皮膚呼吸

皮膚呼吸

瞬間 瞬間に肌からしみ込んでくる つぶやきです

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えらい愛想のよい象だわい

 

長い鼻を持ち上げて

 

と思ったら

 

私の背後を通りかかった飼育員さんに

 

挨拶しているらしい

 

小象のころからここであの人に育てられたらしい

 

あの長いまつげの瞳でウインクかね

 

あれだけの図体の愛情の重さは

 

どのくらいですか

 

この限られた檻の中で

 

ほんとは

 

悲しくてやりきれないのだろうけど

 

それでもなお精一杯の愛情の証として

 

動物園の敷地いっぱいに咆哮する

 

秋空に浮かぶ雲もちぎれそうになるほどにね

 

田植えも終わって一面が緑

緑萌える季節四月二十日に生まれたから

萌という名前をつけたのだが

可憐な花には程遠く

我が子ながらお世辞にも可愛い女児ではなかったが

それでも名前の通りすくすくと

人並みの容姿には成長してくれたようで

いつのまにやら好いてくれる男もできて

めでたく青葉茂って夫婦になるそうな



五月の社は新緑の匂いでいっぱいで

五月の花嫁は白無垢で神前にご報告

命繋げる夫婦になると

「祓え給い、清め給え、神ながら守り給い、幸え給え」

種落ちて 芽生え 花咲かせ 葉茂り 実結ぶ

種落ちて 芽生え 花咲かせ 葉茂り 実結ぶ

くりかえし くりかえしては 何万年も

産めよ 増やせよ と


白無垢姿に不覚にも涙目になってしまったが

結局カッコイイ父親にはなれずじまいでしたが


願っています

夫婦でカッコイイ家庭を築くことを

そして二人の命繋げる初着姿の子宝を

青葉の下で抱きたいものだとね




 

さそわれてやって来て

境内に座り込んでいるのだが

隣にもぺたりと座り込んだ

神様らしきお方がいて

樹々を揺らして銀杏葉を敷き詰めては

ぎんなんの実も転がして

晩秋でござると

笑ってらっしゃるようで

さて私も葉っぱパッパとお祓いして

枯れて実を残さねばと

そんな歳にもなってはきたものの

困ったことに

実らしきものは身につかず

年が明ければ還暦に

せめて秋を愛でるに

一句でもとひねってみるが

頭を垂れて柏手うっても

出てきたものは

なんとも未熟で

尾っぽを巻いて退散するしかないような

狛犬の尾っぽを隠す銀杏哉

 

熟成した夏が蝉しぐれと共に交響曲のように広がっていく

この仕組みをこさえてくださったのは

この仕組みに驚きを感じられるように仕組まれたのは

ど な た


人間の意識の向こう側

とうもろこしの甘みが細胞を形つくる

抜け殻になった頭のなかに暑い光の矢が射られる

ひとつ閃きが現れては消えてゆく

時間と空間は人間の妄想だよと

なんというのか

神様というのか

神様のいたずらというのか

そういう想いをいただくことが


お盆がくれば母の一周忌

息子が、娘が、孫が帰って来る

蝉の抜け殻と 齧りかけのとうもろこしのむこうに

はかなさと嬉しさが入り混じる


それにしても昨夜の冷やし中華は美味かったのだなぁ

 


 

ツガイなって三十年

二匹のヒナも独り立ちして

おまけに孫ヒナまでよちよち歩きを始めて

なんとかツガイの役目を果たした感もしないでもないが

悠々自適の生活には程遠く

まだまだツガイで汗水たらして餌を確保せねばならない

 

それにしても夫婦というもの幾つ歳を重ねても謎ばかり

一夫一婦制が絶対良いとは露ほども思わぬが

そこは甲斐性の問題で

私などは一匹のメスに精一杯

夢の中に登場することさえ皆無に等しい

空気のような存在の相方だが

以心伝心とまではいかないまでも

お互い考えていることは なんとはなしにわかるほどの

異体同心の趣がないでもない

鼻糞をほじくりたくなった時など

そっとティッシュペーパーが差し出される

傷つけあうより傷を舐めあう関係になってきた

 

食卓の上にはいつものお皿と茶碗があって

萎びた大根と萎びた揚げ豆腐がちょっぴりと

それでもじっくりと煮込んだ味わいでね

染み込んだ熟成を

お茶漬けでサラサラといただく

 

見慣れた風景、代わり映えしない日常生活も

たまにファインダーを通してみると新鮮である

と、ここまで書いたところで

傍らからツガイの相方は

「自己満足の駄文は出来たかな?」

などと茶々を入れに来るのだ

 

どこにでもある

ありきたりの

名もない広葉樹のおいらだが

パッパッパと変身

目立たなかった一葉一葉が

ほらご覧くだせい

このコントラストを

紅葉さんだけがもてはやされるのが

しゃくなもんで

たまには見て欲しくて

ヘタクソなお絵かきをしてもらって

こうして額におさまったが

なかなかどうして

捨てたもんじゃない

捨てゼリフは はいちゃあいけないよ

パチパチとかしわでうって

パッパッと変身

あんたも 

味ある熟した大人に爺様にならんとね

いま ここに 開いて

いま ここに 閉じて

ゆっくりと 同じリズムで

夏の 記憶を

命の 記憶を

水面に写して

あの時の

あの生まれた刻の

水の匂い 風の匂いを

確かめながら

還っていくのか

神様トンボ


秋雲は人の記憶を吸い込んで

膨らんでは 形を変へ

ちぎれながら流れていく

ちぎれ雲は 記憶を

あちらへ こちらへと吐き出しながら

いつのまにか

群青の空に溶け込んでいく

朝陽に命をいただき現れて

夕陽に命を返して消えていく

人は生まれた季節と真逆の季節に

息を引き取るらしい

春に齢九十になる

三月生まれの母の病室の窓に

秋九月のちぎれ雲が流れていく

そのうち一面に彼岸花も咲き乱れることだろう



野花もよいが

野菜にはかなわない

あのテカテカ感にゴツゴツ感

朝お店のシャッターの前に新聞紙に包まれて

おそまつでという顔で並んでいる

裏のおばちゃんの汗水が滲んだ

おすそ分けがいっぱい詰まった瑞々しさでね

美味しくいただくだけではもったいないから

今日はこうして拙い絵を描いて

お店に飾って合掌するのだなあ



こんなもんで

いやいや

これでもかと

ぐわーと葉っぱの七変化

ポコポコ ポッコリ

喜び溢れる山肌が

目に染み入って

チチンプイプイ

アッラー アーメン ナンマイダー

神も仏も嬉しくて

こんなにキラキラ

心はソワソワ

なにやらこのまま

この時間を巻き戻しては

なめまわして眺めては

頬ずりたいのです