人ばかりを集めてやると仕事がバラバランになる。職人というのは腕がいいんだから、ハタから見るとまとまるなと思っても、それは違う。みんな俺はこういうふうにやりたいとか、俺はこれだけのことをやりたいとか、とうふうになると途中で肝心なことがみんな抜けてしまう。そういう気味では、素直に自分の与えあられた仕事をしてくれる鵤工舎のようなしかたのほうがいいものができる。まとまりやすいし、しっかりやる。手を抜かんからね。若い衆も仕事の現場に置かれて、自分たちで教わりつつ、言われたとおりきちっとやる。それが勉強やからね。同じ程度の職人が集まると、なかなか仕事が・・・・うまくいかん。(p.194)

◆新しいもののほうが性能がいいことがあるが、道具はそうではなかった。カンナは自分が散々使った後じゃなきゃ使い物にならなかった。自分の手の中で馴染ませないとダメ。なじませるためには時間がすごくかかる。(p.168)

 

 

●タイトル

木のいのち 木のこころ 人

 

●著者 

塩野米松

 

●評価

★★★☆☆

 

●出版日

1994/12/5

 

●読書日

2023/4/26

●概要・感想

◇2020年本屋大賞1位の作品。

◇本人たち同士にしかわからない傷や信頼関係が、周りの人に理解されないことで苦しみながらも、前に進んでいく物語。

◇型にはめて考えることは多くの場合で間違っていないけれど、そこから少しはみ出した人にとっては拷問のような感覚を与えていた。

◇前半のキラキラした世の中が輝いて見えた主人公の描写から、中盤にかけて暗い感情や辛い境遇を直接それ自体ではなく、物事に目を向けることで、観視した視点表現に写っていっている。なにかにすがっていかないと心が壊れそうになる中で、必然的に特定の相手を求めていく移り変わりが、物語に没頭していくのとシンクロしていった。

◇推理小説のように読み終わったときにスッキリすることはないけれど、読む前と読んだあとだと世界を違う見方をしている他者がいるということに気付かされた作品だった。

 

●印象にのこった場面

◆結婚したらすぐ子供をつくる、という話はわたしは聞いていなかった。将来は山梨に帰って畑を継ぐかもしれないという話も知らなかった。そもそも結婚話自体も唐突だった。亮くんは大事なことをいつもひとりで決めてしまう。別にそれでも構わない。究極の話、亮くんとわたしがしっかりとつながっているなら、わたしはきっと地の果てだってついていくだろう。(中略)わたしたちがし、しっかりと、つながってさえいれば。 (p.154)

◆「もう、絶対にあんなことはしないから」亮くんは前にもそう言った。あのときの人工的な葡萄の香りが蘇る。まがいもの。愛とよく似ているけれど、愛ではない。亮くんは自分の空洞を満たしてくれる誰かを欲しがっているだけなのだ。私tも似たようなもので、それが今夜露わになった。(p.177)

 

●タイトル

流浪の月

 

●著者

凪良ゆう

 

●出版年

2019/8/30

 

●評価

★★★★☆

 

●読書日

2023/4/23

 

 

●概要

◆20分前後で古今東西の哲学の思想エッセンスを、原著をもとに要約して、非常にわかりやすく解説してくれるyoutuber。

◆動画よりもラジオとして聞くと非常に心地よい。

◆声や話す速度、抑揚、BGMも非常の心地よい。

◆ランニングや通勤時に聞くことで、非常に良質なチャンネルである。

 

●おすすめ動画

(2) 【永遠の名著】ツァラトゥストラ|ニーチェ ~無敵の自己肯定感を生み出す、究極の思想とは?~ - YouTube

神は死んだ 知らなかったが、それが何を意味しているのか、ニヒリストとはなにか、末人とは、

超人になるためには、、、まさに現代に必要な思想なのだと思う。

 

●概要リンク

(2) アバタロー - YouTube

 

説明📘日本最大級のオンライン読書コミュニティ Book Community Liber ~本と仲間と出会える、アウトプットの遊び場~ https://bc-liber.com/about ▼Voicyチャンネル ~アバタローの雑談ラジオ~ https://voicy.jp/channel/2664 ▼アバタローの著書 『人生を変える 哲学者の言葉366』 https://amzn.to/3szGn5H 『人生を変える 哲学者の言葉123』 https://amzn.to/3KHCdRX 『自己肯定感を上げる OUTPUT読書術』 https://amzn.to/2KBM4xx 当チャンネルは、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。 お仕事関係のご依頼、問い合わせはこちらまでお願い致します。 3kuchi2@gmail.com

 

●視聴開始日

2022/4/20

 

 

●概要

◇2023年のWBCで優勝監督となった栗山英樹氏が、2013年の日本ハム監督就任初年度で優勝を経験した後に書いた本。まだ、大谷翔平選手は入団したばかりでこれから二刀流を開始していくという段階であった。

 

●感想

◇どんな思いで監督というものをやっているのか、監督初年度が終わった段階なので今はまた違うかもしれないが、気になって手を取ってみた。世の中で活躍している人に共通しているが、偉人・周囲の人から学んで自分のスタイルを作り上げていったのだと感じた。自分のスタイルは自分の原体験やコーチ・監督、幼少期の体験などで培われていくものだけれど、哲学的な思想は偉人から得ていることが非常に多いのだと感じた。賢人も他人に学ぶのだから、私のような凡人が、他社に学ばなければならないのは言うまでもないのだと。日ハム時代の、すこし気持ち悪いと言われるぐらい選手に対して愛情を向けている姿は、狙っている部分は少しはあると思うが、本人が心の底から思っていることであるから、選手に対して伝わるものが大きいのだと思った。

 

 

●印象に残ったこと

◆「批評家になるな、いつも批判される側にいろ」常に現場に立ち続け、アクティブに仕事に取り組んでいる人は批評される側である。批評する側ではない。そこには大きな隔たりがある。

◆「政治家というのは自分を殺して人に尽くすだけの仕事である」

◆元気のない日ほど、大きな声で挨拶する。自分から挨拶する。毎日できること。続けるだけでうまく回り始める。

◆車の中などで、漢詩などのCDを聞いている。韓非子(春秋戦国時代の思想の集大成)、孫子(古今東西の兵法書で最も有名なもの)、菜根譚(明代末の乱世の処世訓)、貞観政要(唐代2代皇帝、体操の言行録で帝王学の教科書)そのようなものを読んでいるとのこと。古今名著と言われるものはハズレがないのだと思う。

◆今読むべき本と偶然出会う確率は低い。時間は限られている。そんな中で確率を上げるには、それぞれの分野でしっかりと実績を残してきた人たちが勧める本をよむことである。東洋経済やプレジデントなどに掲載されている社長が勧める本などが例である。

◆考えることで、感じることをコントロールする。感じることで行動につながるのは、選ばされているという感覚である。自らの意思で選択しているとするには、どのようなスキームでそれに至ったのかを考えることが必要である。別の本でも同じようなことが書かれていた。

◆自然を相手にしていると慣れることがない。人間は自然に対して対応していかなければならない。人に対してもそうで、変に慣れない方がいい。初々しく取り組むことも必要で、それは結構難しい。どうすればいいか。もっと必死に選手に向き合う。それしかない。

 

●タイトル

伝える。言葉より強い武器はない

 

●著者

栗山英樹

 

●評価

★★★✬☆

 

●出版日

2013/4/5

 

●読書日

2023/4/22

 

●出版日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●概要

◇パラドックス(矛盾)を抱えている問題からパズルのような問題までを、イラストが豊富に扱った本。哲学コーナにあって分厚くてかっこいいので手を取って読んでみた。日比谷図書館に行って目に止まり、台東区の図書館に蔵書がないこともあって、手を取ってみようという気になった。

◇小学校高学年になるぐらいで、子供に与えると興味を持ってくれるかもしれない。

 

●面白かったパラドックス

◆完全に民主的な投票方式は存在しない。決選投票方式や、単独記入方式、総当たり方式など考えられる方法で順位をつけたときに、1位が変動することが大いに有り得るからである。

◆ギッフェン・パラドックス

 …値段が上がった商品の需要が増えることがある。予算上限が決められている状態で、一定の数量を確保しようとしたときに、安い方の値段が上がったときにそちらの数量を増やさざるを得なくなる現象である。そのような品物のことをギュッフェン材という。carbon tax による、石油・天然ガスでも同じことが起こるとされている。回避するには超絶上げて逆転させるぐらいしかない。

◆”この壁に張り紙をしてはならない” という張り紙はパラドッックス。ラッセルのパラドックスという。

◆確率が半々になる現象が8回あったときに、4:4は最も多い組み合わせではない。最も多いのは、片方が3,もう片方が5となる組み合わせである。

◆モンティ・ホール・パラドックス(ジレンマ)

 …ABC3枚の扉があり、1つだけ正解がある。例えばAを選んだ後に、司会者がBが外れの扉だと公開する。その後選んだ扉をAからCに変えるか変えないかを選ばせる。どの扉を選んでも1/3の確率で当たりなのだから代えても代えなくても確率は変わらない、と思いがちだが、間違いである。扉Aの確率は1/3だが、扉Cに変更すると期待値が2/3に上昇する。誰かに教えてあげたいパラドックスである。

◆シンプソンのパラドックス

 …個々の結果と全体の結果が逆転することがある。局地戦ですべて勝っていても、合計して平均を取ると逆転してしまうことがある。点数に重み付け、例えば正答率が低い問題に対して加重するなどすれば解決することもある。

 

 

●タイトル

VISUAL BOOK OF THE PAEADOX

パラドックス大図鑑

 

●著者

高森康雄

 

●出版年

2021/11/15

 

●読書日

2023/4/22

 

 

●概要

◇”思う”と”考える”は違うということで、”考える”ことのやり方を噛み砕いて示した本。実例として出てくるものは、少し陳腐な感じもあったが、手順として言っていることは取り入れて考えていきたいと感じた。

 

●ためになったこと

◆何らかの目的のために、自身の持つ様々な知識を総動員して答えを導き出そうとする、そういう姿勢が、”考える”ということになる。知識を用いて目的達成を目指すのがポイントであり、そのために全力で脳をフル活用している状態が理想である。

◆考える手順は

 着想 → 具体化 → 構造化 → 情報補完 → 取捨選択

である。とくに捨てることで、わかりやすくなる。

時系列に沿って具体化、構造化していく中で、足りないものを補完して行く。何があったらどうすると具体的に判断していくことで、思いつきではなくて深く考えられたものとなる。

◆取捨選択する中での観点は、”当初の目的はなにか、ゴールに立ち返ること”である。情報補完の段階で関係のない情報が増えていくことはいいのだが、それを捨てることも最終的には必要である。

◆頭の中にあることをすべて言語化してみる。お腹すいたとか、そういえばあのメールに返信しないとなとか。書かれなかったりアウトプットされていない思考は思考ではない。結論だけではなく、思考過程や疑問、迷っているポイントを一度書き出してみる。もやもやしていることがあるなら、そのもやもやに至る原因を書き出してみる。書かないで、声に出して録音してみても良いと思う。ポイントは思考を邪魔しないことである。デジタルでもアナログでも。

◆自分の資料をレビューするときには、他人が作った資料という目線でチェックする。ケチョンケチョンに直されても、自分が言われているのではなく他人の資料が良くできていないと思うぐらいでいいので、客観性を大事にする。

◆自分の論理的な思考パターン・プロセスを理解する。原因に対してなぜそうなったかの過程を一つ一つ解きほぐしていく作業を、毎回する必要はないが、それをできるようになっておくべきである。

◆相手に伝えるときには、自分が考えた順番ではなく、相手が知りたい順番に話をする。相手との信頼関係を構築することで、話を聞いてもらえるようになる。相手との信頼関係がないのであれば、まずそれを自覚することから始める必要がある。そんな中で有効なのが、ホウレンソウ、特に相談である。

 

●タイトル

思いつきを価値あるアウトプットに変える

思考の手順

企画書 提案書 新規事業 改善 課題解決

4ステップで伝わる、動ける「考え型」

戦略コンサルタントが実践 

せっかくのアイデアを無駄にしない

 

●著者

田中 耕比古

 

●出版日

2023/3/29

 

●読書日

2023/4/21

 

 

 

 

 

 

 

 

●概要

2020年度本屋大賞第2位の作品の文庫本版。

 

●内容と感想

◇若くして余命を宣告された主人公が、瀬戸内の島のホスピスで残りの日々を過ごしていく物語。何かを成し遂げていく物語ではなく、むしろ体は思うように効かなくなっていくし着実に死に近づいていく。限られた時間。そんな中で眼の前の景色・食事・出会いなどが、圧倒的に意味のあるものとして、温かみのあるもので進んでいく。近いうちの死は、逃れられないという気持ちになった、その向こう側に、それでも生きていたい、今あるものを味わっていたいという純粋で根源的な気持ち。避けなことを考えることができないからこそ、本当に大切なものに目を向けることができてその様子を感情移入できるように描写している。優しい描写、私の常識で考えてしまうと残酷な運命と思ってしまうけれど、そんな運命すら優しさで包まれながら進んでいく。

◇体は確実に弱っていく。涙が尽き果てるまで泣いた。お腹が空いてはご飯を食べて泣く。前のような世の中すべてを呪う怒りの感情ではなく、美しいこの世界にお別れを告げなくてはならないということが切なくて、悲しくて泣く。もっと生きたいという気持ちを素直に認めてあげると、心は楽になっていった。どうせ終わる人生だからと投げやりになるのではなく、最後まで人生を味わい尽くそうとすることで、心が研ぎ澄まされて感動と感謝の気持で、逝く準備が整っていく。

◇出会った人で、同じ境遇のゲストの人々も旅立っていく。旅立つ中で、いろいろなことを教えてくれる。決して先が短いからとか、関係ない。意味のあることを学び、はっきりと理解することがどれだけ大切なことか、意味のあることか、読んでいて感じた。

◇最後の80ページほどは、近づいてくる終わりのとき、洗われていく心、深いやり取りが進む中で、正直涙で読めなくなっていった。朝の通勤で電車で読んでいたが、途中で涙がこぼれそうだったのでやめた。でも、続きを読みたくて、昼休みに会社で最後まで読んだが、涙がこぼれそうになった。鼻水が出てきた。泣いているのを見られたくなくて、読み終わった後トイレの個室で泣いた。

◇どんでん返しがあるわけではなく、ハラハラ・ドキドキするわけでもないけれど、これだけ心が動かされる、感情が揺さぶられる。そんな作品として、読んでよかったなと思える作品に出会えて感謝。

◇自分の独りよがりで、昔からやっていること、好きなことに囚われて狭い世界で生きているよりも、他人が勧めてくれる新しい世界を体験してみることは、いいなと感じた。

 

●タイトル

ライオンのおやつ

 

●著者

小川糸

 

●評価

★★★★✬

 

●出版日

2022/10/5

 

●読書日

2023/4/20

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここ3週間ほど、週4程度でランニングを行っている。

 

距離は6km前後で、夜走ることが多い。

 

ダイエットにと始めたが、段々と面白くなってきた。理由は2つ。

1)体重計に乗って記録を付けるというのを最低限の目標にしているため、あまり義務感という感じではなく、少しでも体重計に乗る前にプロットする点(手書き)を下にしたいという思いで、実施しているのが、無理なく続けられる原動力になっている。

 

2)目標物に向かって走るのが楽しい。家からスカイツリーまでおおよそ3km弱なので、スカイツリーを目指して走っていくと、段々と近づいていって、下から見上げるのが楽しい。隅田川沿いの夜景を眺めながらランニングするもの景観がよく楽しい。

 

3)たるんだ腹がすこし凹んできて、実際にウエストも3~5cmマイナスになり、ベルトの位置が変わったのは成果につながったと感じている。体重も開始から2~3kgはマイナスになった。

 

4)携帯でyoutubeのラジオを聞きながら走っており、情報を頭に入れながら走ることができてちょうどよい。案外ポケットのの中に入れている携帯も気にならない。

 

 

以前走るときにはペースを上げないと という思いが強く、長い距離を走るのが難しかったが、今はペースよりも景観を楽しみながら自分のペースで走ることで、結果的に長い距離を走れるようになってきた。

 

せっかくなのと、ケガ予防のために、ランニングシューズを新調したが、今の靴はクッション性やサポート性が高く走るのをサポートしてくれるので、自然とペースを上げて走ることもできた。

 

少し長い距離を試してみて、10kmを57minで走ることができ、かなり満足できた。

歩道橋を渡ったり、信号待ちをしての時間なので、条件が良ければ、、、とも思ってしまうが、今のところが景観として良いし、途中まで自転車などで移動するのも面倒なので、当分このまま続けようかと思う。

 

いろんな方面を試してみたいと思う反面、あまり都心や繁華街では迷惑になるので、なるべく人混みのないところを人混みのない時間で走ることを今後も心がけたい。