ツガイなって三十年
二匹のヒナも独り立ちして
おまけに孫ヒナまでよちよち歩きを始めて
なんとかツガイの役目を果たした感もしないでもないが
悠々自適の生活には程遠く
まだまだツガイで汗水たらして餌を確保せねばならない
それにしても夫婦というもの幾つ歳を重ねても謎ばかり
一夫一婦制が絶対良いとは露ほども思わぬが
そこは甲斐性の問題で
私などは一匹のメスに精一杯
夢の中に登場することさえ皆無に等しい
空気のような存在の相方だが
以心伝心とまではいかないまでも
お互い考えていることは なんとはなしにわかるほどの
異体同心の趣がないでもない
鼻糞をほじくりたくなった時など
そっとティッシュペーパーが差し出される
傷つけあうより傷を舐めあう関係になってきた
食卓の上にはいつものお皿と茶碗があって
萎びた大根と萎びた揚げ豆腐がちょっぴりと
それでもじっくりと煮込んだ味わいでね
染み込んだ熟成を
お茶漬けでサラサラといただく
見慣れた風景、代わり映えしない日常生活も
たまにファインダーを通してみると新鮮である
と、ここまで書いたところで
傍らからツガイの相方は
「自己満足の駄文は出来たかな?」
などと茶々を入れに来るのだ