美容皮膚科メモ Q&A04 皮膚のバリアついて教えてください | FF残日録のブログ

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広島県出身。各地で皮膚科の医療に関係してきました。2017年から,高槻の病院に勤めてます。過去の文書や今の心のうちを,終活兼ねて記して行こうと思ってます。2023/1/8に、dermadreamからFF残日録のブログに名称変更。

A 皮膚のバリア機能とは,外界からの異物の侵入から身を守ると同時に,体内からの水分や体液の喪失を防ぐ働きのことです。この働きは主に角層の物質の通過しにくさによって成り立っています。

 

 

Ⅰ 皮膚のバリア機能の主役は角層です。

角層は,角質細胞と細胞間の成分とで構成されています(図1)。

角質細胞の成分はケラチン線維:細い線維を何本にもよった構造になっているため柔らかい上に丈夫で,クッションの役割を担っています。

 

角層の水分量を保持する細胞間の3大成分

1)   天然保湿因子(NMF, natural moisturizing factor):ケラトヒアリン顆粒が角層中で分解されてできるアミノ酸は,保湿性に優れ,皮膚に柔軟性を与えます。

2)   角質細胞間脂質:セラミド,コレステロールなどを主成分とする脂質が蓄積し,細胞同士をくっつけるノリの役目をしています。またセラミドは強い水分保持能を持っています。

3)   皮脂膜

 

 

Ⅱ バリア機能の種類

1)   摩擦・機械的外力を緩和する働き

角層のケラチン線維・真皮・皮下組織によって外力から皮膚を守っています。

2)   日光・紫外線に対する防御機構

角層で紫外線を屈折・反射して進入を和らげ,表皮内のメラニン色素が紫外線を吸収し防御しています。

3)   水分・化学物質に対する保護機構

角質細胞・皮脂・汗の膜が形成され,化学物質・水分の侵入を防ぎ,かつ生体に必要な物質・体液の体外への漏出を防いでいます。

4)   細菌・ウイルスの侵入の防御機構

角層がこの役割を担い,このバリアが壊れたら,痂皮を形成して防御しています。

5)   体温の調節機構

表皮・皮下脂肪組織が熱の伝導を妨げ,真皮の血管の拡張・収縮により体温を一定に調節しています。また皮膚表面の汗により熱が放散され,体温の上昇を防げています。

6)   経上皮性排除 transepidermal elimination

     皮膚に存在する異物などが一塊として包み込まれ,角層から排出される働きがあります。

 

Ⅲ 皮膚バリア機能の評価方法

皮膚バリア機能が低下すると,水分蒸散量は増加します。この数値を指標とし,経表皮水分喪失量(TEWL)として,機器を用いて測定できます。

Q&Aで学ぶ美容皮膚科ハンドブックから主だったところを抜粋(この本はとっくに絶版となっていますが、3000部ぐらい売れたそうです。メディカルレビュー社 2010年)

本文は、公立那賀病院皮膚科医長上中智香子先生によるもので、新たに図表などをつけています。(文責 古川福実)