華岡青洲と活物求理、美容皮膚科の真髄 (3) | FF残日録のブログ

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広島県出身。各地で皮膚科の医療に関係してきました。2017年から,高槻の病院に勤めてます。過去の文書や今の心のうちを,終活兼ねて記して行こうと思ってます。2023/1/8に、dermadreamからFF残日録のブログに名称変更。

華岡青洲と活物求理、美容皮膚科の真髄 (3)

美容皮膚科学の目的は、皮膚の老化や醜形を予防ないし整容することで、患者自身の精神的苦悩を軽減させ、社会生活をより円滑に送れるようにするものです。美容皮膚科学が取り扱う分野は基礎皮膚科学、香粧品科学、美容、エステティック、スキンケア、美容医療等多岐に渡っています。

このように定義付けてくると、美容、皮膚科学の特徴は、整容に関する理論研究、施術治療方法の確立に存在します。しかし、自ら美容皮膚科の分野を狭める事は無益でしょう。「美容皮膚科に関しては柔軟であり、良いと思うものは何でも取り入れる」と言う精神が大切かもしれません。これは華岡青洲(1976から1835)の医療に関する考え方を美容皮膚科に転用したものです。彼は漢蘭両医学を折衷して外科を專攻し、1804年に通仙散を用いた全身麻酔にて、世界で初めて乳がんの手術を行いました。エーテル麻酔に先立つこと、36年前のことです

 

 

青洲はある著述の中で興味深いことを述べています。

「治療法には古今なく、古にこだわるものは今に通じない。内科を略しては外科の治療はできない。蘭方を言うものは理屈ばかりで治療が下手である。漢方を言うものは治療が上手くても歴史にこだわりすぎ、進歩は無い。ゆえに、わが術は治療を活物と考え、法は理を極めることによって自然と出てくる、と言う法則に従って、すべての病を療するには、処方や調剤は必ずしも決められたものにこだわらず、薬の力が足りないものは鍼灸にてこれを治療し鍼灸の及ばないところは手術で治す。いやしくも人を活かすべきものは、宜く為さざることなかるべし。」(渡辺賢治「漢方をめぐる国際的な動向について」、日本東洋医学雑誌第55巻第4号、2004年より1部改編)

良いと思うものは何でも取り入れると言う精神の背景には、現在で言うところのevidence-based medicineの原型とも言うべき取り組みが、彼の診療所 春林軒塾の随所に見ることができる。

 

時々のトレンドに流されることなく、安田利顕先生を始め、多くの先生方によって気づかれた美容皮膚科学を継承、発展することが大事なのだと思うこの頃です。

 

 

2007年6月25日  日本美容皮膚科学会雑誌編集長 古川福実

同誌17(2):111