美容皮膚科メモ Q&A05 メラニンや色素細胞にはどのような働きがあるのですか? | FF残日録のブログ

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広島県出身。各地で皮膚科の医療に関係してきました。2017年から,高槻の病院に勤めてます。過去の文書や今の心のうちを,終活兼ねて記して行こうと思ってます。2023/1/8に、dermadreamからFF残日録のブログに名称変更。

A メラニンは、有害な紫外線から細胞を守る役割と皮膚の色調を主に決定付ける色素顆粒です。メラノサイト(色素細胞)はメラニンを作って、必要に応じて表皮細胞にメラニンを提供します。

 

メラノサイトは、メラニンの製造工場

メラノサイト(色素細胞)は皮膚、眼、粘膜などに存在します。表皮では最も下の層(基底層)に皮膚面積1mm3あたり、約1,000から2,000個のメラノサイトが分布しています。

メラニンのルーツは、アミノ酸の1種であるチロシンと言う物質です。チロシンにチロシナーゼと言う酸化酵素が働きかけ5,6-ジヒドロキシ・インドールになり、それが重合してメラニンが形成されます。

 

 

メラノサイトはこのメラニンを産生し、メラノソーム(メラニン顆粒)内にメラニンを蓄積させます。ある一定量に達するとメラノソームは、樹枝状に伸びているメラノサイトの突起を通して周辺の表皮細胞に送り込まれます。

表皮細胞の代謝に伴い、メラニンは皮膚の表面に向かって押し上げられ最終的には垢(角質)ともに体外へ排泄されます。表皮細胞に取り入れられなかったメラノソームは真皮内に落下し、その後は血管やリンパ管を経由して体外へ排泄されます。

 

メラニンの役割

1.     有害な紫外線から細胞を守る

表皮細胞に移送されたメラニンは、核の上に分布し、有害な紫外線から細胞核を守る役割をしています。顔などの日光に当たる分では、メラノサイトの分布密度が高くなっています。

 

2. 皮膚の色を決定する

皮膚の色を決めているものには、メラニン、血液のヘモグロビン、角層の厚さ、カロチンなどがありますが、特にメラニンの関与が大きいと考えられています。またメラニンには黒色のユウメラニン(真生メラニン)と黄色のフェオメラニン(黄色メラニン)の2種類があり、混在しています。

人種による皮膚の色の違いは、メラノソームの大きさやこれらの2種類のメラニンの割合によって決まります。例えばメラニンの量が多くなると、皮膚の色は黒くなり、毛髪ではフェオメラニンが多くなると赤毛やブロンドの髪となります。また皮膚の浅いところにメラニンが存在する場合では、皮膚の色は黄褐色に、深くなるにつれ黒色から青色になります(皮膚の屈折率のため)。

メラニン代謝のバランスが崩れたら

メラニンの生成と排泄のバランスが崩れるとメラニンが表皮内に過剰に蓄積され、しみが発生します。その原因の1つとして、卵胞ホルモンや黄体ホルモンといった女性ホルモン、脳下垂体ホルモンの影響が考えられます。これらのホルモンが血中に増えると、メラノサイトが刺激を受けてメラニンを活発に作ります。また皮膚に吸収される紫外線量が増えると、メラノサイトは刺激を受けメラニンを作ります。シミの代表である肝斑も妊娠時や閉経時に多く、ホルモン異常が原因と考えられ、紫外線により悪化します。ストレスや過労によりしみが発生することも、脳下垂体からのホルモン分泌が亢進するためではないかと考えられています。

 

Q&Aで学ぶ美容皮膚科ハンドブックから主だったところを抜粋(この本はとっくに絶版となっていますが、3000部ぐらい売れたそうです。メディカルレビュー社 2010年)

本文は、公立那賀病院皮膚科医長上中智香子先生によるもので、新たに図表などをつけています。(文責 古川福実)