●概要

◇喘息に関するQ&Aの134問について、専門医が回答するという本。今まで知らなかった情報もあるので、知らない部分を埋め合わせることで、喘息への理解が進む。

◇喘息は命に関わる病気である。1950年代では15,000人以上が命を落としていた病気であって、恐ろしいものである。その認識をまず持たなければいけない。

◆1門1答方式で勉強になることが多かった。喘息の子供がいる人にはおすすめの本である。

 

●新たに知った知識

◆小児喘息の90%は主にダニの死骸や分といった特定のアレルゲンが引き金になって起こるアトピー型である。(p.27)

◆症状がない時期がある事自体が、ぜんそくという病気の大きな特徴である。症状がない間にも起動では静かに炎症の状態が続いている。(p.41)

◆喘息発作がおこりやすいのは、午前2時から4時のあいだ、5月から7月、10月から11月の間が多い。(p.48)

◆解熱・鎮痛で使われるアスピリンを始めとする解熱消炎鎮静剤を取ると、喘息の発作が起こることがある。食品や薬剤に含まれる色素、防腐剤によって誘発されることもある。薬は自己判断の市販薬ではなく、医師に処方してもらうべき(p.52)

◆逆流性胃腸炎が喘息を誘発することもある。合併のメカニズム(順序)は不明だが、両者の有病率相関は高い。

◆アレルギー性鼻炎も。アレルゲンを吸い込むことで起こる病気なので、アレルゲンを除去することが重要。(p.54)

◇パートナーがアレルギー性鼻炎であるなら花粉などは家の前で落とさないといけない。自分ごとに捉えないといけない。対策グッズをじぶんで買って、自分で使うことを習慣にしたいと思う。

◆医師に伝えるときの内容

 ・いつ頃から症状が出たか

 ・どんなときに症状が出るか

 ・どのような症状が出るか

 ・発作状況の強さ

 ・発作の出る頻度

 ・夜間・睡眠の状態

 ・悪くなるきっかけの心当たり

 ・アレルギーはあるか

 ・風を引きやすいか

 ・過去の病歴

 ・現在治療中の病気

 ・家族の既往歴

 ・部屋の環境

上記のメモを持参するべき。

◆ホクナリンテープ…長時間作用性β2刺激剤 であり、気管支拡張を行って呼吸を楽にする。

◆吸引ステロイド…抗炎症薬 気道の炎症を改善して過敏性を制限する 症状を根本から改善するものである。

◆吸引ステロイドは副作用が少ない薬ではあるが、口や喉に違和感が残ったり、口内炎ができることがあるので、うがいを行うと良い。

◆喘息との相性が悪い薬として、交感神経遮断薬であるβ遮断薬は相性が悪く、気管支収縮に関わるβ2受容体に対しても遮断作用を示すことがある。目薬に入っていることがあるので注意。

◆子供が就寝中苦しそうにぜーぜーして眠れないなら、吸引させたほうが良い。(Q63)

◆薬を飲んで吐いてしまったときには、飲んだ直後~30min以内で区駿河そのまま出てきたときにはもう一回分飲ませる。30min以上たった後では、改めて飲まないこと。(Q65)

◆吸引するときには、”ホー”という声を出してから、その口の形で吸引すると気道に届く量が増える。舌の根が気道を塞ぐことを防いでいくためである(Q66)

◆発作を避けるには、これまでの発作の共通点を考えて、悪化原因がどこにあるのかを検証すること(Q70)

◆発作のときに介助として、利き手を胸の前に当て、反対の手を背中に当てる。呼吸に合わせて履くときに胸が動く方に圧迫する。また、呼吸のリズムを1,2で鼻からゆっくりと吸って、すぼめた口から3,4,5,6で吐くようにする。(Q82)

◆大発作が起こったら、炎症が治るまで1ヶ月かかる。小発作であっても回復に2週間程度かかる。

◆エビデンスが不足しているが、地中海食はバランスの良い健康的な食事であるため、喘息に良いという考え方もある。(Q99)

◆安息香酸ナトリウム、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、などの食品添加物はアスピリン喘息を誘発することがある。シロップ、飴、醤油、マーガリン、アイス、シャーベット、チーズなどに含まれることがある。(Q101)

◆たけのこ、なす、ほうれんそう、やまいも、里芋などのヒスタミンやコリンといった気道収縮作用のあるものはあまりとらない方が良い。冷たい牛乳やインスタント麺もNG(Q102)

◆プールがぜんそくに良いというのは、温度が高くて一定であり、ホコリが少ないから。

◆呼吸機能を高めるストレッチとして「バランスボールを抱くポーズ」で、呼吸しながら前後にゆっくり動いたり、左右に捻ったりしながら数分行うと良い。(Q108)

◆運動するときには準備運動をしっかりする。水が飲める状態であれば飲ませる。(Q108)

◆子供のセキで、たんが詰まっているときには手のひらをお椀のように丸めた状態で、こどもを前かがみの状態にさせ、背中をリズミカルに叩くと出しやすくなる。(Q117)

◆ツボ押しは写真を参考に行う。(Q118)

◆オフロに入っての発作を防止するため、急激な寒暖差を杖内容にすること、長湯を避けること、換気扇を回してカビを防止すること がある(Q122)

◆布団やシーツは、化学繊維の方が良い。動物性のものは避ける。(Q124)

◆旅行の際は喘息カードを持参する。直接エアコンが当たる席を避ける。

 

●タイトル

ぜんそく

長引くセキ・たん・息切れ

気管支炎・COPD

呼吸器とアレルギーの名医が教える

最高の治し方大全

聞きたくても聞けな方134問に専門医が本音で解答!

 

●編集人

上野陽之介

 

●出版日

2021/10/12

 

●評価

★★★★☆

 

●読書日

2023/5/24

●概要

◇before~posコロナを踏まえて、見えるもののみに執着してしまう現代を、元歴史学者という著者が、持論と対談を通して意見を言っていく本。

◇かなりなるほど、と思えることも多く、新著として読んだ本の中ではかなり有益だった。

 

 

●印象に残った部分

◆(マイノリティに対して、カミングアウトがふえれば増えるほど多様性に近づくのだという姿勢は、実は、「誰もが生きやすい社会」につながるどころか、分断をむしろ悪化させる。リベラル派ほど国家権力を行使した強硬な対策を唱える逆説がみられたコロナ禍の体験とのアナロジー。(p.11)

「善良かつ優秀なマイノリティ」ということばで代替される。

◇本書の中で繰り返し出てくるテーマだが、キラキラした多様性のみ注目すること、例えばこんな状況でもこれだけ頑張って成果を上げた人がいるんだよ、という一握りの例を押してしまうことで、それ以外の平凡な、困難な状況に人並みに心を悩ませながら方向性を探っている状態の人などは、あたかも存在しないが如く扱ってしまう。困難な状況の人ほど性格が良い、キラキラした部分がある、なんて、よく考えればそりゃぁ、いるけど、全員がそうではないよね、は当たり前のことだと思う。それをあたかも全体として扱ってしまうことで、逆に取り残される人は気づかれなかったときよりも、ラベリングされる前よりもつらい立場になって分断が深まってしまうと感じた。

◆2010年からのプレゼンブームでは、客観的なデータとエビデンスを強調して説明する喋り方が主流になってきた。(p.38)

◇悪いことだけではないが、データの中には取り上げる人のイデオロギーが含まれることに留意しなければならない。事実に基づいて発言する人でも、元々の考えに沿ったデータを集めてくるので、根底となる思想が反映されているということを念頭に話を聞かないと行けない。本書では、コロナ禍で感染症専門家の意見である、「感染者数を最小化する」ということが切り取ってすべての根源思想になり、毎日感染者数がニュースなどで垂れ流された。ある時期、ある面では有効だったかもしれないが、社会の合意点をすり合わせで作っていく見地からはかけ離れている。

◇専門家が力を持ちすぎて、社会との調和を担っていくというよりも、それを武器にして異なる意見の相手をやっつけてやろう、というVSの考え方が多くなっているようにも思う。武器ではなく、尊重して一旦受け入れてみるのも、議論の中では必要なのかもしれない。

◆コロナ禍の指導者として、演説でもてはやされたニューヨーク州知事のクオモ氏は、後に統計を操作して死者数を隠蔽していたことが明らかにされ、多数のセクハラ認定で辞任した。

◇この人の言っていることだから大丈夫、というのは乗っかるのは簡単なだが、実は本当に大丈夫な人なのか、という信用するための疑いの目、よく見ることをしないと、嘘の数字に騙されるなんてことがあるんだろうなと感じた。

◆コロナ禍ではアプリが解決してくれる、ローコンテクストなわかりやすい見える化社会がニューノーマルだ と、もてはやされた時期があったが、持続不可能なものと証明された。(p.63)

◇現状の社会はコロナ禍前に戻りつつある。対面でのハイコンテクストで情報量の多いコミュニケーションを取らなければ、結局人間同士しなので齟齬があったり、無駄に画面越しの視覚からの情報を得ようと頑張るけれど、疲れるだけというのも多い。現物に触れないで、テキストや資料上の情報で感覚を掴めなくなっているエンジニアさえいるように思う。立ち返るべきは3現主義なのだと思う。

視覚

◆タグ付けされた知識だけで相手を理解しようとしてしまう風潮がある。ローコンテクストなやり取りやマニュアルに乗っているもののみしか理解しない風潮が広がり、人間の理解力は低下した。(p.77)

◇本書ではファスト映画を例にとって、事実を並べていないとわからないというようになっている。やはり文学作品、本を読むのがいいのではないかと個人的には思う。とくに歴史的な名著とされているような本であれば、間違いないのではないかと思う。一度通読してみて、その後解説書を読んでみて、もう一度見ることで、行間に宿るモノを読み取れるようになるのではないかと思った。

◆エビデンス依存の人は、ツイッターのフォロアー数に依存してしまう。視覚依存症とも言うべき状況なのに、それに気づかずに自分を健康だと言っているが、果たしてそうだろうか。

◇目で見えるものだけれど、質が全く無いようなものを追い求めるのは、戦争での死者数を比べるようなことなんだと思う。規模感はわかるが質はわからない。西部戦線異状なし、ということだと思う。

◆ビダハンは色を洗わず言葉の概念がない。(p.94)

◇彼らは遠近感のつかめない熱帯雨林にいることで、時間の概念を持たない(失った?)とされるが、他にも色々な気づきがある。自分が当たり前だと思っていることも、そうでないと気付かされる一例だと思う。

◆脱炭素化を進めて火力発電をゼロにしましょうと叫ぶ。その副作用としてどれほど既存のサイクルが破壊されようが、そんなものはもともと価値がなかったんだから知らないよと言わんばかり。そんな思考は全く循環型ではない、直線型の思考に陥っているように見える。自然や地球のサイクルに逆らっているように見える。

◇脱炭素だけではなくPFASのような、技術的に代替が困難なモノ、工業的に必要不可欠なものを規制することで、解決する問題と、新たに吹き上がる問題と、バランスなのかなと思う。段階的に送料を規制するという脱炭素のやり方ならまだしも、猶予付きの全面禁止は厳しい。工業としてやるのはどこかに不味さを抱えながら、負担をかけながら行うことだと思うので、そのっ負担が陀羅尼別のところに行くだけで、全体としてはうまく行かないということも多いように思う。直線型思考はサイクルとバランスを破壊する、有害なものになりかねないと思った。

◆時間の概念を失った「妄想分裂ポジション PSポジション」では、物事を白黒の0,1で判断になる。対して「抑うつポジション Dポジション」は、グレーを許容する時間の概念を内包した価値観である。現代社会はPSポジションに傾いてしまっているように思う。

◇白と黒のその間に、無限の色があって、 とミスチルの歌であったが、勝ち負けの結果だけでないプロセスの中に感動や生きがい、生きる意味などを見いだせることは幸せで、単純に勝った、それも相手がミスしたから特に努力とかではなくて勝ってしまった、なんてものは手応えもなくて幸せではないんだと思う。ある意味、負けても勝っても相手が自分を高めてくれた、その舞台で戦えたことが誇りというような考え方でないと、チャンピオンになってもただただ虚しいだけなんだと思う。そういう意味では、有り余る才能を持つよりも、才能を開花させていく中で成長していくことのほうが大事でかけがえのないことなんだと感じた。

◆病名へのタグ付け=可視化的なカテゴリー化は、本来は緊急避難的にケアを得るためのチケットであり、そこから治療を初めて不可視の(本人だけの)物語を語りだすためのスタートとなることに意味がある。しかし、病名をつけることをゴールと錯覚してしまうと、「何病ならエビデンスがあるこの治療法で」といったマニュアルが作動して、個人としての人生や苦悩は無視され、心もまた消えてしまうということではないでしょうか。(p.130)

◇一見とても情緒的な文章に見えるが、病気であることがわかることが目的のような考え方になっていないか、考えさせられる。本人の物語を語りだすという、傾向からこうではなく、正しく人を見ていること、そのひと・自分と向き合うこと、できていないのではないかとハッとした。

◆「釣られない」というモラルがある。作りての「どうせお前ら、こうゆうのがほしいんだろう」という演出が露骨すぎると、一方的にマーケットに転がらされている用に感じて、返って嫌になるものらしい。それは品位を維持する道であると同時に、情報の海に残る私達に残った、最後の主体性でもあるのかなと。

◇露骨なこと、直接的すぎること、品位がないこと、それらは確実に増えてきているように思う。だからといってそれに屈してはいけないんだと思う。昔は〇〇のようなことを懐古主義で言うのではなく、小学生絵も理解できるような、あたりまえで正しい価値観に沿って、考えること、行動することをきめること、など、自分にブレーキをかけることは必要なんだと思う。何をしても良い世界は決して幸せではないんだなと思う。

◆本音と建前の二段構えを維持する。重要な会議の後で、さっきはああ話したけれど、実際は・・・みたいな、廊下のところで話す本音の会話も重要。もちろん建前も重要。(p.154)

◇だから対面で話さなければいけない。何を考えているのか、建前と本音とのグラデーションを見ないと、ズレやきしみが助長される。

◆先行世代への経緯を前提とした上で、「しかし戦後日本の思想家には限界があった」のような講義をすると、歴史の文脈を共有しない学生は、「じゃあろくな思想家がいない戦後日本の思想家の本はいいらないですね」となる。

◇時間軸的な考え方・その世の中の常識などの理解がないと、地動説を唱えていた昔の人は馬鹿だとか、そんな論調になりうる。天体を深く観察していたら天動説になってもおかしくないが、実体験の感覚としては地動説がすんなりくるという事実を認める必要がある。そんな状況を理解しないで知識だけ吸収しようとすると、上辺だけの中途半端なものしか得られないのではないかと思う。

◆現代ドイツの哲学者が、公共の場でソウゴに会話せず黙々とスマホをいじる日本人を見て、そのばらばら感がうつ病の患者同士の群れに思えたとのこと。世界的にも傾向はあるが、日本はそんな個人と個人の間に引かれた境界線が突出して引かれていると。

◇最近電車の中では本を読むようにしているが、たまに電車の中でスマホをいじると不安になる。アプリのパトロールを行っているよう。ニートを自宅警備員といって揶揄することがあるが、”スマホ警備員”はSNSの更新などを常に見張っていることを多くの人がしているように思う。ふと周りを見ると、時間帯にもよるが9割近くの人が携帯をいじっている。少し引いてみると、こんなディストピアにいつなったんだろうと思うぐらいである。

 

●タイトル

過剰可視化社会

「見えすぎる」時代をどう生きるか

 

●著者

與那覇潤

 

●評価

★★★★☆

 

●出版日

2022/5/27

 

●読書日

2023/5/22

 

●概要

◆糖質とはなんぞやということから、実際にどんな悪いことがあるのか、どうすればいいのか、糖質オフのためにはどんな食べ物がいいのかを、ビジュアル多めで解説した本。

◆知識系の本なので、これから役立てていきたい知識を羅列していく。

◇本書はプロテインに対して否定的で論文でのデータも出ているが、ちょっと他でのデータと異なる気がするので、プロテインは取って、タンパク質としての食品も取って、一日120g程度のタンパク質接種を目標にしていきたい。

 

●役に立つ知識

◆痩せるホルモン「レプチン」は満腹感を伝えるが、太っている人はレプチンの分泌が悪く満腹感をなかなか得られずに痩せにくい。

◆調理肉や加熱乳で育てた猫について、視力低下・皮膚病やアレルギー・心臓、甲状腺、肝臓などの疾患・情緒が不安定(オスは大人しく、メスは気性が荒い)・子猫のうちに死んでしまう などで、4世代目になると育たなくなったとのこと。人間とのアナロジーを考えると恐ろしいなと思う。

◆血糖値スパイクを防止するためには、良質な脂質とともに取ることが有効。例えばピザにエキストラバージンオリーブオイルをかけて食べるなどである。

◆1日30品目と言われていた厚生労働省の指針は、2000年には削除されている。品目を増やすためにミックス野菜ジュースを飲んだりすると、糖質過多になるだけで健康にはプラスにならない。

 

●低糖質・抗酸化作用などありよい品目 

◆豚肉 …疲労回復にも良い

◆マグロ・カツオ …抗酸化作用が高い

◆鮭 …抗酸化作用など、最強

◆牡蠣 …疲労回復、体力増強にもよい。レモンと合わせると◎

◆ブロッコリー … めっちゃ良い

◆海藻類 … もずくなどは味付けで糖質が多くなっていることもあるので注意

◆ホウレンソウ・キャベツ・玉ねぎ・にんにく・アボカド・キウイ・ブルーベリー・大豆・酢・(赤)ワイン・きのこ・アサリ・牛肉・鶏肉・青魚・トマト・人参・生姜

◆エキストラバージンオリーブオイル …パスタ食べるなら、塩+これ がまだマシなやり方

 

 

●タイトル

糖質オフの教科書

決定版

 

●著者

牧田善二

 

●出版日

2021/6/15

 

●読書日

2023/5/21

●概要

◇54のもの、ことの値段を解説する本。

◇図書館の特設コーナーで目を引いたので取ってみた。

◇こういう価値の話は、年代が10年ズレてしまうと社会や相場の状況が変わってしまうから、2023年では役に立たないというか、昔はそうだったということにしかならないのだと思った。

◇特筆すべきことはなかったかと思う。

 

●タイトル

おいくら万円?

How Much is it?

モノの値段がわかる54のお話

 

●著者

MONOQLO編集部

 

●出版日

2013/12/4

 

●読書日

2023/5/20

●概要

◆天才数学者の岡潔氏が書かれた、1963年頃、当時の教育に関して意見を言うという本。数学者というぐらいだから論理的なことを大事にするのかと思えば、論理的な学問ではあるが、最も大事なのは人の情緒だという。人の中心は情緒だから、それを育てなければ数学をわからないばかりか、人の成熟にも繋がらないとしていて、当時の教育、詰め込み教育で画一的かつ、早くから頭角を表すことが良しとされるものに対して、痛烈にNOと言っている。

◆読むきっかけは、アバタロー氏のyoutubeで取り上げられており、読んでみようと思ったところである。

 

●感じたこと

◆60年前の問題意識の中で育てられてた人たちは、今70歳前後の人達なのかと思う。その世代が何を大事にしてきて、アイデンティティを何に持っていたか、もちろん人によって異なるが、いい面と悪い面とを見て客観視することで、今の自分達が主役として生きる世の中に対して、一石を投じることになるのかなと思った。情操教育がされていないと言いながら、花を愛でる人はその世代には多いと感じる一方、高度経済成長期で価値は物に宿るという考え方も一般に多いのだと思う。右肩上がりの時代において、少々角が立つ言い方だと何も考えないで人の価値観や情報を飲み込んでいくだけで、自分で物を考えないで世間の価値観に沿って生きていれば、それなりに暮らせたし行きていけた時代なのかと思う。いまはその時代よりも厳しくて、人口分布など見ると右肩さががりの時代なので、価値観を世間においてしまっては、嫌なニュースや出来事、批評家たちに足を引っ張られて沈んでいく気がしている。自分でいいと思うこと、大事にしたいこと、決めたこと、心が動かされること、変化すること、楽しむこと、そんなことを考えて生きていかなければならないという思いになった。

 

●印象に残ったこと

◆数学的発見は、発見の前に緊張と、それに続く一種の緩みが必要ではないかとしている。(p.38)

◇同じような話を稲盛和夫氏の本の中では、無意識で考えて、真理の井戸から知識を汲み上げる と表現している。真面目に取り組むことは緊張に該当し、無意識下でも考えられるぐらいにして、ふとしてた瞬間で思った感情やヒントが、無意識下で結合されひらめきとなって行くのだと思う。本書の中では自然の風景に恍惚としたときなどに意識に切れ目ができ、その間から成熟を待っていたものが顔を出すらしい。その時見えたものをあとになってから書くだけで、描写を重ねていけば自然に論文が出来上がるとしている。 (p.38)

◆このくにで善行といえば少しも打算を伴わない行為である。例えば橘姫命が、躊躇なく荒海に飛び込まれたことや菟道稚郎子命がさっさと自殺してしまわれたのや、楠正行たちが四條畷の花と散ったのがそれであって、わたしたちはこういった先人たちの行為をこの上なく美しいと見ているのである。(p.69)

◇命を大事にということが言われて久しい現代である。一方で漫画カイジでは、「だからダメなのだ。命はもっと粗末に扱うべきなのだ。命は、生命は、丁寧に扱いすぎると澱み腐る!」というような言葉がある。岡本太郎氏も「無条件に生きる」とか、「やってやろう、死と対面することこそ、いのちを燃やす真の喜びじゃないか」とか、そんな逆境の中でこそ「ファイトが湧いてくる」と言っている。自殺を肯定しているわけでは全く無いけれど、自分の命をとして取り組む姿勢には美しさと幸せ(岡本太郎氏は幸福という言葉は甘ったるくて嫌いで、歓喜と言いたいとしているが)があるのかと思う。武士道とは死ぬことと見つけたりも、そんな一意専心で取り組んで必死になっていることに美学を見出していることなのかと思う。そんな本なども、これから読んでいきたい。

◆私達より少し前の人たちは実によく善行の特性を知っていて、それが少しでもやりやすいように色々工夫して家庭教育をしてきたと思われる。この国のありがたさは、ただそうしていれば良いというところにあるので、哲学などいらないから、なかったのは当然であろう。そして絶えず善行を行っていると、段々情緒が美しくなっていって、その結果他の情緒もよく分かるようになり、それでますます善行を行わずにはいられないようになるのである。これが古くからのこの国の国柄である。こうして日本的情緒が出来上がってきたのである。(p.78)

◇現代はなぜわざわざ人のために善行しなければいけないんですか、自分本位で行動することの何が悪いんですか、全ては自己責任ですよね、という考えがかなり多いと思う。そんな言葉に対するアンチテーゼとして、善行、特に全く打算のない善行は、情緒を磨き、ますます善行を促進し、物事の深い理解と成果にもつながるということが言えるのかと思う。前記のつながりでスタートとゴールを見ると、善行しないと成果も得られませんよ。ということになるのかと思う。また、「動物性」、「獣」と表現されるのも、知ったかぶりで自己責任理論を振りかざす現代に向けられているなと、見えたりもする。自分の子供には、情操教育というか、きれいなものを見てきれいだとか、一生懸命がかっこいいとか、良いことをすることは自分も周りの人もみんな笑顔にするんだよ と教えたい。

◆戦争を生き抜くためには理性だけで十分だった。戦後を生き抜くためには宗教が必要だと思う。宗教とは人の悲しみについて、人が悲しんでいるから自分も悲しいという道を突き進むことだと思う。キリスト教ではこれを愛と呼んでいる。(p.56)

◇自分はこの感覚が欠如しているから、人の心がわからないというか、現代人の理系にありがちな紋切りの考え方をしてしまうのだと思うので、相手の悲しみを自分の悲しみに落とすこと、ただし入れる情報はテレビやニュースなどの自分の手の届かないところで起きているものではなく、自分の身近で起きていること、とくに家族、友人、知人に意識を向けていきたい。

 

 

●タイトル

春宵十話

 

●著者

岡潔

 

●出版年

2006/10/20

*連載 1963年2月

 

●読書日

2023/5/20

●概要

◆幸福学をテーマに、聴衆の学生と講師が対談する形式で話が進んでいく、幸福学に関する本。

◆フェルミ研究所で取り上げられており、面白そうなので実際に手にとって読むことにした本である。

◆本としてストーリーや具体例がしっかりしているが、要点も絞られているので読みやすい割に頭の中に様々な視点を浮かび上がらせてくれる良書というように思う。

 

 

●学んだこと

◆ものを購入する時、定員さんとアイコンタクトを取って微笑むことで、幸福度が上がる。

◇実際にやってみて、目を合わせると相手もほほえみ返してくれることが多く、単なる買い物でなく交流ができたという気持ちになれるので習慣化していこうと思った。(p.42)

◆1日のメールチェックの回数を制限する。これは注意力散漫が作業能率だけでなく幸福感に与える影響もあると考えての実験で明らかにされた。眼の前のことに”集中”すること、切り替えコストを発生させないことで疲れを減らしていく。(p.50)

◆20年後に後悔しないお金の使い方は、”もの”ではなく”経験”に対してである。携帯電話は機能が多くて不便、とまで言っているが、そのとおりかと思う。ものは他の人と比較できるが、経験は比べようがない。つい他人と比較して後悔してしまう という真理を予防することにもつながるし、幸福感にもつながる。「記憶に残り」「自分だけの個性を感じ」「他人と社会的価値を共有する」事ができるからである。ものの買い物においても、それ自身を所有することを考えるのではなく、〇〇をする経験を得るために買ったのだ、と考えるほうが幸福感を得られやすい(p.70,74)

◆逆境に陥った時、耐えて困難を受け入れなければならない。1分、2分、5分と向き合うこと。向き合って不快な感情を得ること。そこが始まり。その後に自分がどうして挫折を感じているのか、キャ勘的な目で自分を見つめることも良いとしている。他の本では心のなかで自分の名前を読んで呼びかけたり、語尾に、「と〇〇考えている」というように一歩引いた目線での言葉の使い方をすると良いと合った。(p.134)

◆「快適さ」と「不快さ」の違い。快適さは自分の外側にあることが多く、不快さは自分の内側にある。快適さは外側だから、限りがなく求め過ぎると適応能力も失うし、幸せを感じることができなくなる。不快さを快適さで打ち消そうとしてきた。見方によっては快適さ中毒の症状である。短い時間であれば、あえて「嫌な感情も味わう」べきであり、悲しみは長期にわたって続くわけではないと考えて向き合うことも必要(p.148)

◆余命数週間の患者が後悔していることとして、「人の期待に答える人生ではなく、自分に正直に生きる勇気が欲しかった」「勇気を出して自分の気持ちを伝えればよかった」「友達と付き合い続ければよかった」「自分が幸せになるのを許せばよかった」 (p.180)は、かなり響いた。

◆恋愛の研究で「物事がうまく行った時、あなたはそばにいてくれますか?」というものがある。「物事がうまくいかないときにこそ、そばにいてくれるひと」はよく言われるが、その逆である。昇進した、テストでいい点取ったなど、嬉しい出来事を恋人と共有し成功を喜び合いたいと思ったときに、相手が関心を示さなかったカップルは別れていた。「恋人によいことがあったら、一緒に喜んで、最高にうれしがらせれてください」そうしないのは、必死に救いを求めている恋人を助けようとしないのと同じなのです。(p.196)

 

●タイトル

「幸せ」について知っておきたい5つのこと

NHK「幸福学」白熱教室

5 Things about "Happiness" you should know

 

●著者

NHK「幸福学」白熱教室制作班

エリザベス・ダン

ロバート・ビスワス=ディーナー

 

●出版年

2014/12/22

 

●読書日

2023/5/17

 

●概要

◆youtubeで書籍まとめ動画をいくつか見ていたときに、複数の人が本書を取り上げ紹介していた。著者はtech企業で如何に人の注意をスマホやメールアプリに向けるかという取り組みをしてきた人なので、そのものの怖さを逆によく知っている。人の本能的なところに訴えかけているので、意志の力で抗おうとするのは不可能だと言っている。ではどうすればいいか。デフォルトの設定を徹底的に変更して、意志の力を使わないでいようとすることが重要とある。簡単にできるので実践しているが、たしかにスマホを使う時間は、スクリーンタイムを見てもかなり減った。

◆以前動画で紹介されていること、朝方であれとか、携帯のアプリは1画面4つまでにするとか、SNSはアプリを消去するとか、実施しているので、本で全部読んだときにプラスでいいと思ったことを備忘録として下記に記す。

 

●役に立つこと

◆原則は、

 ・ハイライト …毎日「最重要項目」を選ぶ

 ・レーザー …「気を散らすもの」を撃退する

 ・チャージ …身体をつかて「脳を充電」する

 ・チューニング…システムを調整、改善する

◆ハイライトをするためには書き出すこと、優先順位をつけて取り組むことを、毎日考える習慣をつける。

◆カフェインを取る時間をコントロールすることで、生活リズムを整える。朝にはコーヒーを飲んで頭を覚醒させるし、夜はコーヒーは飲まない。最近はノンカフェインのルイボスティーを、夜には取るようにしている。

◆夜に取らない、というよりも、最後に取るのを昼過の14:30頃までにして、それ以降飲まずにいるのも良い。このように、一日のバイオリズムとカフェインの接種のタイミングを調整することで、自然なリズムを得ることができて深い睡眠と朝方生活を得ることができる。

◆無限の泉アプリと言われる、SNSやメールアプリ、ソーシャルゲームは携帯からアンインストールする。一方、ミュージックアプリや天気、地図、カレンダーなどは中毒性が低いので、便利に使いこなすことができるので問題ない。

◇個人的にはメールアプリは難しいので、メールアプリに届くモノを、少なくするために定期購読のたぐいは徹底的に削除をした。

◆集中して取り組むときには、ドアを締めてヘッドホンをして、やると良い。切り替えて集中することができる。プラスアルファとして、携帯を同じ空間に入れないことも重要かと思う。

◆目立つタイマーをセットして、スプリントする。何かをやると決めたときに、その時間の見積もりをして、セットして、そして残り時間を意識しながらやる。仕事でも同じだが、他の人に迷惑がかかるので、家で家事などをするとするときにうまく使っていきたい。

◆一意専心と言ったらそれまでだが、スプリントでその時間そのことだけに集中する。子供との遊ぶ時間もそうである。筆者は子供と遊ぶことと、スマホを見ることに注意が分散しており、斜に構えてエネルギーを出し惜しみしていた。とある。でも、子供に真剣に向き合い、木製レールを繋いで、「シュシュポッポ」という音を立てることに一意専心すると、疲れはどこかに消えていったとある。仕事だけでなく、今あるところに一意専心して集中すること、どんなことでもいいから自分が本当に情熱を向けられることに対して実施するのが良いとしている。

◆糖分のとりすぎは血糖値の過度の上昇/下降をもたらすため、集中力を阻害したりするので良いことがない。飢餓状態のほうが集中できるとある。ただし、毎度我慢し続けるのはじめは厳しいので、デフォルトのデザートをダークチョコレートに変えるだけでも効果がある。血糖値の乱高下を抑制しながら、ポリフェノールを接種することができる。ジュースなども甘すぎるので控えていくと、味蕾が適応してきて普通のデザートでは甘すぎると感じるようになっていく。

 

●タイトル

時間術大全

人生が本当に変わる「87の時間ワザ」

MAKE TIME

 

●著者

ジェイク・ナップ

ジョン・ゼラツキー

 

●出版年

2019/6/19

 

●読書日

2023/5/14

 

●評価

★★★★☆

 

 

●概要

◆生理学の側面から、人体の神経系の仕組みを、模式図や神経伝達物質名を使いながら説明した本。

◆対象は大学レベルとなっており、読み物のレベルとしては高め。

◆図書館の新書コーナーにおいてあったので手を取ってみた。こんな出会いをする本が月に何冊かあってもいいなと思う。図書館なのでお金掛からないし。

 

●感想

◆〇〇病で処方される薬の効果の考え方が、副交感神経の受容体の物質授受を阻害することで薬として作用するため、症状を抑えることができるが、副作用としてその受容体をもつ様々なところに副反応が出ること。阻害物質が外から供給されることで、ホメオスタシスとして本来分泌されるはずの拮抗物質が分泌されずに薬から抜けられれなくなる仕組みなど、かなり怖いと思った。医者が処方するものだから、要領に沿って接種すれば安全、という思いもあったが、効果のメカニズムによってはかなり怖い。自分の体で拮抗させる力を強化して、自然治癒に向かうことが最も悪影響が少ないのだなと感じた。

◆自律神経には

 交感神経  …緊張、腸内活動の抑制

 副交感神経 …弛緩、腸内環境の亢進

をするものがあることは知っていたが、第三の自律神経である

 腸内神経系 …交感神経/副交感神経と並行して走っている神経系。内蔵求心性線維がっ運ぶ情報で尿意などは意識されるが、他のの大部分は意識されない。

があるということは初耳だった。また腸内環境が悪い(腸内の菌の多様性が失われる)とストレス耐性が下がるなどもあるので、自分を大切にするためには、腸内環境をどう整えていくのか、意識する必要があると感じた。

◆腸内フローラを調べる方法を見てみたが、保険適用外で5千円、1万円、2万円と金額に応じて調べられる種類が異なる。知りたい情報を整理して、腸にいいという食生活を意識して続けた後に、どこかで腸内環境の測定を行うことをしたいと思った。

◆人間の体内の情報で、自分の意識として自覚指定なくて自動的に体が処理している情報がたくさんある。今の流行りのようにそれらを見えるかなんてしていたら、医者や研究者は別として、一般人には処理すべき情報が多すぎて、困るのだなと感じた。健康診断で評価するのは異常値だけでよく、とくに意識しない正常値をいちいち見る必要はないと思った。筋トレをしているので、それに関連した値は確認しようと思った。

◆身体を整えるのは、拮抗する神経系が正常に働き、バイオリズムの中でバランスを崩しすぎずストレスに立ち向かったり、リラックスして休んだり、中庸に戻ることができるのが、柔軟に行えることなのだと思った。緊張にしても弛緩にしても、どちらか一方のみというのは整うことにはならないと学んだ。

 

●知識系

◆セロトニン、アセチルコリン、ムスカリン受容体、ニコチン受容体、α受容体、β(1~3)受容体、

ドーパミン、コルチゾール、エストロゲン、インスリン、メラトニン、コリン、などなど、知っているもの、知らないもの、様々な神経系の物質の名前が出てきた。

◆とりあえず最近見ているものだと、テストステロンが人生の悩みすべてを解決するというのが結論、というような見解のものもよく見るので、運動習慣は続けていきたい。

 

●タイトル

自律神経の科学

「身体が整う」とはどういうことか

 

●著者

鈴木郁子

 

●出版年

2023/4/20

 

●読書日

2023/5/15

 

●感想

◆図書館に行ったときに、時短コーナー特集があり、目に留まったので取ってみた。

◆本書を見る前にも、ミニマリストとは、というような本の要約をかなり聴いていたので、違和感なく読むことができた。逆に言うと、そこそこできていたので延長上で取り組むことができた。

◆収納場所にモノをぎっしりと入れることは、取り出しにくくもなるので、そもそも入れるものを絞って捨てることが重要だ、ということで実践してみた。

◆冷蔵庫の中のものは、基本的には見える位置にあるもの以外はすぐ使うかどうかというように、ひと一目見たときに判断できるようにすることで、賞味期限切れとなることが少なくなると感じている。

◆机の上のペン立てに、これまで使うかもしれないと10本近くペンが入っていたが、マジックとボールペンの2本にして、ティッシュやウェットティッシュをペン立てに入れることで、机の上を整理することができた。

◆毎日飲まないようなお酒だったり炭酸だったりも、視界に入れること自体が大変なので、一等席の棚の上で毎回目に入るところではなく、扉の中に収納することで余計なことを考えないで済むようにした。

◆視界に入るものが少なければ、少ないほど疲れないので、なるべくモノを増やさないように、素子て収納スペースの6割ぐらいまでしか入れないようにするように心がけたい。

 

●タイトル

ほんの1分で一生が変わる魔法のかたづけ術

部屋が勝手にきれいになる、片付け上手のノウハウをすべて見せます!

「出す」「分ける」「減らす」「しまう」の4ステップ

 

●著者

小松易

 

●出版年

2011/7/4

 

●読書日

2023/5/13

 

●概要

◇技術というものを如何にに習得して、以下に生かしていくか、ということを宮大工という、制作物が長く続くものを立てた西岡氏が口で語ったものを文章に起こした本。

◇口語口調なので、非常に読み勧めやすい。

◇先祖が行っていたこと、口伝などの、本当の意味がわかるのは教わってからずっとあとになってから、ということを言われていた。今役立つから教えるとかではなく、育てるというのは将来への種まきなのだ、自ら成長しないと真髄というものは体で理解することはできないのだと言うのを、実体験をもとに言われている。

 

●感想

◇昔の人がすごい、ではなく、飛鳥時代の宮大工はたいそう考えられていてすごいが、室町時代は雑だ、などと昔の時代を一括りせずに、建物を通して対話しているのがすごい。

◇この人でさえ、祖父やお寺の人に育てられたということを口にしている。時代の中で、いい仕事にいいタイミングで巡り合ったからそれができたと。現代は教わるべき人がいないという感覚にもヤモすればなってしまうことがある。この人にこんな言葉をかけてもらって、育ててもらった、考え方の形成の軸を与えてもらったという感謝姿勢を持ち続けられるようでありたい。

◇この本も家の本棚においておきたい本である。もちろん電子書籍などではなく。

 

●印象に残った部分

◆こういう木の感触は言葉では伝えようがありませんな。実際に見て、触って、感じて覚えていかななりません。技術という門は腕だけやなくて培われた勘や感覚に支えられているんですやろな。(p.34)

◆今は電動の機械がたくさん出てきましたな。これと手で道具を扱っていたときとどう違うかと言いましたらな、自分のカンナでしたら精魂込めて研ぎますな。それを使うんですから、やっぱり魂込めて削りますわ。魂込めて研いだ自分の道具を粗末に扱う人は降りませんがな。しかしでっっせ、電動カンナやったら鼻歌うたいながら押したらいいんです、魂というものはいらないんです。(略)道具が衰えていくということは、それを扱う大工の魂も衰えていくということですな。(p.62)

◆学者があって建造物があるのやなくて、建造物があって初めてがくもんがありますのや。飛鳥様式だとか、白鳳様式だとかいいますが、それはあとから付いてきたもんですわ。そうでっしゃろ、何でも計算や形に当てはめて考えるから物事が逆さまになりますのや。(略)体験や経験を信じないんですな。本に書かれていることや論文の方を、目の前にあるものよりも大事にするんですな。学者たちとなごう付き合いましたけど、感心せん世界やと思いましたな。(p.75)

◆(カンナで向こうが見えるほどの薄い屑を出してみろと言われたなかで)姿勢が悪くても刃は研げません。力の入れ具合が悪くてもできません。癖があったら研げません。自分の癖はわからないものです。その癖が刃物を研ぐときに出るんですな。急いでも、力を入れても研げませんのや。そのたびに、なんでやと思いますやろ。それで考えるんdネスな。そして先輩のすることをよく見ますな。なんとかしてとごうと思いますからな。これが頭ごなしに「こうやるんだ」と教わってもできません。手取り足取り丁寧に事細かに教わってもできませんな。素直に、自分の癖を取って、自分で考えて工夫して、努力して初めて身につくんです。苦労して、考え考えしてやっているうちに、ふっと抜けるんですな。そしてこうやるのかと気がつくんです。こうして覚えたことは決して忘れませんで。教える方も、弟子のそんな様子を見ながら、ぽつんと言うんですな。其のことがはこうしろ、ああしたほうがいいというのとは違いますのや。と回しやけれども、考えや創造力が膨らむようなことを言いますのや。そのときはわかりませんわな。しかし、何かのときに、ふっとこういう意味やったんやな、ということがわかるんですな。(p.94)

◆神仏を崇めずして社頭伽藍を口にすべからず 神の道を知らんものは、神社建築を口にするな、また仏の道を知らぬものは堂塔伽藍を口にするなということですな。これは何も神道や仏教の専門家にならねば手を染めてはならんということではないんですな。自分が造ろうとしているもの、関わっている仕事がどんなものか知らなならんという宮大工の心構えですな。金のためだけに仕事をしてはならんということでしょう。(p.145)

 

●タイトル

木のいのち木のこころ 天

 

●著者

西岡常一

 

●評価

★★★★☆

 

●出版日

1993/12/3

 

●読書日

2023/5/11