ジャングルに迷ったとき4 | サバンナとバレエと

サバンナとバレエと

ブラジルからの便り

セーハ・ドス・オルガンス ラスト・ストリーです。














勇気とはなんだろう。





私が書くことを読んで私が勇気を持つ人間だと思われるかもしれない。





だが私自身は自分のなかにどれだけの弱さがあるか知っている。







たとえば運転や電話、人が普通何気なくやっていることでも私にとってとてつもない恐怖をともなうこともある。それは時期によって変わるが。







私があえてこのような危険をともなう体験を好むのは、実はいくじのない自分が嫌いだからである。







自分の中の弱さがどうしようもなくいやになった時、よくこの様な体験を探す。





あえて自分を極端にハードな環境におき精神力の限界をためす。





すると私の中に力がみなぎってきて、また自分を信じられるようになる。





この影響はしばらく続き、私は何ヶ月間かまったく自由な感覚の中で生きる事ができる。





すばらしい感覚だ。





強さと弱さ。年をとるにつれて、この様な二面性は誰にでもあるのではないかと疑い始めのだが。どうだろうか。






















帰りは一日でも出来たが、荷物が多かった私達はゆっくり二日かけて帰ることにした。







その日、森林警備隊のパトロールは続き、あの少年がまだ見付かっていないのは明らかだった。





ゆっくり景色を楽しんでいくつもりだったが、心が落ち込んでしまい黙々と歩いた。





その夜、滝の近くでテントをはった。





また降り始めた雨と強い風で火をおこす事も出来ず、冷たい夕食をとったあと、冷えたままの体で寝袋に入った。








まったく不気味な夜だった。















月はなく、真っ暗だった。





ジャングルは強い風で吹き荒れ、得体も知れない音で満ちていた。





テントの中、一人で闇を見続けた。





巨大なジャングルの中にひとりぼっちでいるような錯覚をおこした。













私が恐怖を覚えるシチュエーチオンのひとつだ。





なにが無限的に大きいものを意識するとき。





たとえば海、泳いでる自分の下にいったいどれだけの海水があるのか。





たとえば滝、膨大な水が落ちるのを見た時。何ともいえない恐怖を感じる。















遠くでねこ科の動物の鳴き声がした。まるで人間が叫びのような。





突然行方不明の少年について考えた。








いま何処にいるのだろ、





どんなに恐ろしい思いをしているのだろう





心細く泣いているだろうか





怪我をしているのだろうか








死んでいるかもしれない。








ふとそんな考えが横切った。








死んでいるかもしれない。





彼の魂はジャングルの上を飛んでいるのだろうか。泣き叫びながら。








もしかして外でこのテントの見詰めているかもしれない。すぐ近くにしゃがんで。





ぞっとした。











長い夜だった。寝付くまでどの位たったのだろう。





恐怖をむりやり追い出し考えた。





ありがたい。





私はこう無事でテントのなかにいる。





もうこの様な無鉄砲な行動をするのはやめよう。





もう自然を見縊らないこと。けっして。













この決心は今でも守っている。










そしてこの冒険は無事に終わった。







行方不明だった少年は次の日無事に見付かったそうだ。










残念ながら今だにセーハ・ドス・オルガンスには戻っていない。










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